修士論文指導レジメ(平成13年4月24日) 上ノ段 憲治
1、都市をマクロ的視点で見たときの問題
ここでは、都市全体を一つのものと考え、都市間や地域間の問題について考えてみる。
一極集中というと東京一極集中が思い浮ぶ。度重なる総合開発計画にもかかわらず、東
京一極集中は進んだ。そこで第四次全国総合開発計画は、このような背景のもと多極分散
型国土の形成を基本目標に閣議決定された。多極分散というと極がたくさんあるというこ
とで、東京、大阪、名古屋はそれぞれ極である。また、地方中枢都市(政令指定都市)も
極となるのではないだろうか。
しかし、実際、都市の規模を人口で見てみると@地方⇒東京、A地方中核都市⇒中枢都
市(政令指定都市)B市町村⇒中核都市、といった階層システムが構成されている。すな
わち、東京は日本全体の中心とし位置付けられ、大阪、名古屋はその次である。さらに地
方中枢都市(政令指定都市)の順になる。地方中枢都市(政令指定都市)である札幌、仙
台、広島、福岡等はそれぞれ北海道、東北地方、中国地方、九州地方の中心都市である。
そして、次が県庁所在都市である。県庁所在都市は県内で最も人口が多い都市で、県内
における業務や商業の中心的役割を果たしている。県庁所在都市は、周辺の市町村地域に
サービスを提供する。
県内のそれ以外の都市は、地域資源の特徴を生かして存在している。都市規模が小さく
なるにつれて、都市はある産業に依存している。例えば、地場産業や工業団地、観光など
である。
こうした中、地方都市では都市全体として人口減少が続いている都市、減少しはじめた
都市は少なくない。それらの多くは県庁所在都市ではなく、それ以外の都市規模が3番目
以降の都市である。このことから、多極分散型に対して各極集中型の都市システムが形成
されていることが言える。大都市と地方という二極で考えてみると、確かに分散している
かもしれないが、地方における中核都市が形成する都市への人口が増加している。すなわ
ち多極においては地方内の一極集中が起きている。
都市化の過程で、地方では、中枢都市(政令指定都市)、中核都市(県庁所在市や人口
が30万人以上の都市)が相対的に高い成長をしている。これらの都市では、業務機能の集
積、商業機能の活性化、雇用や人口の吸引力が重視される。
規模の小さい市町村では、工業以外の諸機能の集積は低い水準である。中枢・中核都市
の成長の反面、中小都市や農山漁村の多くで、人口減少・高齢化により活力が低下している。
このことから『地方の中小都市が自立的発展のためには、周辺地域との連携、交流を深
めることにより、これまでの中枢・中核都市にみられた「規模の経済」「範囲の経済」等の
効果を周辺地域を含めたより広い圏域で実現することが重要ではないだろうか。現在取組
が進められている各地の「地域連携軸構想」の参加地域は、その規模からみて発展の潜在
力を持つ。
また、中小都市と農山漁村等が、他の地域にはない魅力を生かし、地域内外との連携を
深めて、都市的なサービスとゆとりある生活環境、豊かな自然をあわせて享受できる「多
自然居住地域」を創造することが重要。』(大蔵省印刷局 『建設白書』 平成11年板)
と述べられている。
すなわち大都市、中枢都市(政令指定都市)、地方中核都市、小都市それぞれが、その都
市機能に応じた役割を演じ、地方においても過度の一極集中が生じないバランスの取れた
発展が必要となってくるのではないだろうか。
http://www.mlit.go.jp/hakusyo/kensetu/h11/index.htmより
2、今後の視点
今回は、都市をマクロ的視点で見たときの問題について取り上げたが、次回は視点を都
市の内部にあて、ミクロ的な視点で都市の問題を考えてみる。そこでは、ある程度の規模
の地方中核都市でも進行している都心の空洞化問題を取り上げてみたいと思う。
(参考文献)
大蔵省印刷局 『建設白書』 平成11年板