修士論文・中間発表レジメ

2003年7月16日水曜日

mk020111 武田祐也

指導教官・中村祐司教授

 

タイトル 「地方議会議員における採決行動の実証研究

〜千葉県我孫子市議会・「常設の住民投票条例制定を求める陳情書」をもとにして〜」

 

1、本稿の趣旨・目的

 

 2003年4月、各地で統一地方選挙が行われた。それに伴って、各地で多くの首長、地方議会議員が誕生した。有権者の期待を背に、多くの首長、議員が誕生した。

 しかし、そんな多くの誕生した首長や議員に対して、有権者の期待とは、どの程度まで達成されたのか、また、有権者が一票を託した候補の当選後の議会内での働きという部分は見えていない場合が多い。ゆえに、選挙という行為だけが政治のすべてだと思われ、投票率が下がるという点は過言ではない。

 議会とは大人数の集合体である。一人で議会を構成している地方議会は全国どこを探してもあり得ない。必ず、何人かの人間により、議会という社会が構成されている。だから、何を行うにしても、議員一人のみの行為で行うというのはできなく、また、議員一人の裁量というのは限りがある。

 例えば、議員提案により、条例案なり、意見書の送付なり、何かを議会に提案することにしても、議会全体において12分の1の賛同者を必要とする。本論で取り上げる、千葉県我孫子市議会においては3人以上賛同議員を必要とする。その自分を除いた2名以上にどうしたら提案を許可してもらえるのか、そこに議会学の醍醐味が生じてくる。

 議会という社会は政治学だけでは制せない部分がある。政治学と合わせて(またはそれ以上に)社会学の要素が登場する。その社会学の要素をどう制するのか、そこに議会を制せるかがかかってくる。ましてや、現在の議会において、あまり住民の目が届かない場所にある点により、議会において社会学が占める部分が非常に多くなっている。政治学というよりは、社会学を制せる人間(議員)が議会を制している点が多い。

 政治とは誰のものだろうか、と考えると、やはり、住民のものに他ならない。しかし、そう言った、議会内部の者にしか分かり難い、議会内部においての社会があっては、明らかに政治は住民のものであるとは言い難い。

 本論ではそんな政治学と社会学が混同している議会という部分において、より住民に身近な地方議会についての実例を研究していくものである。そんな地方議会において、一つの案件について、審議や採決がどのような理由から決断されていくのか、その理由や変化を調べていくものである。それにより、議会とは一体誰のものなのか、誰のためにあるのかについて、改めて熟考して行こうというものである。政治をより住民の手の元に戻すということを目的とする。

 

2、構成の解説

 

 本論の紹介として、構成の解説をさせていただくと、まず、本論は大きく二部構成からなる。まず、一部であるが、こちらが本論のメインとなるのであるが、表題の通り、地方議会議員の実証研究について、9章に渡って、論じることにした。

 まず、第1章ははじめにとして、この論文の目的や大まかな内容の説明を地方議会全体の置かれている状況からこの論文の意義について、論じていく。

 第2章はこの論文の対象として、取り上げる千葉県・我孫子市議会について、そもそもなぜ我孫子市議会なのか、ということを出発点にその我孫子市議会の性格や特徴、また、住民や市全体の正確性などについて論じていく。

 第3章はそもそも千葉県我孫子市議会において、議員提案により、議員の側から条例案が提案されたことが未だ1件[i]しかないということに垣間見れば、本論で取り上げる陳情書もおそらく行政の側から市長提案として、提出されることが予想されるので、その市長は住民投票について、どう見ているのか、また、どのような心境の変化があるのか、論じていく次第である。

 第4章は2000年6月の我孫子市議会、同9月栃木県議会にて提出された陳情書の審議がメインとなる。ここでは、陳情書において、住民投票の対象を公職選挙法第100条無投票当選という制度に限ったものであった。

 第5章は2001年3月、6月議会においての我孫子市議会での陳情書の審議がメインとなる。ここでは、住民投票の対象は何も限らない、常設型とした。また、3月議会より以前に行われた、千葉県東葛地域にて、若手の議員のグループである東葛ステイツマンズクラブにての模様も盛り込むことにした。

 第6章では2001年9月、12月、2002年3月議会の我孫子市議会においての審議を論じている。ここでは、陳情書について、提案方法を議員提案によるものとして限ったことが審議のメインとなり、ゆえに議員立法について主題として論じていくことにする。

 第7章では2002年6月、9月、12月においての我孫子市議会での審議がメインとなっている。ここでは、住民投票の陳情と合わせて、市町村合併においても盛んに論議された。やはり、住民投票という性格上、合併論議と合わせて審議された部分があるので、本論においても我孫子市についての市町村合併の模様も論じていく。

 第8章では2003年3月議会においての我孫子市議会での審議がメインとなる。結果的に本陳情の審議はこの議会にて終了となるので、クライマックスとして、その行方を追い求めながら、今後についての展望も論じていく。

 第9章ではおわりにとして、本論をまとめたい。今後の地方議会のあるべき姿、課題などを論じながら第一部の内容を終了としたい。

 また、第二部であるが、これは一部にあわせて付加的な要素が強くなるが、当陳情がきっかけとなり作成された千葉県我孫子市議会の『常設の市民投票条例(仮称)』について、条例作成の審議も踏まえながら、著者の逐条解説を掲載したい。おそらく、本論完成の時期には条例が完成され、成立されているものと思われる。

 

3、陳情書

 

陳情第24号 (総務企画常任委員会)
(件  名) 常設の住民投票条例制定を求める陳情書
(要  旨) 表題の件につき、議員提案により、オリジナリティあふれる常設型の住民投票条例を制定していただくよう、議会に陳情いたします。
(理  由)
(1)様々な市の問題につき、議会のみで決定していくのではなく、市民と共に考えていくことが必要なこと
(2)住民投票は、人権侵害の恐れがある政策につき、その被害を受ける恐れがある住民が、適切に且つ冷静に市に意思を訴えることができる制度として必要であること
(3)日本の政治は議会制民主主義であるためその整合性は、この条例には法的拘束力を与えないこと、また、適用要件には市民の署名だけでなく、市議会の賛成も得ることを条件として図るべきである
(4)我孫子市にも16号バイパス、市町村合併問題など市民の意思を直接問うべき問題も近い将来出てくる可能性が大きく、そのような事態になったとき、適切な処置が取れるため、事前に住民投票条例を持っておくことは重要であること
 以上(1)〜(4)の理由により、常設型の住民投票条例を制定していただくよう、議会に陳情いたします。

 

4、構成

 

1、千葉県我孫子市の採決・マクロ的調査

第1章 はじめに

第2章 千葉県我孫子市議会とは

第1節   なぜ 我孫子なのか

第2節   我孫子市議会について

第3節 過去1年の議案に対する採決調査のよる、市長系と反市長系の想定

第4節 我孫子市議会の所管委員会・総務企画委員会の構成

第3章 行政長としての首長は住民投票をどのように見ているのか

〜千葉県我孫子市長の住民投票に対する見解と推移〜

第1節 陳情提出以前の見解

第2節 市町村合併議論成熟時(2000年6月〜2003年2月まで)

第3節 市政方針演説にての常設型住民投票条例の登場

第4節 市議会『採択』を受けて行政は

第4章 無投票当選における信任投票への対応

第1節    無投票当選の住民投票に対する我孫子市議会の対応

第2節    栃木県議会における無投票当選の住民投票条例への対応

第3節 案件を無投票当選に限った活動に関しての所見

第5章 常設型・住民投票においての反応

第1節       東葛ステイツマンズクラブにおいての審議内容

第2節       常設型への我孫子市議会への初見

第3節       常設型不採択

第4節       常設型一回目の初見

第6章 立法府としての議会とは〜議員立法は高いハードルなのか〜

第1節       陳情書書き直しからの挑戦

第2節       採決・僅差まで肉薄

      第3節 議員立法の壁

      第4節 所見

第7章 市町村合併論議成熟期〜市町村合併と住民投票〜

第1節       千葉県我孫子市と平成の大合併

      第2節 迫る合併論議と住民投票

      第3節 10月の庁内研究会の存在

      第4節 逆転予想

      第5節 所見

第8章 そして、議会の視点は住民投票制度のみになって

      第1節 市民投票制度の存在〜クライマックス〜

      第2節 大逆転

第9章       終わりに

2、我孫子市の常設の住民投票条例における逐条解説(未定)



[i] 2003年7月現在である。

 その一件とは、2003年6月議会の提案された『市政オンブズマン条例』(提案者・勝部裕史議員、賛同議員・坂巻宗男議員、早川真議員、岡田彰議員、栗原洋子議員)の提案である。なお、その提案は現在、我孫子市議会にて継続審議中である。