行政学のキーワード(9)

 

法:

社会生活の秩序(人々の社会的行為に一定の規則性ないし可測性のある事態)を維持し、多数の人々の間の配分および協力を確保するために発達した規範の体系であって、その効力を確保するために組織的な強制の裏づけをもつものをいう。法は強制的な裏づけをもち、主として人々の外面的行為を規制する規範である点で、道徳・慣習・宗教などの他の社会規範と異なるが、同時に法の中には倫理的意味を有する規範が広く包含されている。近代国家の法には、@社会生活における人々の権利・義務の関係を定める社会規範、A社会規範をめぐる紛争が生じた場合に、その紛争をいかに裁き、その侵犯行為にいかなる制裁を加えるかを定めた裁判規範、B何が法であるかを定める権威とその権威に基づいて法を定立する組織とについて定めた組織規範の3形態がある。法のうち、公けの立法機関によって一定の目的のもとに意識的に定立されているものが制定法(法律)である。(『現代政治学小辞典』有斐閣、1991年、p.252.

 

法律:広い意味では、法と同義に用いられる。狭い意味では、憲法の下に議会の議決を経て定立される国法の一形式としての法、すなわち制定法をさし、行政機関や司法機関のみによって定立される命令・規則などと区別され、国内法の上で憲法に次ぐ優越した地位を与えられている。旧憲法下のわが国では、法律は帝国議会の協賛を経て天皇の裁可により決定されたが、現憲法下では、国会両院の議決によってのみ成立する。(同、p.255.