2001年度初期セミナー「インターネットと政府情報」レポートについてのコメント 2001年7月18日

中村祐司(担当教員)

 

久野貴史「地雷廃絶への歩み」

地雷そのものの仕組みや撤去の方策や取り組みなどについて、分かりやすい形で説明している。対策費にキャンペーンソングのCD販売収入を当てる運動は興味深い。「感想」にあるようにこのレポートを起点にして、今後ともこの問題に対する関心を持ち続けてほしい。自分なりの言葉で説明しようとする姿勢は感じたものの、事例をもう少し掘り下げてもよかったのではという思いもする。

 

楊剣「小泉内閣について」

 現代日本社会の重要課題を網羅するような形でレポートを作成している。このように小泉内閣の全体像を把握しようとする姿勢は意味のあるものだし、まとめ方もうまいし努力の跡がうかがえる。しかし、例えば、景気の問題をめぐっても、問われているのは「雇用対策」や「規制緩和」の中身なのであり、このレポートを起点に今後は個別政策をめぐる各論の展開に向かってほしい。

 

田口昌義「リサイクルとその周辺」

 自分の目線から終始一貫してリサイクル問題を考えている。ペットボトル(リサイクル不要論に対する疑問)、紙(再生紙の紙質向上への注目)といったように具体例を検討しながら、「リサイクルは今の社会に必要」であるという見解に至る。「容器包装リサイクル法」が抱える課題についてもあくまでも一生活者の視点から考察している。名古屋の事例をコンパクトにまとめてもらえればレポートの幅がもっと広がったのではないか。

 

菅原亮「JRAと日本の競馬界」

 日本中央競馬会(JRA)を対象に、この特殊法人がそもそもどのような事業を行っているのかという疑問から出発して、この組織に対する理解を徐々に積み重ねていくやり方が成功している。「パリミュチュエル方式」という勝馬投票券発売の起源についても説明も興味深い。インターネット情報で国庫納付金の使途をJRAが提示していないとしたら問題ではないか。また、「日本の賞金制度は世界最大」であるのはなぜなのだろうか。

 

猪野裕司「理想に近づき続けるロボット工学」

 ロボットと人間とを歩行の側面から比較して、「私は改めて自分という物の性能のすごさに驚いてしまいます」と述べているのが面白い。ホンダのASIMO、ソニーのSDR―X3、国防科技大学の「先行者」という3つのロボットを紹介し、その機能面を中心に説明している。ロボットに対する深い関心と工学を学ぼうとする強い意気込みが伝わってくる。ただし、例えば、日本におけるロボット工学における研究進捗の現状と課題といったような大枠の説明があってもよかった。

 

外山貴一「航空宇宙分野のレポート」

 航空宇宙工学を学ぼうとする際の大学の学科や専攻について検索したレポート。この学問領域に対する強い関心があることはレポートから伝わってくる。例えば、個々の研究室活動に踏み込んで、技術論的な側面も多少は咀嚼しながら、理解を積み上げる形での展開を行ってもよかったのではないか。「好きこそものの上手なれ」で、原動力は事象に対する情熱的な勉強意欲であるから、このレポート作成を起点にぜひ積極的に取り組んでほしい。