現代政治の理論と実際 1202 020118Z 大川哲志

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「北朝鮮秘密集会の夜」著者 関西大学講師 李 英和

199112月、祖国・朝鮮民主主義人民共和国での留学を終えた著者は生まれ育った日本に戻る。大学の研究者という立場からすれば成果は皆無。北朝鮮の経済と将来を学びたくて首都・平壌の社会科学院に留学したにもかかわらず極端な秘密主義の為、正確な経済データすら得ることがなかった。その一方で、勉強になったこともある。留学中に知り合った北朝鮮の人々からの話である。それどころか、市内で開かれた非合法集会に招待されるという、類例のない体験もあった。

 

 

 数回に分けてこの書物について、私自身が感じとったことについて少しずつ感想などを織り交ぜて話していきたい。

 

秘密集会への招待状  

著者が留学された際、半年ほどたつまで周辺の人に信用されなかった。一つは南からのスパイではないかとうたがわれたようだ。しかし、この点ではさほど時間はかからず信頼をえるのだが、問題はもう一つにある。もしかしたら、バリバリの金日成主義者ではないかという点だ。なにせ、そこらじゅうに秘密警察と呼ばれる警察のような人間いる。人々は軽い質問から著者に近づく。例えば、「この国が発展しないのはなぜだと思う?」と質問されてすこし口ごもっていると、「政治はよいのだが、下の幹部がなっていないからだよ」と答えを先に言う。その時の著者の態度で判断しようとしているみたいだった。さらに、そこから、大胆なことを尋ねてくるようになった。きわどい話は歩きながらするのだが、時として、急に相手が黙ることがあった。しばらくするとまた話が始まる。通行人を装った秘密警察が通り過ぎるのを待っていたという。現地の人の話ではだれが秘密警察なのか百発百中でわかるらしい。