021209ikehara

現代政治の理論と実際

 

http://www.bekkoame.ne.jp/ro/renk/repo20021128.htm

金日正「経済改革」の実情

日朝首脳会談が開催されたちょうどその頃、金正日が七月に実施した「経済改革」の影響を平壌を含め全国調査すること。北朝鮮国内での難民処罰の実態を調査すること。北朝鮮国内で事前に選定した複数の反金正日グループと接触して情勢分析と情報交換をおこなうこと、の三点の秘密任務を負った二人の青年が、国境を越えて中国に戻ってきた。

   金正日は最近、配給制度の廃止や経済特区の新設など「新経済措置」を連発している。専門家の多くは、これを「改革開放への第一歩」「資本主義の実験」と評価した。その一方で、金正日は秘密の核兵器開発続行を公然と自白し、生物化学兵器の保有を宣言した。金正日はいったい何処に向かっているのか。なにを企んでいるのか。識者は頭を悩ませ、関係諸国は戸惑いの色を隠せない。

 金正日の政策は、国民生活に大混乱を与えている。「金正日の経済改革」に関し、報告者は面白い視点を提供している。「『苦難の行軍』と称される試練の1990年代、北朝鮮住民は人生を楽しむすべを失い、今年7月から生活を楽しむ風情を捨て去るようになった。住民の眼には、資本主義というのは恐ろしい制度だと映るしかない。あまりにも金正日式の改革と言える」一連の経済的実験を通して、国民に資本主義の恐ろしさを骨の髄まで思い知らせ、北朝鮮式社会主義の素晴らしさを再認識させるつもりなのではないか。勘繰りすぎだろうが、真剣にそうとでも考えるしか「金正日式改革」は理解できない。この情報を持ち替ええた二人の青年と入れ替えに、また一人の青年が北朝鮮に戻った。アメリカの情勢などを伝えるためだが、これが刺激となればよいと思う。

 米国のイラク攻撃は確実視されているが、フセイン大統領の取る行動如何で、その攻撃が回避される可能性は十分にある。イラクが生物化学兵器の査察と廃棄を完全履行すれば、アメリカはフセイン政権を攻撃しなくなるかもしれない。フセイン政権がアメリカに対して柔軟な策を取ることになれば、北朝鮮の順番がやってきてしまう。もし北朝鮮がアメリカの要求を飲み込んで、生物化学兵器と核兵器を廃棄したとしても、大量の破壊兵器は残る。石油資源が無いため、財政困難な状況に陥るであろう北朝鮮は、開いてかまわず大量破壊兵器を売る危険がある。そのような危険性を含む金正日政権をアメリカが黙って見過ごすであろうか。アメリカの対北朝鮮対策は、武力工事・経済制裁を含む前手段を含む「平和的解決」である。

 日韓中露の周辺諸国は武力行使に難色を示している。一番の最善策は、「内部崩壊」であるが、それには北朝鮮国内に有力な反体制勢力が育たなければ成らない。周辺諸国は金正日との「援助交際」よりも、反体制勢力の育成に力を入れるべきであろう。北朝鮮に侵入した青年は報告書の末文に、以下のように記していた。

「秘密警察によって『沈黙の自由』が剥奪されて久しい。『息をする自由』さえもいまや捨てねばならない。金正日はまた失敗をやらかしている。あまりにピンと張り詰めた綱は、すこし力を加えるだけで切れる。私ひとりがおいしい物を食べ、良い暮らしをするのは簡単だ。けれど、それは私が幸せに生きる道では絶対にない。私は十回殺されても『金正日を決死打倒』する。」

 

 

報告書  

        ◎経済改革に振り回される企業管理者と農民

たしかに北朝鮮は何かが変わり、引き続き変わろうとしてきている。何がどう変わり、変わろうとしているのか。これを北朝鮮住民はどう考えているのか。金正日は自国経済が破滅した原因をよく知っている。しかし、それを直すと体制維持に不安を覚える。金正日はそう考え、1990年代に経済が内部から腐り果てるまで放置してきた。ともあれ、金正日は既に1980年代の中頃、体制維持を脅かさないという条件付きで、某研究機関に経済体系を改革する課題を与えた。2002年になってようやくこれを正式決定したのである。改められた点は多岐にわたる。以下、簡潔に記す。工業と農業では、労働力問題と企業運営方式などの変化が見られる。生産を効率化するため、ちょっとした措置が講じられている。工場の事務員を労働者に変え、人民軍では佐官級以下の軍官を除隊させて労働者にしている。また、独立採算制の名の下、工場・企業所には原料購入と商品販売の自主権限を与えた。もっとも、権限は国内だけに限られ、外国との交易は除外されている。独立採算といっても、国定価格制度が存在する。原料・燃料の価格は高いのに、生産物を国定価格通りでしか売ってはいけないのでは経営が成り立たない。おまけに人件費の大幅増で、企業所は資金不足に陥っている。その結果、企業所の多くは不振から抜け出せない。

  ある企業所の管理人〔経営者〕は、新管理体系導入決定の会議の場で辞職を願い出た。社会主義秩序を固守したいからではない。新体系がまるで話にならないものだからだ。今年4月に正式実施されてから、辞職する企業管理人が増えた。

  農業では、農民の自家消費分を除いて、国家が全食糧を買い上げる原則に変化はない。買上げ価格が上がったので、農民の生産意欲は相当に盛り返した。しかし、ヤミ市場での穀物の市場価格が日に日に暴騰するので、秋の収穫期が近づくにつれ、生産意欲は元通りまで落ち込んでいる。農産物をかすめ取ってヤミ市場に持って行く現象が日増しに甚だしくなっている。こんなふうに農民が闇市の鉄火場に勤しむようでは、まともに農作業を遂行できるはずがない。穀物の国定価格とヤミ市場価格の格差は50〜100%にもなっている。同じく、米ドルと中国元の闇値は、国定レートの約二倍である(平壌市の闇値は各々、350元と40元)。農民は5万ウォン〔北朝鮮元〕程度の年収を期待している。だが、生産量の伸び悩みは別にしても、期待はずれに終わるだろう。当局は早ければ今年11月にも、買い上げ価格を半額にまで引き下げる腹積もりだからだ。労働者の生活費に比べ、穀物の販売価格があまりに高すぎるという理由である。

  北朝鮮住民が難儀しているのは、金正日が中国式の改革開放に向かうものなのか、単に価格調整で乗り切ろうとしているのか、判断しかねることである。いつまた新政策が発表されるのか、住民と経営者は固唾を呑んで成り行きを見守っている。

 

        ◎3箇月で打ち切られる「金正日の配慮金」

 周知のように北朝鮮当局は、国家公務員と工場労働者の給与を大幅に引き上げ、物価も大幅に引き上げた。月給の引き上げ幅は以下のようなものである。軍人(末端の軍官)約14倍(2300〜3500元)、労働者(公共奉仕部門)約11倍(1200〜2000元)、教員(中学校)約12倍(2000〜3000元)、功労者(普通の定年退職者)約20倍(700〜1200元)、事務員(言論人、科学者、技術者)約16倍(2500〜5000元)である。なお、保安員(警察官)は3500〜5000元となっている。

  国家の禄を食むこれら部類の人々には、8月初めに7月分の給料が支給された。工場や鉱山の一般労働者と経営者には、出来高賃金制が導入された。目標を超過達成した場合、超過額に応じて報奨金が支給される。未達成の場合には基本給(2000〜2500元)より低額の生活費が支給される。 

  問題なのは、この生活費が「金正日の配慮金」だという点にある。当然だが、何も生産できなくても、休まずに出勤しなければ配慮金は貰えない。7月以後も多数の生産単位が何も生産できないありさまである。この配慮金がなければ生活できない。金正日の配慮金は三箇月で打ち切られると噂されている。三箇月で生産できるようになれ、ということなのだが、まず無理なようだ。そうなるとまた労働者を死地に追いやることになる。

  それより問題なのは、当局が生活費を支給する一方で、ヤミ市場を通じた売買を厳格に遮断していることにある。これまで国家による物資供給が完全停止していた間、住民がなんとか生きてこられたのはヤミ市場のおかげだった。ところが現在では全国何処に行っても一般装飾品のような品物さえも売買できなくなっている。洗面道具すら買えないほどだ。これらは国営商店だけで販売が認められている。たんに物品を売り買いする利鞘稼ぎができなくなったことが問題なのではない。それよりも、住民が手工業的な方法で生産してきた無数の製品が姿を消したことが問題なのである。これまでは自動車のタイヤさえ住民が自分の手だけで再生したほどだった。いまも主婦は自宅で衣服などを作って国営商店に委託販売している。ところが、税負担はさておいても、資金の回転が遅くなり、投資と利益が見合わなくなった。もうひとつの問題は、住民たちが自宅で副業を営む時間的余裕を完全に失ってしまったことだ。以前は出勤しても名前だけ書いて自宅に戻り、いろいろな副業に精を出すことができた。だが、今年7月以降は国家が定めた労働時間を適当に切り取れなくなった。

  新たな税制の実施に純真な北朝鮮住民はただ驚愕するばかりだ。低賃金の労働者は、生活費の半分が税金に消える。平壌市の場合、80平方メートル程度の家賃が400元ほどで、電気税や水道税などを加えると一箇月の税負担は千元を超える。ところで、問題なのは、商品価格と異なり、各種税金の税額がまったく公示されていないことだ。住民は何がなんだかわからないまま、税徴収人の言うなりに納税させられている。くわえて、交通費が20〜30倍に暴騰している。たとえば市内バス、路面電車、地下鉄は10銭から2元に引き上げられた。通勤通学列車(12キロ)は1元から30元になった。遊園地、映画館、劇場の入場料も十〜二十倍になり、図書館の貸出料金は20倍に跳ね上がった。おかげで、庶民のささやかな娯楽はいまや特権階級の専有物となってしまった。貧困の最中で貧富の格差は急激に拡大し、その勢いはとどまるところを知らない。〔続く〕

 

 決死の覚悟で北朝鮮から戻ったり、また進入したりということを繰り返しているとあるが、そんなにも頻繁に出入りができるものなのか。国境には軽微のものが多数拝眉されていて、簡単には出入りできないのだと聞いていたので驚いた。

 

北朝鮮の危機的国家事情

          ・・金正日疲れと経済体制の後退・・

                                                                                                    

  ◎金正日「暴発」の危険性

 

 金正日の北朝鮮は、旧体制に向かって退歩している。多くの北朝鮮専門家は、最近の一連の「経済改革」や日長首脳会談での「拉致告白」などを見て、改革の方向に変化していると見ている。彼らには、北朝鮮の核開発までが「誠意の表れ」と写るらしい。ケリー米国務次官補は、金正日による核開発続行宣言を、決して「誠意」と見誤るべきではないと警告している。北朝鮮は日本の陰に隠れてアメリカをにらみつけながら崖っぷちに後退しているのだ。

 金正日の外交政策が暴走する可能性は十分にある。国内政策で「体制の自殺」をしている北朝鮮が外交政策で同じことをしないといえるだろうか。

 又、北朝鮮国民はもとより、国際社会が金正日政権に対して嫌気が差してきているということがある。金正日の政策は、内政は朝令暮改で、外交は一貫性にかける。今後のことを考えると、金正日政権は停止したほうが良いのではないかという段階にきている。

 

            ◎体制維持のために国民の七割を見殺しにする「経済改革」

 

   今年7月、金正日は一連の「新たな経済措置」を発表した。眼目は、配給制度の一部廃止、賃金・物価の大幅引き上げ、そして経済特区の新設にある。これらの動きを捉え、専門家の多くは「市場経済導入への第一歩」とか「改革開放政策への転換の兆し」とか、積極的に評価した。しかし、この改革は、初代長官のヤン・ビンが中国当局に逮捕されたことで行き詰ってしまった。金正日のねらいは、時刻の国民を売り物にして、汚れたビジネスのアガリを受け取ろうとしていたのである。これに懲りず、金正日は、新たなターゲットを探し始めている。これだけでなく、その墓の経済措置も、実態を見れば大変な事態になっているということが良く分かる。

 北朝鮮は10年連続でマイナス経済成長を記録している。とくに96〜98年には年間100万人以上が餓死する大飢饉に見舞われた。最近は小状態とはいえ、年間10万人ほどが餓死しているとされる。このような危機的状況において、政府は何らかの措置を施すであろうと思われる。だが、金正日政権は、独裁体制を延命させるために、国民の約3割の核心階層を除いて、配給を廃止したのである。これまでも、一般国民への配給は停止状態であった。しかし、難民の話しによると、人々は何とか生き延びられるだけの食料は得ていたという。それでも最下層の人々は生きるか死ぬかのライン上にいたという。だが、このような食糧事情の改善は、海外からの援助物資でまかなわれていた。だが、国際社会の援助疲れで、北朝鮮への人道援助は少なくなってきている。

 配給が廃止されたとなって、人々は「ヤミ市」で食料を得ようとしたが、ヤミ市場を撲滅して、国営商店を復活させる措置を取ったため、ヤミ市場はどんどん閉鎖されていった。ところが、開店した国営商店にいっても、ものが無くて買えないのである。そのため、物はどんどん高くなり、意味がなくなってしまった。「改革」などせずに、現状のままでいけばよかったのではないだろうか。

  では、なぜこのような政策を取ったのだろうか。ひとつは、国民を職場に縛り付け、住民の移動を統制することにあった。職場に出勤することを条件に、札束という名の紙切れを支給している住

民の移動をいつまでも野放しにすれば、難民の増大と反体制活動の温床となる恐れがあるからだ。もうひとつは、3割の特権層に体制への忠誠心を保たせるためである。最後のねらいは、「経済改革」の印象を見せることで、国際社会や国際機関から援助を獲得しようとしたのである。

       

 

 

 

北朝鮮の憲法

http://www.geocities.co.jp/WallStreet/3277/