20021118日 現代政治の理論と実際 増保智久 作成ノート

 

朝鮮民主主義人民共和国についての調査3

 

よくわかる政治(辻雅之)

http://allabout.co.jp/career/politicsabc/closeup/CU20020904/index.htm

http://allabout.co.jp/career/politicsabc/closeup/CU20020917/index.htm

から引用

 

1.なぜ、金正日は総書記で一番えらいのか?

 

国で一番えらい人を国家元首というが、現在北朝鮮には国家元首はいない。

「建国の父」故金日成(キム・イルソン)は国家主席であり、名実ともに国家元首であったが、彼の没後、憲法の改正によって国家主席は廃止され、現在では国会に当たる最高人民会議、軍事を司る国防委員会、そして内閣が、ほぼ並列で最高機関として並んでいるのが現状である。つまり、北朝鮮でいちばん偉いとされている金正日(キム・ジョンイル)は、その中の国防委員会の委員長に過ぎないので、国家元首とは言えない。

ここで疑問なのは、なぜ国家元首でないのに総書記である金正日が一番えらいのかということである。

それは、北朝鮮の憲法第11条で、「朝鮮民主主義人民共和国は、朝鮮労働党の領導(指導)の下にすべての活動を行う。」とあり、これが社会主義国家独特の制度、一党独裁制を謳っていて、金正日は朝鮮労働党のトップである総書記をつとめているからである。以下に、その簡単な概念図を示す。

 

http://allabout.co.jp/career/politicsabc/closeup/CU20020917/index.htmより

 

 ここで、ソ連や中国、北朝鮮がなぜ一党独裁制をとっているのかを考えると、それは共産党(労働党)が「プロレタリアート(労働者)」階級の集まりであり、社会主義は「プロレタリアート独裁」、つまり労働者階級による政治であるから、労働者階級の組織が政治を指導するのは当然のことである、という認識があり、そのため、労働者全員で政治をすることになるので、なるべくその組織の頂点にいる人も、「指導者」とはいわれても、「〜長」というえらい名前でよばれるわけにはいかない理由が出てくる。

そこで、「事務方の一番えらいのは自分たちであるが、政治の主役たちは労働者ひとりひとりだ」という建て前のもと、「事務局員」程度のつもりで「секретарь」ということばが使われたと考えられる。

また、「書記」が共産党の最高指導者を指すようになったのはソ連の頃からであり、「書記」のロシア語を調べると、「секретарь」(セクレタリア〜ト)で、これにあたる英語が「secretary」になる。この言葉は、秘書、長官、大臣という意味がある。書記長の意味で使われた「secretary-generalchief-secretaryという語も使われた)」は、(国連)事務総長という意味でも使われる言葉である。つまり日本語訳の段階で、書記ではなく、総事務、事務総長、事務局長などと訳したほうが良かったということである。

 さらに、国家元首ではなく総書記という党のナンバー1の立場で政治を動かしていくほうが気楽でいい、という理由もある。

 

2.金日成と金正日の経歴

 

 北朝鮮建国の父である金日成は、1948年北朝鮮の建国と同時に首相に就任、1949年には朝鮮労働党の委員長、1950年朝鮮戦争中に軍の最高司令官となり、1966年朝鮮労働党の総書記、そして1972年には国家元首として新設された国家主席に就任した。

 一方、現在の総書記である金正日は、金日成体制確立を受け、父の後継者としての道を歩み始め、197331歳で書記になり、その翌年、秘密裏に父の後継者として決定される。その後は、軍の指揮権を獲得する形で養成が行われたようで、1980年に政治局常務委員ともに軍事委員につき、1990年に国防副委員長、1991年軍の最高司令官、1993年に現在の国防委員長となり、1994年に金日成国家主席が死去してからは事実上の最高実力者として君臨し、1997年に朝鮮労働党の総書記となった。

 この金正日の経歴を見ると、軍をベースにした活動が主であるため、対外的な代表であり公式行事にもしょっちゅう顔を出さなければならないようなポストは嫌っていると思われる。

また、軍、国防畑をあゆみながら国を掌握してきた事実がこの経歴にあり、軍は国防と同時に「工作」を行うところといわれていることから、金正日は、色々な「工作」についてよく知っている立場にある、もしくは指揮をとる立場にある、と言われる理由が分かる。