進学先 K大学大学院(地球環境学)

 

志望動機

 大学進学時から環境関係の勉強をしたいと考えていて、自分なりに環境分野を学習の中心においていた。

環境学とはそもそも何なのか。環境分野は様々な学問分野の複合体であり、ひとつの学問分野としては確立していない。法学、政治学、経済学、様々な理工系分野などから環境という問題群へアプローチするというのが現在環境学の置かれている状況である。環境問題は様々な分野が複雑に関連していることが多く、解決方法を考えるのであれば学際的なアプローチが必要になる。したがって一定の自分のベースとなる研究分野が必要になる。  

しかし、宇大国際学部はこれといった専門分野が存在しない。そこで、私の場合環境分野で研究をするためには一から専門分野を改めて構築する。もしくは学際性を前面に活かす、のどちらかしかない。しかし、このどちらも大変難しい。なぜなら大学院は基本的にすでに粗くやってきた専門分野をさらに洗練していくところだからである。日本の大学院は現在大きく二種類の目標を持って設けられている。1つは従来のように「研究者の養成」、もう1つは「高度職業人の養成」である。後者は近年になって設けられてきたもので、経営学のMBAなどが代表的なものである。社会人の再教育も後者に当たる。環境学も後者の色彩が濃く、実際の現場の問題の解決に貢献できる人材を養成することを目的にしていることが多い。教養学的要素の強い国際学部から現実問題に対応できるスキルを身につけるためには、それなりに整備された大学院を選ぶ必要があった。

国内で学際的にかつ高度な専門性をもってスキルを身につけられる大学院はそう多くはない。たいていここ数年で設置された独立研究科(学部を持たない研究科)が多く、大規模な大学が多い。まして私のような事情を抱えているとおのずと選択肢は絞られてくる。海外の大学院も一時考えたが、就職を考え、とりあえず国内の大学院に進み、必要に応じて海外も考えるほうが望ましいとの先生からのアドバイスを頂いた。そこで国内で2つの研究科を選んだ。そこは数多くの、多数の教官が研究科に関わっており、自分の研究分野に応じて指導を受けられる、図書館など研究環境が整っている、何かと有利な都市圏に立地しているなど私に適していると思われた。

 

受験対策

 ホームページなどで研究科の特色をチェックした後、募集要項、過去問の収集をまず行った。2つのうち1つは9月、もうひとつはその合格発表があってから願書を提出するという形である。そこで、とりあえずは1つめ(K大学大学院)の受験対策をすることにした。受験科目は外国語(TOEFL-CBT)、専門(環境に関する基礎知識)、小論文、面接である。2つ目の大学院も似たような科目である。

TOEFLは結果を願書とともに送らなければならない。そして結果が出るまでには1ヵ月は待たなければならず、早めに受験する必要があった。TOEFLは受けたことがなかったのでLongmanの完全版(説明も含めすべて英語で、かなり分厚くCD8枚付き。1万円程度)を購入し、とにかくすべて解きまくった。わからないところは先生に聞いた。外国語はたいていの大学院で課せられる。研究科独自で作る問題の場合は、日本語訳と英訳がほとんどなので、日ごろから長い英文に親しんでいることが良いと思う。英論文などの学術的な英文に触れておくことも良いと思う。TOEFLの場合は参考書を参考にしてほしいが、注意点としては受験会場のリスニングの音声が非常に悪いということである。パソコンからヘッドホンで聞くが、音がつぶれているのでクリアな声に慣れていると非常に聞き取りにくい。これだけは心しておいたほうが良いだろう。後は量だと思う。

専門は200文字程度で環境の用語などを説明するという問題が複数出される。用語集などを購入して、出されやすい傾向にあるものを中心に、自分の言葉でまとめてノートに書き、それを覚えるようにした。私は『地球環境キーワード事典』(中央法規)を用いた。受験会場にも持ち込んでいる受験生を何人かみつけた。

 小論文は1000時程度で意見を述べるものである。今年度は過去と趣向が変わって具体的な地域環境問題の課題設定とその解決のための計画書を書くというものであった。比較的小論文は得意なほうではあったが、とにかく過去問を書いてみた。字数制限(簡潔さ)が特に苦労した点である。研究科が出題に際してこの本を明らかに参考にしているという本があったので、その関係する本をいくつか読んだ。その学問分野に関係する本を読んでおくことは、受験のときに応用や機転がきくので、時間を作って読んでおいたほうが良いと思う。特にその大学院の先生が書いている本は用チェック。

 面接は聞かれることがだいたい決まっているので、受験参考書などを参考に自分で回答を用意した。目の前に教官がいると想定して壁に向かって声を出して予行練習をした。実際には面接官は5人、20分で、志望動機、研究計画、学部時代について、環境に関する知識、所属研究室の選択などについて問われた。就職活動や他研究科受験をしているかという質問もあった。この質問は「ここだけです」というのがセオリーである。

 願書提出時に志望動機、大学院での研究計画、卒業論文の内容のまとめ(途中の場合は研究の概要と過程3000字)の提出を求められた。もやもやとしている志望動機と研究計画を明らかに書くということは自分にとって有意義だった。これらは先生に添削していただき、何度か書き直した。

 

実際に受けてみて

 実際に受けてみて、TOEFL-CBTはそこそこ、専門と小論文は比較的良いでき、面接は失敗したかも、というかんじで、合格が確信できる状況ではなかった。専門では大きな記入ミスをして2問分くらい新たに書く直さねばならず、時間ぎりぎりであった。面接では理系的知識を問う問題で3問中2問が「わかりません」と答えざるをえず、時間前に質問が出なくなってしまったので、「落ちたかも」と思った。とにかく全力で取り組み、真剣に答えたのが良かったのかもしれない。結果にはおのずと満足がいくようになると思う。ち

なみに倍率は約1.5倍であった。

 試験前日などは、そこそこにホテルで復習を行い、早めに就寝、早起きした。あまり切羽詰った感じはしなかった。1日目が筆記2科目、2日目が面接だったので、頭の切り替えができた。1日目は終わったあと軽く散歩や観光もした。

 結局、はじめに受けた研究科に合格し、もうひとつの研究科を受験しようか悩んだが、合格したところがすでに自分の望むところであること、受験勉強と卒論の両立が大変になること、たとえ合格したとしてもそこを選ぶ可能性がそれほど高くないこと、実際にその研究家の先生に話を聞きにいってそこまで望むべき研究科ではないように思われたことなど総合的に判断して、受験を取りやめた。ただ、先生のアドバイスでは、結論を先延ばしにするために受験するのもよい、よく考えてからのほうがよいかもしれないと言われた。しかし、最終的に後は入ってからの自分のがんばり次第と考え、受験しないと決断した。

 

その他

 僕は大学院進学を比較的早くから希望していたので、就職活動はしなかった。また、研究のための大学院というよりは自分の将来の仕事を探しに行くというほうがより適当である。そこであまり大きな顔はできない。自分なりに考えぬき、大学院でがんばると決めたものの、実際何を専攻するかが明確に決まっていないという致命的な問題もある。やってみたいことがいろいろ変わってしまうのである。こんな僕を包含してくれる大学院であると信じてその大学院を志望した。今なお不安は尽きない。それでもできる限りいろいろとやって自分を見つめてみようと思って、不安、期待、覚悟をもちつつ現在これを書いている。

大学院を単に学生生活を延長させるためと考えて志望する人は少ないと思う。文系にとって大学院の選択は結構大変かもしれない。自己分析を行って、大学院に行って何をするのかを考えながら研究科の選択、受験対策をすることをお勧めする。また、大学院の先輩形にもあたる大学の先生方にも積極的にアドバイスを求めるとよいと思う。