021028iitomiy 現代政治の理論と実際   飯富 裕

北朝鮮からの脱北者

 

朝鮮民主主義研究センターニュースから抜粋

 

脱北者は今年になって増加した。脱北者の大半は中国へ逃げている。だいたいは外国人大使館へ逃げ込むが何人かは公安(武装警察)に逮捕される。そのあと彼らは北朝鮮への強制送還の確率が高い。他には難民地位を申請しようと中国を渡ろうする。しかしこれも途中で公安に逮捕されることが多い。

 

中国側は脱北者の駆け込みがやまないためにコストが膨張していることにジレンマを深めている。駆け込みの誘発の原因は国際世論を考え「人道主義の原則と国際慣例にならって」処理してきたからとのこと。

コストとはまず第一に警備コストのことである。外国人大使館に入れてしまったら韓国入国の許可を与えなくてはならないため公安が大量に必要となるのである。

第二に外交コストである。大使館へ入れてしまったら、それによって必要となる第三国を交えた交渉に費用がかかるのである。

第三に北朝鮮への食料および経済の援助というものがある。脱北の原因は北朝鮮での生活上の困難と考え、こういった援助をすれば脱北者は減ると考えるからである。昨年中国は食料を二十トン、重油を三万トン、また数回にわたっての無償援助を行っている。

今春以来の駆け込み事件のために中国側は多大なコストを払っている。

 

北朝鮮と中国の国境を越えたある脱北者によると今年の初めに北朝鮮側は脱北者、また送還された脱北者の再脱北を阻止させるため、脱北者専用の収容所が設置されたらしい。今のところ数百人の脱北者を収容されているとのこと。そこでは苛酷な労働のほか集結所の悪環境のため収容期間を終えて釈放される脱北者たちは、ほとんど廃人のようになってしまうという。また過度の栄養失調のため死亡する人もいるため、恐怖の集結所と呼ばれているという。

 

北朝鮮と中国の国境付近の警備があまりにも厳重なため再脱北も容易でないとのこと。またそれによって実際脱北者は急減している。

 

 

021111iitomiy 現代政治の理論と実際  飯富 裕

 

北朝鮮の経済展望から抜粋http://www.mof.go.jp/jouhou/kokkin/tyousa/tyou012e.pdf

北朝鮮の経済は1990年代に入ってからマイナス成長が続き、1999年になりプラスになったと推定されている。その要因は国内経済のいくらかの回復があるが、対外的要因がほとんどであると考えられている。

 10年ぶりにプラス成長になっているが、GDP規模は1989年の75%レベルにとどまっていて、原資材難、エネルギー難、設備老朽化などで工場稼働率は未だに低い状態であると言われている。

 韓国銀行などの北朝鮮経済研究者らが調査したところによると、北朝鮮のGNPのおよそ3割は市場経済が要因となっていると分析している。市場経済には2種類あり、北朝鮮当局が認める農民市場と呼ばれる合法市場と非合法なヤミ市場である。1995年以降に食料難がおとずれ配給が減るにつれ、生活必需品は農民市場での購入が多くなり、市場経済は一つの経済部門として発展するに至ったという。

 

 北朝鮮の年間食糧需要量は大まかにみて500万トン、収穫量は350万トン前後、つまり毎年100万から150万トン程度が不足してることになる。

 また台風などによって収穫が減少したが、2000年の9月に食糧配給が再開し、農民市場での食糧売買が禁止された。しかし、禁止後もまだその食糧取引は絶えないという。またその価格は値下がりしてるという。

 

 北朝鮮は石炭立国であるが、1995年の大洪水による炭鉱、坑道の水没、炭層の深度化、設備の老朽化、資源不足などから石炭生産の大幅減産がされた。そのためエネルギー難のため電力がほとんど送られなくなるという深刻な問題となった。またほかの資源の不足から交通機関などがほとんど作動させるのが困難になった。工場、鉱山などの生産現場で困難な条件の中で生産した輸出品の輸出港への輸送がほとんど無理となり、納期を守れず契約の不履行ということも起きた。

 

 北朝鮮の対外貿易は1990年代は年々輸出入額が減少していた。2000年にはやや回復すると推定されている。特に中国との貿易は前年より15%増加しており、重化学工業関連品の輸入の目立ちから鉱工業生産の回復がうかがえる。ほかの北朝鮮との貿易の多い日本や韓国も貿易額が超過になっている。

 

 対外輸出の低迷により外貨獲得が難しく、加えて累積債務の未償還から国際金融機関の融資や友好国からの借款もままならぬため、資源や食糧の輸入やインフラ(生活の基盤となる建造物の総称)整備も行うことが難しい状況となっている。実際いろんな産業が北朝鮮に進出しているが、サービス業がほとんどで製造業は小規模なものがあるだけであり、インフラ整備には相当の時間がかかると言われている。

 

今後の北朝鮮は世界中の国々と交流をさらに深めていくことが大切であると考えられている。実際ヨーロッパ、アメリカなど各国が北朝鮮に目を向けている。また北朝鮮は国際金融機関への加盟を希望しているようだ。しかし拉致問題などをかかえている日本やテロ支援国家と位置付けている米国に慎重な姿勢をとられ先送りになっている。