現代政治の理論と実際
021219ikehara
<日本政府、北朝鮮に50万トンのコメ支援決定>
日本政府は北朝鮮に対し、国内舞を中心に50万トンのコメ支援を決定した。すべて国内米だと費用は1200億円かかり、これは、日本政府開発援助(ODA)の供与先である中国への一年間の供与額に勝るとも劣らない。
この米支援が日本と北朝鮮の関係を良くするかという問いについては、北朝鮮は、日本がこれ以上拉致問題にこだわれば「行方不明者」の調査も打ち切ると圧力をかけているので、米50万トンの支援が、直接拉致問題の解決を前進させることはなさそうである。したがって、コメ支援などは人道支援にとどめるべきである。それ以上の事をしても、北朝鮮の利益になるだけで、日本には何の見返りもやってこないからだ。
世界食糧計画が要請した北朝鮮の食糧不足分は19万5千トンであり、50万トンの支援は、人道的な支援を大きく超えたものである。北朝鮮が拉致問題に誠意を示していない今の段階では行うべきではないだろう。外国米であれば費用も安くなるが、高価な国内米中心の支援は、実は農民保護ではないのか。だが、国としてこの支援を行うのであれば、その巨額な負担は国民にまわってくる。
この件で、そもそも国家の役割は何かということを再認識した。国民が国家に求める要求の第一は、“安全”である。国防や警察がこれにあたる。北朝鮮の拉致問題については、その国民の安全を国が守るというとても重要な仕事である。にもかかわらず、自国の国民を拉致したかもしれない国に、人道的支援以上の支援を送れば、わが国の国民は、また拉致の標的にされる恐れがある。もっと慎重な決断が求められる。
さらに、50万トンものコメ支援を行えば、財政は赤字となり、そのしわ寄せは私達国民にやってくる。大きな赤字を残してまで行うコメ支援が、農民保護という目的であるのなら、これは問題である。国民の安全や、外交政策や、財政赤字の問題よりも、農民票を優先するという、背信行為ともいうべき決定ではないか。
この問題は、経済問題というよりは政治問題だ。このような政治問題も、財政という視点から考えると経済的視点も生まれてくる。
http://www.geocities.co.jp/WallStreet-Bull/3837/backnumber17.html
小泉首相は、プノンペン市内で中国の朱鎔基首相、韓国の金碩洙首相と会談し、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核兵器開発問題について一九九四年の米朝枠組みを堅持しながら、平和的な解決を目指すことで一致した。これまでを見てみると、北朝鮮が核開発問題を諸国家から支援を受けるためのカードとして利用していることは明らかである。なので、日本、中国、韓国が平和的解決を言う枠組みで意見をあわせ、北朝鮮に外交圧力をかける策は、有効である。
小泉首相が、九月の平壌訪問で「北朝鮮が責任ある国際社会の一員になることが発展の基礎となる。孤立すべきではない」と金正日総書記に伝えた。北朝鮮を孤立に追い込むことより、国際社会に招き入れることの方が、中、長期的に見れば、北東アジアの安定と平和のためになる。
この意見に、北朝鮮に大きな影響力をもつ中国が同意してくれたことは今後、大きな意味を持つだろう。
東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス3(日中韓)首脳会議でも、北朝鮮の核開発問題を「東アジア全体の脅威」と位置付け、平和的に解決すべきだとの認識を確認した。
会議の後、議長国カンボジアのフン・セン首相は、南北対話との日長国交正常化交渉を歓迎し、二○○○年の南北共同宣言への支持をあらためて表明、核不拡散体制を支持する立場から「核兵器のない朝鮮半島の実現」を呼び掛けた。
北朝鮮の核開発問題で、平和的解決を求める陣形が形成されたことの意義は大きい。これは、北朝鮮に対して強硬な姿勢をとっているアメリカにも少なからず影響を与えることが出来るであろう。
小泉首相には引き続き主導的な外交の展開が期待される。アジア諸国の圧力に答えて、北朝鮮は一日も早く、核開発計画を放棄すべきだ。
http://www.ryukyushimpo.co.jp/shasetu/sha21/s021106.html
ロシアのプーチン大統領は、日米韓などによる国際共同事業体・朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)が北朝鮮東海岸の琴湖で進めている軽水炉建設に、ロシア人技術者を派遣したいとした。ロシアは財政的にKEDOに資金援助をする余裕がないので、技術者の派遣をもって変えたいとしたのだが、アメリカは核関連技術の流出を恐れてか、この申し出を拒否した。このためロシアは直接技術者派遣の意思を北朝鮮へ直接提案しようとしたのだ。
核兵器への転用が困難な軽水炉の建設は、一九九四年十月の米朝枠組み合意に基づき、KEDOが推進。八月初めには原子炉を設置する土台部分のコンクリート注入作業を開始し、本格的な工事に入っている。
日本の、北朝鮮拉致問題には大きな偏りが存在する。拉致問題が発覚したとき、日本のメディアはこぞって北朝鮮拉致問題を取り上げ、どこを見てもそのことばかりであった。拉致問題は確かに大きな事件ではあるが、日本の論理と感情的な側面だけで貫いても戦略的には何も得られない。北朝鮮は偏った思想に洗脳されている国であるが、日本もまた同じように偏ったマスコミの報道に犯されているのではないか。例えば、日本の多くのマスコミは、2年半近く前の「南北首脳対談」で金総書記が国際舞台に登場するまで金総書記は、言葉も発することができない人物であると伝えてきた。また、マスコミが伝える飢餓に苦しむ北朝鮮の姿だけを見ていたら、北朝鮮全体が瀕死の飢餓に陥っており拉致された日本の人々との生活との落差が理解できない。マスコミが伝える北朝鮮には、大局的な視点がかけているということである。
北朝鮮問題に置いて、以下の視点を捉え、考えていくことが望まれる。
1.日朝間にはあまりにも大きな経済格差が存在しており、同じレベルで考えるのでなく富める国は包容力を持って北朝鮮を考えなければいけない。
2.北朝鮮は「ならず者国家」であっても2200万の国民に罪はない。
3.過去、現在、未来の流れの中で北朝鮮との協調を考える。
4.北朝鮮は追い詰められており「戦争と平和」が紙一重である。朝鮮半島の38度線は技術的には戦争状態である。
5.北朝鮮との共通の利益の合致点を探す。それは、北朝鮮の大量破壊兵器の開発の放棄並びに国際社会へ入る条件を北朝鮮自ら構築することと、北朝鮮へ
の社会資本整備のための経済協力を実現させることである
アメリカ、ロシアを含む周囲の国々が意見をあわせ、北朝鮮に対応していくことが肝心である。北朝鮮に対しての経済制裁を徹底し、今後の北朝鮮の発展の
グランドデザインを提示することが重要である。北朝鮮の発展はアジアの発展につながるはずである。
今回政府は、北朝鮮に対して50万トンのコメ支援をすることを発表した。これを実行すると、非常に多額の財政支出を伴うことになる。民主党はこれまで、人道的な支援に対して積極的に対応してきた。だが、WFPのよう清涼をはるかに上回るコメ支援は、人道上の観点だけでは説明できない。50万トンのコメ支援と、今後の日朝交渉の展望のつながりは不透明であり、理解しがたい。政府には、国民に対して、明確な説明をする必要がある。