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「田中宇の国際ニュース解説」からのメモ(下線は中村)→
―03年11月19日付「イスラエルは大丈夫か」―
「自爆テロの増加や破綻する経済など、イスラエルが住みにくい場所になったことを嫌気し、とりあえず東欧のパスポートをとっておこうという人々が増えている」
「イスラエルは今、建国以来の最悪の経済状況にある。治安の悪化で海外からの投資が減り、観光業も壊滅状態となっている。失業率は10%を超え、国家財政が悪化して年金などの支払額が5%カットされ、教育予算が削られて教師も大量解雇された」「軍事費も12%カットされ、イスラエル軍の兵士は米軍からのもらい受けた古着の下着を支給されている。アメリカから90億ドルの臨時の資金援助(債務保証)を受け、国家財政の破綻を何とか免れている状態」
「治安維持部隊は人員をテロ対策にとられているため、テロ以外の一般の犯罪に対する防止策や捜査が不十分になっており、マフィア型の組織犯罪や麻薬取引が増加している」
「イスラエル内外のユダヤ人がイスラエルを見放す傾向を強めているのは3年前の2000年ごろから」
「パレスチナ人(アラブ人)はイスラエル人(ユダヤ人)よりも出生率がはるかに高い」
イスラエルのユダヤ人500万人、パレスチナ人300万人、イスラエル国籍を持ったアラブ人が100万人
「パレスチナ人の側も『パレスチナ人国家の創設が無理なら、占領地の管理やインフラ整備などをイスラエルにやってもらう状態に戻した方がいい』という意見が出始めている」
10月中旬発表の「ジュネーブ協約」:
「パレスチナ国家の樹立、エルサレムがイスラエルとパレスチナ双方の首都として共有されること、イスラエルは占領地からの撤退すること、イスラエルから追い出されてレバノンやシリアなどに住んでいる難民の帰還権をパレスチナ側が放棄すること」
「ロードマップがアメリカ主導だったのに対し、ジュネーブ協約はヨーロッパが仲介してイスラエルの中道派とパレスチナ側が直接交渉した結果出てきた」
「イスラエル経済が破綻している大きな原因の一つは、財政のかなりの部分が入植地の拡大のために使われてしまっていることだ。入植地には人口の3%しかおらず、不均衡な財政支出となっている」
―03年11月25日付「イスラエル化する米軍」―
スンニ派には旧フセイン政権の支持者が多い。
オリーブ、ナツメヤシはパレスチナ人の「民族の木」
サダム・フセインの故郷はティクリート
「米軍がイラク人の統治のやり方について、アラブ人を占領統治する者としての『先輩』にあたるイスラエル軍からいろいろ教わっており、イラクが泥沼化するほどアメリカはイスラエルに頼っているということになると////」
「イラクでは米軍の拠点のほか、イタリア軍の拠点、ジャーナリストが泊まっているホテル、バクダッド空港を発着する民間機、米軍政に協力するイラク人の警察官の派出所、日本大使館など、アメリカに協力する各勢力の拠点が次々と攻撃されており、フセイン政権が地下化して組織的な攻撃を再開した可能性がますます強まっている」
「イスラエル軍は、///イスラエルに対して自爆テロを仕掛けるテロリストが増えることを望んでいるように感じられる」
(*ネオコンの目的は、)「アメリカがイラクに侵攻して泥沼にはまり、イスラエルに占領ノウハウを頼らざるを得ない状況を作ることで、アメリカがイスラエルと一心同体の状態にして、イスラエルを強化したかったのではないか」
「イスラエルがアメリカに教える軍事ノウハウは、イラクの泥沼が永続するような方向性を持っている」
イラク北部のキルクーク油田の存在
「トルコは、中東イスラム世界で最も国家や経済のシステムが西欧流に整備されている国」
「イラクから始まってシリア、サウジなど中東全域を泥沼化しようとする親イスラエルの勢力と、パレスチナ和平を推進してイスラエルの拡大傾向を止めようとする勢力との、米政権中枢や欧米『国際社会』を舞台にした戦いは、まだ決着がついていない」
―03年11月27日付「世界大戦の予感」―
イラクにおけるシーア派(人口の60%、主にイラク南部・中部に在住)、スンニ派(15%、主にイラク中部)、クルド人(20%、主にイラク北部)
「イラクを統治していたスンニ派勢力の最大の財源は石油だったが、イラクの石油は北部のクルド人地域と南部のシーア派地域に集中しており、中部のスンニ派地域にはほとんど石油がない」
「フセイン政権は、北部と南部へのスンニ派の移住を奨励する一方、シーア派やクルド人をもともと住んでいた地域から追い出し、貧民としてバクダッドに流入するよう仕向ける政策を続けていた」
(*バクダッドは)、「600万人の人口のうち300万人が貧困層のシーア派」
「すえに複雑に混住が進んでいるイラクでは、明確な3分割は非常に難しい」
「もともとイラクは、第一次大戦でオスマントルコ帝国を倒し、中東の支配権を獲得したイギリスが、安定した石油供給を可能にするために、オスマン帝国下では3つの州だったものを1921年に一つの国にまとめた」
「イラクは、もともとイギリスの石油利権のために作られた国」
「もし米軍がスンニ派のゲリラをすべて潰すことができたとしても、その後スンニ・シーア・クルドの3勢力が満足できる政治形態が生まれる可能性はほとんどゼロ」
「米軍がスンニ派ゲリラを大して潰さずに出ていけば、再びスンニ派のバース党勢力がよみがえり、フセイン本人か、その一派のスンニ派の独裁者が政権を奪取し、シーア派とクルド人を無数に殺して独裁政権を打ち立てるだろう」
「今後アメリカがイラクのクルド人の事実上の独立を認めると、トルコのクルド人も独立の傾向を強めるかもしれず、トルコはクルド人を制裁するために北イラクに侵攻するかもしれない」
「もし、シーア派の人々が政治を宗教化する方向に動いてイランとの連携を強め、両国の石油を使ってアメリカの好き勝手にさせないようにしようと試みたりすると、この方面でも外交的な危機が起きる」
「スンニ派に関しては、同じ宗派の人々がサウジアラビア、ヨルダン、シリア、エジプト、トルコ、パキスタン、アフガニスタンなどの多数派を占めており、///」
―03年12月2日付「せめて帝国になってほしいアメリカ」―
帝国:empire
覇権:hegemony
「帝国も覇権国も、他国を力で支配することに変わりないが、帝国より覇権国の方が、目的があって他国を支配するという意味が強い」
「今のアメリカは、新たに直接支配するようになったアフガニスタンとイラクに対し、軍事費(GDPの1-2%)以外に、ほとんど金を出していない。民間投資も、アメリカから世界への投資額の1%しか中東に向かっていない(大半は欧州と東アジア向け)」
「イラク復興を主に取り仕切っているのは、アラビストが比較的多い国防省ではなく、アラブを毛嫌いするイスラエル右派を支持する人々(ネオコン)が高官をしている国防総省である」
「アメリカがイラクを軍事力で民主化したいと本当に思っていたのなら、イラクに多数の軍と行政官を50年ぐらい駐留させるつもりで、あらかじめアラビストを何万人か養成してから侵攻すべきだった」
「間接統治期間を含めると、イギリスは中東地域の要となる場所として1917年から1958年まで40年間イラクを統治し、かなり整った官僚制度を作り、行政能力を持ったイラク人も多く現れたが、イラクは結局安定した国にはならなかった」
「軍の制服組の忠告を無視することで開戦前から分かっていた軍事面での安定化策を怠り、アラブ専門家を活用せず、意図的に何の準備もせずにイラクに侵攻したブッシュ政権のアメリカは『帝国』よりひどい国だといえる」
「アメリカは、あと数カ月かけて西欧諸国を説得すれば、国連と西欧を傘下に置いたままイラク侵攻できたかもしれない。覇権維持のために戦争するなら、そうすべきだった。その意味で、今回のようなやり方のイラク侵攻は、アメリカにとってやってはいけない愚かな戦争だった。それは開戦前から明白だった」
「米国債を大量に買っているのは、日本と中国である。ドルの暴落は、日本にも破壊的な影響を与える。小泉首相が『何が何でもイラクに自衛隊を派遣する』と言っているには、もしかすると、アメリカがイラク戦争に勝てないという印象が世界に広がってドルが暴落すると日本も破綻するので、それを防ぐための下支えとしてやっているのかもしれない」