HP「萬晩報」より

http://www.yorozubp.com/9908/990827.htm

 

北朝鮮へ農業技術支援を

19990827()

とっとり総研主任研究員 中野 有

 

 

 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は、本当に人口の1割(220万人)の餓死者が発生するほど飢餓に直面しているのであろうか。

 軍事的鎖国国家である北朝鮮の情報はベールに包まれており、現実の姿が伝わってこない。それゆえ各国の思惑が交錯しており、またマスコミによる情報にも偏りがあり、食糧援助一つをとってみても焦点が定まらない。

 

 そこで、技術協力の基本に戻り、単なる食糧援助ではなく、食糧増産の技術協力、言い換えれば魚を与えるのではなく、魚の釣り方を指導することが肝要であるのではないか。

 

 一方、北朝鮮は国際社会からの食糧援助に頼りながら軍事に重点を置くのではなく、農業の自給自足率を高める努力が不可欠である。これにより、国際社会は北朝鮮への技術指導を通じて北朝鮮の現実を把握することが可能となると同時に、北朝鮮の持続可能な発展に貢献できると考えられる。

 

 80年代後半に国連機関の技術援助の仕事を通じ、西アフリカのリベリア奥地の電気や水道が整備されていない土地で2年間生活した。幸い、リベリアは緑豊かな土地で農作物の問題はなかった。しかし、当時の東アフリカのエチオピアなどは、雨が降らず本当に飢餓のどん底であった。

 

 飢餓は雨が降らないから起こるのである。水、土地、太陽、労働力のあるところは耕作が可能であり、北朝鮮は少なくともそれを備えていると思われる。

 

 北朝鮮の場合、5年前の大洪水以来、深刻な食糧難に直面しているとの報道があるが、アフリカの1部の地域に比べ最悪の事態とは考えられない。3年前と半年前の2回、北朝鮮の北東部を訪問したのであるが、飢餓の状況は多くのマスコミ報道ほど深刻とは感ぜられなかった。

 

 最近、北朝鮮を訪問した国連開発計画の専門家によると、1995年以来、餓死者が3百万人発生したという報道は誇張されており、食糧事情は悪化しているが飢餓は回避されていると伝えている。加えて、食糧援助は解決策でなく、国際社会の農業技術指導を通じ、北朝鮮の食糧自給を高めることがカギになる、と述べている。

 

 北朝鮮を国際社会に融合させる方法として、中曽根元首相は、金正日総書記に世界漫遊を通じ、国連などの会議に招待するのがいいとマスコミのインタビューに答えている。北朝鮮はトップの意向ですべてが動く社会であるから、これは的を射た考えだと思う。

 

 同時に、「鎖国から開国」に向かうプロセスにおいて、その激流によるショックを緩和するためにも、北朝鮮の庶民と国際社会との接点を築くことが重要であると考えられる。

 

 例えば、北朝鮮が望む食糧援助に、農業の技術指導を含めることで国際社会と庶民の交流が成り立つのではないか。

 

 北朝鮮政策に対する国際社会の大局的な流れとして、包括政策に代表される韓国の太陽政策や、米国のペリー元国防長官の予防防衛を通じての朝鮮半島の信頼醸成の構築がある。

 

 また、米国のシンクタンクは、既存の朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)に匹敵する、北朝鮮の農業技術協力を主眼とした朝鮮半島農業開発機構(KADO)の設立の重要性を提唱している。

 

 そこで、北朝鮮に対する日本の役割だが、日本海側諸県の農業技術は豊富であることを念頭に入れ、国際社会と歩調を合わせた農業の技術協力を推進できないだろうか。北朝鮮情勢が進展するに伴い、農業の技術協力を含む環日本海交流が推進されるであろう。

 

 北東アジアにおけるユーゴスラビアのような危機を回避するためにも、北朝鮮を国際社会に融合させる努力がさらに必要となる。それは、人と人との交流を伴う農業技術支援がきっかけになるのではないだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

HP「朝鮮日報」より

http://japanese.chosun.com/servlet/japan.ArticleList.ArticleList?code=F

 

 

離散家族の処遇が急変

 

南北離散家族の再会が行われ、韓国側の家族から経済的支援を受けた朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)側の家族の暮らしが急に豊かになったことから、南の家族を探す北朝鮮住民が急増している。

 

 最近1ドル当たり北朝鮮ウォンが350ウォンまで値上がりするなど、ドルの値打ちが急騰したことから、1000ドルの支援を受けた場合、北朝鮮ウォンでは35万ウォンという巨額を手にすることになる。これは1カ月に20003000ウォンの月給をもらっている一般勤労者が10年以上を稼いで手にする金額だ。

 

 このような事情から、韓国側の家族と再会した北朝鮮の一部住民が周りから羨望の対象となっているという。従来、南からきた人は侮蔑の対象であった現実とはまったく異なる状況が展開されているのである。

 

 この中では、韓国側家族との再会で誤った発言をし、当局から追及されることもあるが、韓国の家族から受ける支援を考えると、このようなことは問題にならないほどだという。

 

 中国と密輸をしている咸鏡(ハムギョン)北道出身のある北朝鮮住民は、「もはや朝鮮(北朝鮮)では、在日同胞に次に、南に家族のいる離散家族の人気が高い」とし、「一つの村で、ある人が南の家族に会うため、ソウルや金剛山に向かうと、幹部らの関心も高まり、これを見る住民らの視線も違ってくる」と話した。

 

 これまで出身成分の区分で最下層に分類され、あらゆる不利益を受けてきた彼らであったが、もはや、結婚相手の優先順位にランクされるほど、位相が高くなっている。

 

 離散家族の再会を斡旋しているある北朝鮮出身の仲介人は、「朝鮮は今やカネさえあれば、すべてが解決される」とし、「今の朝鮮では、出身成分よりも統一した後、支援を受けられる離散家族のいる人が、最も希望的な人だという認識がある」と話した。

 

 公式的な離散家族の再会以外に、非公式の再会に対する北朝鮮当局の対応も、相当寛大になったという。国家機密や文献を流出した場合を除いた、単純な金銭の受け渡しや親族の再会は、単純犯罪として分類され、6カ月間の強制労働だけで釈放される。この程度の刑罰なら、カネでいくらでも刑期を減らすことができるため、さほど問題にはならないという。

 

 しかし、過去北送同胞らが初めて日本の家族と再会した時、集中的な監視対象になったように、ソウルに行って来た離散家族は厳しい監視下に置かれるため、大きなストレスを受けるのは事実だという。

 

 

 

 

 

「党員になるのは人生最大の光栄」はもう古い

 

 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)で労働党員になるということは、個人的には立身と出世の関門を通過することであり、家庭的にも大きな光栄だった。結婚を控えた女性は、配偶者を選ぶ時、最も優先的に考慮する条件の一つも、入党しているかどうかだった。

 

 若者たちが軍隊に入隊しようとする目的も入党にあった。社会的基盤のない平凡な家庭の出身者が入党できる最も確実な方法は、軍隊に入隊することだったからだ。

 

 しかし、このように北朝鮮社会を風靡した党員に対する関心と熱気も、近来はずいぶん減ってきている。経済事情が悪化し、食糧の確保が難しくなると、住民らの関心が経済力だけに集中し、党員の「株価」が急落しているのである。

 

 元除隊軍人のシン・ウォンチョル(仮名)さんは、従来北朝鮮では親が軍隊に入る息子に「必ず入党しなさい」と話していたが、今は「無事帰ってきなさい」という言葉に変わったという。

 

 最近の若者たちは、入党のための軍隊に行く人はほとんどいない。最近は商売をしてカネを稼ごうとする人が増えたため、できれば軍隊に行かず、商売をしようとする人が多いという。    

 

 

 また、カネさえあえば、いつでも入党できるという認識も高まっている。中国を相手に骨董品の商売をしている名門大出身のある北朝鮮住民は、「党証を持っていても、何のプラスにもならない」とし、「出世したい人は、カネを出して党証を買えばいい」と話した。あえて、体を壊しながら入党する必要はないというのだ。

 

 党員になれば、会議にも人一倍熱心に出席しなければならず、各種の行事や動労にも先頭に立ってやらなければならないため、利益はなく、負担だけが増えるというのだ。

 

 この住民は、軍隊も一般社会も、「党証=カネ」という認識が広まっており、いくら一生懸命に働いても、カネを出さなければ入党は不可能だと話した。

 

 最近北朝鮮を離れたある脱北者(北朝鮮を脱出した住民)は、最悪の食糧難に陥った98年、党証は何の役にも立たなかったとし、もはや、政治的な肩書きよりは、食べていくことが最優先だと話した。

 

 結婚する時も、以前のように入党したかを確認する人は「田舎者」扱いを受けるという。経済力と職業が1番目の結婚条件であり、海外に親戚がいて、支援を受ける人は、党の幹部よりも優待されるという。

 

姜哲煥(カン・チョルファン)記者

 

 

 

 

 

HP「自由に語ろう北朝鮮」より

http://member.nifty.ne.jp/Safety/

拉致問題は解決できる−北朝鮮の立場

 最初に、北朝鮮による日本人拉致は事実である、と私は考えています。北朝鮮が認めた外国人拉致にはレバノン女性拉致事件があります。また、シンガンスの事例もあります。それらを背景にして、さまざまな状況証拠を考慮すると、北朝鮮による日本人拉致は間違いなく事実でしょう。

 さて、北朝鮮による日本人拉致が事実であるという前提のもと、どうしたら解決できるか?について考えてみたいと思います。この場合、相手の立場になって考えることが重要ですから、北朝鮮の立場になって考えてみましょう。

 まず、拉致している日本人をこのまま北朝鮮国内においておく場合のメリット、デメリットについて、考えてみます。

 デメリットは、言うまでもなく、日本からの大規模な支援獲得、国交正常化が困難だということです。また、最近は「拉致されている日本人を救う会」の対米アピールもさかんになってきました。北朝鮮にとっては、対日関係だけではなく、対米関係にもマイナス材料になりつつあります。これはそのまま西側先進国からの援助獲得に悪影響が出ることを意味します。

 逆にメリットはどうか?それが私には思い浮かばないのです。今さら20年も前に拉致した日本人を利用して何ができるというのでしょう?工作員の教育にも、もはや大きな価値はないでしょう。今や拉致している日本人を北朝鮮国内に留めておくメリットは見あたりません。

 次に、拉致している日本人を返還した場合のメリット、デメリットについて、考えてみます。

 メリットは、これは莫大なものがあります。今諸外国は北朝鮮の「改革解放」を期待しています。もし拉致している日本人を返還したら、「これから北朝鮮は変わるんだ」という、きわめて強いメッセージを国際社会に送ることができます。北朝鮮の内実、実情がどうであれ、国際社会は(期待を込め)北朝鮮の変化を肯定的にとらえることでしょう。

 おそらく日本のマスコミも(過去の「悪事」には目をつぶり)拉致者返還の事実だけを肯定的に報道すると思います。そして、日朝国交正常化交渉についても「北朝鮮は誠意を示した。北朝鮮は大きく変わりつつある。今度は日本が誠意を示す番だ。」との論調になると思います。これは、北朝鮮にとっては、大きなメリットです。

 つまり、拉致している日本人を返還しただけで、北朝鮮自身は何ら変革することなく、国際社会からは高い評価と大きな援助を獲得できる可能性が高いのです。

 逆にデメリットはどうでしょうか?外国人拉致という国家の犯罪を認めることは、一見すると、大きなマイナスだと考えがちです。しかし、考えてみると、拉致している日本人を返還した場合のデメリットは何もないのです。

 前述したように、外交面ではプラスばかりです。今北朝鮮が「かつての」国家犯罪を認めたところで、諸外国からの批判はないと考えられます。

 国内政治についてはと言えば、北朝鮮のような体制では、今までもそうでしたが、都合の悪いことは報道しなければいいだけです。報道するにしても、「かつて強制連行で何百万人もの朝鮮人を拉致した日本が、数十人の日本人を拉致されたくらいで抗議をする資格はない。」というような(お得意の)論調でいくだけのことでしょう。このことで北朝鮮国民が現体制に疑問を差し挟むようなことは有り得ません。

 すなわち、北朝鮮にとって、拉致している日本人を国内にとどめておくことにはデメリットしかなく、逆に、返還することにはメリットしかありません。このことは、厳然たる事実なのです。

 さて、こうした「厳然たる事実」のもと、拉致問題をどう解決するか?ですが、これはこの「厳然たる事実」を北朝鮮自らが気づけば、拉致問題は被拉致者の返還というかたちで自然に解決することでしょう。

 そのことをふまえての具体策、現在の日本の問題点については、またあらためていずれ書いてみるつもりです。

2001/02/25