021202 gensei ootuka現代政治の理論と実際 

 

「主体農法」その結果と韓国との比較

 

 北朝鮮と韓国は、元々は一つの国である。1910年に日本が植民地とし、36年間の統治を経て二つの国に分かれたのである。それならば同じ食文化であって然るべきだが、現在では北朝鮮ではトウモロコシを、韓国ではコメを主食としている。

 なぜこのようなことになっているのか、「北朝鮮データブック」では1995年の飢饉にWFP(世界食糧計画)とWFO(世界食料機構)が調査した結果を紹介している。

 

 北朝鮮では、「主体農法」と呼ばれる生産計画が行われており、農民は金日成の教えに従い、コメとトウモロコシを生産している。コメは炊き、トウモロコシは粉に挽いて団子にして食べる。

 

 FAO(世界食料農業機関)が、冬場の休耕地に麦の栽培を進言したところ、「金日成主席の指示には無い」という反論が出た。誰かが金正日書記に許可を得なければならず、万一失敗したときは責任を取らなければならない。結果、麦の栽培の許可が出るまでに一年を要した。

 

 

 

また、平凡社世界大百科事典では、「不利な自然条件のなかでトウモロコシの植付け拡大をはじめとする無理な増産政策を推進した反動として,すでに80年代の初めに地力低下や土壌の酸性化,段々畑の表土流失などを招き,不調となっていた。」とある。

 

 主体農法とは、首相・主席であった金日成の強いリーダーシップの元に展開された農法であったが、数十年間同一の手法を執り続け、且つ金日成の死後も金科玉条としたため環境の変化に対応が遅れたものと考えられる。

 

 北朝鮮の人口は2400万人。一方韓国は4500万人と二倍近い開きがある。この部分を差し引いても、北朝鮮の食料(穀物・芋類)の生産量は不足気味と捉えることができる。

しかしながら、北朝鮮の生産高には不明瞭な点が多い。韓国と比べても未発表の年が多く、ここ数年は国連の「世界統計年鑑」にもその数値は収録されていない。極めつけに、数値そのものもまるで目標値を達成したかのような、区切りのよい数値が並ぶ。

 「農業担当者が下から上がってくる数字を水増しする傾向があった。最後に指導者に報告が届く頃には、豊作に近い数値になっている。」(「北朝鮮データブック」128ページ)

 

 また、家畜の生産数も確認しておきたい。

http://www.ecocity21user.com/navigator/edahiro/edahiro0144.html

「減少しつつある一人当たりの穀物収穫量 (前編)」によると、豚肉1sを生産するためには穀物を4s、牛肉1sを生産するためには穀物を7s必要とする。つまり、家畜を生産するためには人間が食べる以上の穀物を生産しなければならない。

 それを踏まえた上で、次の家畜頭数を確認しておきたい。

 

 

http://www.fao.org/giews/english/alertes/2000/SRDRK11.htm

なお、FAO(国連食糧農業機関)のサイトからも近年の北朝鮮における気候変動と農産物収穫量の変動をみることができた。

http://www.fao.org/giews/english/alertes/2000/SRDRK111.GIF

http://www.fao.org/giews/english/alertes/2000/SRDRK112.GIF

 

 上のグラフは肥料の使用量。下のグラフはトウモロコシ(青色)、コメ(ピンク)の各収量である。肥料の生産量が落ちているため施肥ができず、収量も落ち込んでいる。

近年の工業力も衰えていることを示すものと考えられる。