行政学のキーワード(8)

 

囚人のディレンマ:

 「ゲーム理論」(game theory)で使われる概念である。囚人のディレンマとは、独房で互いにディスコミュニケーション(意思疎通のできない)状況におかれた囚人二人がどのように協力ないし背信し合うかをモデル化したゲームである。このゲームでは、独房に入った二人の囚人に、検察官が先に沈黙を破って自白したものを自由の身柄とし、逆に黙秘を続けた場合には一定の罰則が加えられると告げる。しかもこのゲームの特色は、囚人同士は互いの背信行為(黙秘ではなく相手よりも先に自白して自由になる)を恐れて、二人とも自白してしまうことにある。すなわち、協力でなく、背信がディスコミュニケーション状況では合理的な行動様式だとされてしまう。囚人のディレンマは、国際政治では、戦後の米ソの軍拡競争の現実を説明するモデルとして考えられてきた。軍縮(協力)よりも軍拡(背信)が米ソ関係で先行する傾向にあったからである。(鴨武彦、大学教育社編『現代政治学事典』ブレーン出版株式会社、1991年、p.442.