修士論文指導レジメ                                         619日(火)

                                                          mk000102  上ノ段憲治

 

地方都市における中心市街地活性化について

−サンポート高松総合整備事業と高松市中心市街地再開発事業を事例に−

 

1、研究の趣旨・目的

 各地域において中核的・中心的機能を担っている都市は今後の地域振興の中心として、また市町村合併等の地方分権の担い手として大きく期待されている。しかし、社会経済の変化の中、各都市において様々な問題が生じている。その中で、中心市街地の衰退が大きく取り上げられ、地方中小都市をはじめ、地方都市の核となる県庁所在都市にまで広がっている。        

これまで中心市街地は、さまざまな都市機能が集積し、新しい経済活動などを生み出したり、地域コミュニティーの中心として重要な役割を担ってきた。しかしモータリゼーションの進展、中心市街地のアクセス環境の劣化、消費者の行動パターンの変化、高齢化の進行などのインナー・シティー問題などを背景として、まちのスプロ−ル化と中心部の空洞化(ドーナツ化現象)による都市中心部の居住人口の減少、モータリゼーションの進展にともなう郊外ロードサイドへの大型店の大量進出、商店街の空き店舗の増加をはじめとする商業機能の空洞化など、中心市街地の空洞化が深刻化している。

いままでの都市計画の背景には人口増加・人口集中があったが、今後、日本は急速な少子高齢化社会に入っていき、確実な右肩上がりの経済はむずかしく、効果的な財政投資をするために、今あるストックを効果的に活用していこうという動きになっている。少子高齢化などの動きに的確に対応しつつ、地域の活性化を図るため、中心市街地において今後の都市整備の目指すべき方向を明確化することが必要であり、そういう時期にきている。

そこで本研究では中心市街地の衰退が著しい地方都市を対象にし、とりわけ自立した中核都市規模のまちに視点を向け、地方都市における中心市街地活性化を再開発のハード面と、今後ますます進む高齢化社会に対するソフト面の両方から考察していきたい。

 

2、中心市街地の定義づけ

 「中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律」においては、第二条に「1、当核市街地に、相当数の小売商業者、都市機能が集積しており、その存在している市町村の中心としての役割を果たしている市街地であること。2、当核市街地の土地利用及び商業活動の状況等からみて、機能的な都市活動の確保又は経済活力の維持に支障を生じ、又は生じるおそれがあると認められる市街地であること。3、当核市街地において市街地の整備改善及び商業等の活性化を一体的に推進することが、当核市街地の存在する市町村及びその周辺の地域の発展にとって有効かつ適切であると認められること」を中心市街地と定義づけしている。本研究では中心市街地について、「歴史的に市町村の中心として発展し、駅を中心に都市機能が集積し、歩行圏内に人、もの、情報の交流がある地域コミュニティーの中核をなしている区域」を中心市街地と定義することにする。

 

3、中心市街地の規模

「中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律」では中心市街地の規模について面積的な規定はない。そこで平成13615日までに基本計画を提出した417市町村(426地区)における人口と中心市街地の申請面積についてまとめてみると申請している都市の人口規模は200,000人未満が多く、中心市街地の面積としては群馬県沼田市の10haから福島県郡山市の900haまでかなりばらつきがあり、100ha前後の都市が最も多い。今後、中心市街地の規模に関して、人口など様々な視点から考察する必要があるのではないだろうか。本研究では、人口300,000人以上、中心市街地面積200ha以上の都市規模を取り上げてみる。

 

4、研究調査対象の位置付け

 香川県高松市は、天正16年(1558年)に藩主生駒親正が日本三大水城の一つと言われる高松城を築き、同時に内町港(現在の高松港玉藻地区周辺)を整備したことに始まり、古くから本州との交流拠点として、港とともに発展してきた歴史を持っている。

 明治43年に四国と本州を結ぶ宇高連絡船が就航して以来、四国の玄関口として、また、交通の要衝としての立地条件を生かし、国の出先機関の集積と、それに伴う民間企業の支店、支社の立地が進むなど、四国の政治、経済、文化の中心都市としての地位を築いてきた。

 このような中、高松市は今後も四国及び環瀬戸内交流圏の中で主要な役割を担い、さらに発展していくために、サンポート高松(高松港頭地区)に、国際化、情報化に対応した新しい都心の核づくり、海陸交通のターミナル強化、美しい瀬戸内海や高松城址の景観を生かしたシンボルゾーンの形成などを整備方針として、香川県と高松市で取り組んでいる。

 高松市の概要としては、人口333365人(平成136月現在)、面積19434ku、昼夜間人口比率は1130%(平成7年国勢調査)の都市であり、平成1141日に中核市に移行した。 

中核市制度に関しては、全国には、人口1000人未満の村から1000,000人以上の大都市まで、約3200の市町村があり、13の政令指定都市を除くと持っている事務権限はほとんど同じである。そこで、比較的大きな規模や能力を持つ市に、政令指定都市に準じた事務権限を移す中核市制度が平成6年の地方自治法の改正により創設された。現在、中核市の要件を満たす市は34市で、中核市の指定を受けている市は28市(平成13年4月1日現在)である。 

このように、高松市は、中心市街地の定義づけ、人口、都市規模等の処条件を満たしており、また、「都市が存在する重要な理由の一つに、比較優位性の存在が上げられるように、気候のよさ、地形的に恵まれていること、資源が豊富にあるなど天然の条件の優位さがある」(中村良平 1995年 『いま都市が選ばれる 競争と連携の時代へ』 山陽新聞社)と指摘するように、瀬戸内海に面したウォーターフロント都市であり他の都市とはちがったまちづくりが行うことができ、個性的な活性化が行えるのではないだろうか。  

 

 

5、構成

 

まえがき

 

問題の所在

 

第1章 中心市街地活性化とは

  第1節 はじめに

  第2節 中心市街地の対象と範囲

  第3節 中心市街地活性化とまちづくり政策

 

2章 地方都市の活性化の事例 −高松市の取組みを例に−

1節 高松市の中心市街地の概要

  第2節 高松市の中心市街地活性化対策

  第3節 高松市中心市街地再開発事業の実施過程

4節 高松市の中心市街地の今後の課題と展望

 

3章 中心市街地活性化におけるNPO、自治体の役割

  第1節 自治体から見る活性化対策

  第2節 NPO、商店街から見る活性化対策

  第3節 住民から見る活性化対策

 

第4章 高齢化社会から見る活性化対策

  第1節 地域における高齢者対策の状況

  第2節 高齢化社会のまちづくりの状況

  第3節 高齢化社会における中心市街地の役割

 

第5章 まとめ

 

文献リスト

付属資料

 

あとがき

 

 

(参考文献・資料)

1)高松市中心市街地活性化基本計画

2)中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律

http://www.ias.biglobe.ne.jp/madoguchi-go/laws/law.htm

3)石井晴美 1999年 「駅周辺における市街地整備の傾向と今後の課題−東京杉並区を事例として−」『都市問題 第90巻 特集 駅周辺のまちづくり』東京市政調査会

4)伊藤 滋 2000年 『新時代の都市計画 第2巻 市民社会とまちづくり』 ぎょうせい

5)伊藤 滋 1999年 『新時代の都市計画 第3巻 既成市街地の再構築と都市計画』 ぎょうせい

6)大川照雄、大川道一、宮庄秀一 2000年 『都市型社会の街づくり 中心市街地再活性化とTMOの実践』 同友館

7)大西 隆 1998年 「中心市街地問題の構造と活性化の課題」『都市問題 第89巻特集 中心市街地の再生−商店街を核とした新しい地域づくり−』東京市政調査会

8)大野輝之、レイコ・ハベ・エバンス 1997年 『都市開発を考える ‐アメリカと日本‐』 岩波新書

9)北川隆吉、貝沼 洵 1997年 『地方都市の再生』 アカデミア出版会

10)高梨敬子 2000年 『地方都市の市街地整備』 技報堂出版

11)中島克巳、太田修治 2000年 『日本の都市問題を考える −学際的アプローチ』 

ミネルヴァ書房

12)中村良平 1995年 『いま都市が選ばれる 競争と連携の時代へ』 山陽新聞社

13)水口俊典 1998年 『土地利用計画とまちづくり ‐規制・誘導から計画協議へ‐』 学芸出版社

14)蓑原 敬、河合良樹、今枝忠彦 2000年 『街は、要る! 中心市街地活性化とはなにか』 学芸出版社

15)山崎丈夫 2000年 『まちづくり政策論入門』 自治体研究社

16)中心市街地活性化推進室 http://www.ias.biglobe.ne.jp/madoguchi-go/

17)市町村自治会研究会 『平成11年度版全国市町村要覧』 第一法規 

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