021216iitomiy 現代政治の理論と実際  飯富 裕

北朝鮮の難民について

 

安哲(アンチョル)〜最新映像による北朝鮮内部報告!から抜粋http://www.bekkoame.ne.jp/ro/renk/ahnchol/ahnchol.htm

 

これは、中朝国境のある街で、安哲という人と日本人の密会をもった話についてです。ところでこの日本人が密会をもった理由は安哲が北朝鮮に再度潜入して秘密撮影を敢行する計画の準備をするためである。ちなみに安哲は2年前にも北朝鮮に潜入したことがあるが、今回の撮影対象はそのときと同じ場所であり、北朝鮮北東部にある都市の闇市場と定めた。

 同じ場所を選んだ理由は二つある。一つは、北朝鮮の変化を調べるためである。海外から膨大な人道援助が注ぎ込まれ、金正日が積極外交姿勢を見せ始めている北朝鮮であり、その内幕を映像を通して暴露するのが目的である。

 もう一つは作戦上の理由である。2年前にもこういった撮影をおこなってこの映像を公開した後、激怒した金正日は秘密警察に「安哲逮捕」を命じた。各行政単位の秘密警察の課長級以上の要員に対し、敢えて安哲映像を見せた上で、安哲の逮捕・処刑を命じたのである。金正日が最も殺したがっていると言われている安哲への必死の捜索は現在に至るまで続いている。この捜査網をかい潜って秘密撮影を敢行するのは危険極まりない。そのために敵の裏をかくべく前回と同じ撮影対象を選んだそうだ。

 線密な準備を整え、安哲は厳戒警備体制の中朝国境を越えた。撮影場所は北朝鮮有数の都市であり、国際的人道援助の重点配分地域でもある。それにもかかわらず、闇市には浮浪児が食べカスを求めてさまよい歩く。また計算上では北朝鮮の国民に十分行き渡るはずの援助食糧が闇市に流れ込んで高い値段でうられている。一般市民には、もし月収をもらっていたとしたら80ウォンほどが月収であるが、それ以上の値段で食糧が売られているので、まず手が出せないと言う状況である。

 安哲の説明では、南北首脳会談以降の北朝鮮の変化は次の3点に集約できるそうだ。いずれも独裁維持の根幹に係わるものであるらしい。

 一つは、配給制度の復活である。今年8月頃から金正日は配給所での穀物配給を復活させた。それまでは、企業所単位での自力調達・自力配給が基本となっていた。配給再開といっても肥料用の雑穀が中心で、暮らしていけるほどの配給量には満たない。国際社会からの批判を気にしたのか、配給量の1割ほど、援助物資の米が混じる。配給再開と同時に、闇市への取り締まりが強化され、当局が、売らないよう取り締まっている。

 莫大な支援食糧が特権層に流れ込むせいで、闇市での穀物価格が2年前と比べて下落している。しかし、先程言ったように庶民の手には未だに届かないそうだ。人々はあいかわらず闇市に依存して暮らしている。「配給はいらないから、その代わり闇市で自由に商売をさせてくれ」というものが庶民の願いらしい。

 もう一つの変化は、秘密警察システムの完全復活である。食糧危機が極度に深刻化した97年から98年には、国民への脅しが効かなくなり、秘密警察は半ば自信をなくしていた。しかし、人道援助がシステムを復活させ、秘密警察は完全に自信を取り戻した。

 そして最大の変化は、金正日の継続者問題、つまり長男の金正男による権力継承がひそかに始動していることである。金正男は朝鮮人民軍に入隊し、側近の隠密を利用して内政に関与をし始めている。