2000年6月6日

国際学部国際文化学科

000552M

廣瀬 宏美

 

                                                      

 

                                                      

国際化社会と叫ばれる現在、各メディアを通して各国の情報を気軽にキャッチできるような世の中に私達は生きている。情報が溢れているだけでなく、その情報をいい機会にして実際にその国を訪れてみたくなる人も少なくないのではないだろうか。この時代、実際に各国をめぐるのは難しい事ではないが、その国を知らずして訪れるよりは、少しでも知っていた方がいい。また、外国に全然興味の無い人も、無駄に情報を溢れさせないように耳の栄養にして欲しいと思う。

ここでは、各国の治安を主に調べ、特に危険度の高い地域において、どのような問題に直面しているのか、またその問題に対する対処の仕方を見ていきたい。

1.    アジア地域

ここでは、私達が住んでいる一番身近なアジアについて特に見てみたいと思う。一概にアジアといっても各国の境遇は天と地の差がある。では、次のデータを見てみよう。このデータは外務省が、海外における日本人の安全対策の一環として行っている情報提供である。その中でも特に、治安の激しい悪化や火災、騒乱、その他緊急事態が発生したり、または発生の可能性が高まっていると判断される場合には、当該国または地域の治安状況等を5段階の危険度に区分して、「注意喚起」「観光旅行延期勧告」「渡航延期勧告」「家族等延期勧告」「退避勧告」の5種類の「海外危険情報」を発出している。

 各々の「海外危険情報」の趣旨は次のとおりです。

危険度1「注意喚起」(平成12年6月5日現在71件)
 = 当該国(地域)への渡航、滞在に当たって特別な注意が必要であることを示し、「注意喚起」の具体的内容に従って行動し、危険を避けるように勧めるものです。

危険度2「観光旅行延期勧告」(平成12年6月5日現在52件)
 = 当該国(地域)への観光等を目的とする不急の渡航の延期を勧めるものです。また、現地に滞在している邦人に対しては「観光旅行延期勧告」が発出されたことを知らせると共に、状況に応じた注意を払うよう勧めるものです。場合によっては、旅行者の出国を勧めることもあります。

危険度3「渡航延期勧告」(平成12年6月5日現在38件)
 = 当該国(地域)への渡航は、どのような目的であれ延期するよう勧めるものです。また、現地に滞在している邦人に対しては「渡航延期勧告」が発出されたことを知らせると共に、状況に応じた注意を払うよう勧めるものです。場合によっては、現地に滞在している邦人のうち事情が許す方の出国を勧めることもあります。

危険度4「家族等退避勧告」(平成12年6月5日現在10件)
 = 危険度3「渡航延期勧告」の趣旨に加え、当該国(地域)からの退避に必要な準備を行うよう勧めるとともに、現地に滞在している邦人のうち家族など事情が許す方に対しては、安全な国(地域)への退避(日本への帰国も含みます。)を勧めるものです。

危険度5「退避勧告」(平成12年6月5日現在10件)
 = 危険度3「渡航延期勧告」の趣旨に加え、現地に滞在している全ての邦人に対して当該国(地域)から、安全な国(地域)への退避(日本への帰国も含みます。)を勧めるものです。

 「海外危険情報」は法令上の強制力をもって渡航を禁止したり、退避を命令したりするものではありません。渡航や滞在にあたり、観光や経済活動等の目的を踏まえ、いずれにしても「自分の身は自分自身で守る」との心構えを持って情報収集や安全対策に努めて下さい。

 

どのくらいの国々が、危険勧告を出されているのか。下の表を見てみよう。

地 域

国 ・ 地 域

アジア

インド・パキスタン
(カシミール地方の実効支配線付近)

 3 

渡航延期勧告

980807

インド
(ジャンム・カシミール州(レー市を除く地域))

 3 

渡航延期勧告

000526

インド
(マニプール州)

 2 

観光旅行延期勧告

000526

インド
(トリプラ州)

 1 

注意喚起

000526

インド
(ジャンム・カシミール州(レー市)、アッサム州、デリー市オールドデリー地域及びその周辺)

 1 

注意喚起

000526

インドネシア
(マルク州アンボン島及びその周辺地域(ハルク島、サパルア島及びセラム島))

 4 

家族等退避勧告

000121

インドネシア
(上記を除くマルク州及び北マルク州)

 3 

渡航延期勧告

000121

インドネシア
(南、北、中部及び南東各スラウェシ州)

 2 

観光旅行延期勧告

000121

インドネシア
(イリアンジャヤ州)

 2 

観光旅行延期勧告

000121

インドネシア
(アチェ特別州(北アチェ県、ピディ県及び東アチェ県))

 3 

渡航延期勧告

000121

インドネシア
(アチェ特別州(上記を除く地域))

 2 

観光旅行延期勧告

000121

インドネシア
(西ヌサトゥンガラ州(特にロンボク島))

 2 

観光旅行延期勧告

000121

インドネシア
(東ヌサトゥンガラ州(西チモール地区))

 2 

観光旅行延期勧告

000121

インドネシア
(バリ島及びビンタン島を除く上記以外の地域)

 1 

注意喚起

000121

カンボジア
(首都プノンペン市、首都プノンペン市近郊7州(コンダル、タケオ、コンポン・スプー、コンポン・チャム、コンポン・チュナン、プレイ・ヴェーン、スヴァーイ・リアン各州)、シアム・リアップ市と同市に近接する遺跡、シハヌークヴィル市と同市に至る国道4号線、バッタンバン市)

 1 

注意喚起

000515

カンボジア
(上記を除く地域)

 2 

観光旅行延期勧告

000515

北朝鮮

 1 

注意喚起

000214

スリランカ
(北部州)

 5 

退避勧告

000512

スリランカ
(北部州、東部州(一部地域を除く))

 3 

渡航延期勧告

000512

スリランカ
(東部州(一部地域))

 3 

渡航延期勧告

000512

スリランカ
(ヤーラ国立公園)

 2 

観光旅行延期勧告

000512

スリランカ
(上記以外の地域)

 2 

観光旅行延期勧告

000512

中国
(マカオ)

 

注意喚起解除

000203

ネパール中西部
(ロルパ郡、ルクム郡、ジャジャルコット郡、サリヤン郡、カリコット郡)

 3 

渡航延期勧告

000411

ネパール中西部
(ジュムラ郡、ドルパ郡、スルケット郡、ダング郡、ピュータン郡、ダイレク郡)

 1 

注意喚起

000411

ネパール西部
(ゴルカ郡)

 2 

観光旅行延期勧告

000411

ネパール西部
(ラムジュン郡、タナフー郡、パルバット郡、バグルン郡、グルミ郡、シャンジャ郡、カスキ郡(ポカラを除く))

 1 

注意喚起

000411

ネパール中部
(シンズリ郡、カブレパランチョーク郡、シンデュパルチョーク郡、ドラカ郡、ラメチャップ郡)

 1 

注意喚起

000411

パキスタン
(カシミール地方(北方地域を含む)の管理ライ ン付近、シンド州ダドゥー地区の山岳部及びジャコババー ド地区とサッカル地区の森林地帯)

 3 

渡航延期勧告

000414

パキスタン
(ダドゥー地区の山岳部及びジャコババード地区 とサッカル地区の森林地帯を除くシンド州)

 2 

観光旅行延期勧告

000414

パキスタン
(上記の地域を除く全土)

 1 

注意喚起

000414

東チモール
(アンベノ地域)

 2 

観光旅行延期勧告

000317

東チモール
(アンベノを除く地域)

 2 

観光旅行延期勧告

000317

フィリピン
フィリピン・ミンダナオ島地域(東ミサミス州、ブキドノン州)

 1 

注意喚起

000504

フィリピン
(フィリピン・ミンダナオ島地域(スルタン・クダラット州、南サンボアンガ州、北サンボアンガ州、南コタバト州、西ミサミス州、サランガニ州))

 2 

観光旅行延期勧告

000504

フィリピン
(フィリピン・ミンダナオ島地域(マギンダナオ州、南ラナオ州、北ラナオ州、北コタバト州、バシラン州()、スールー州(諸島)、タウイタウイ州(諸島))

 3 

渡航延期勧告

000504

ブータン
(インド・アッサム州との国境付近)

 1 

注意喚起

000208

ラオス
(サイソンブン特別区、シェンクワン県クーン郡、ウドムサイ県パクベンからウドムサイに至る国道2号線周辺)

 1 

注意喚起

000313

アジアは比較的危険である地域が多いように見受けられる。しかしその危険度は、極度に高いわけではない。治安の悪さは一体どのようにして起きてくるのだろうか。気候の関係だろうか。それとも政治の影響だろうか。アジア地域では、唯一スリランカが危険度5の退避勧告を叫ばれているが、それではいったいどんな状況なのだろう。

  1. スリランカの治安について

スリランカにおいては、北部・東部地域の分離独立を主張するタミル過激派(LTTE)が政府軍・警察に対する武力闘争を続けており、これまで同様治安上の懸念材料となっています。LTTEは昨年よりジャフナ市(タミル人の本拠地)への攻勢を強め、本年4月末にはジャフナ防衛の政府軍の重要拠点であるエレファント・パスを陥落させ、現在は同市近郊に迫っており、今後同市奪還への大規模な攻撃を行うことが予想されています。
 このようなスリランカ北部ジャフナ半島での戦況の悪化に対応するためスリランカ政府は
53日、これまで発令していた緊急事態令を拡大・強化した新たな緊急事態令を交付・施行しました。この緊急事態令の最大の特徴点は国家の安全及び公共の秩序の維持のため国防省、陸海空軍及び警察に極めて大きな権限を付したものです。

以上からスリランカは民族紛争が激化しているようだ。それに対する日本人への注意勧告として、

o        夜間の外出は厳に控えて下さい。また、同地域の郊外(例えば、ニラヴェリ地域より北、チャイナ・ベイ地域より南、あるいはトリンコマリー市からアヌラーダプラに直接抜ける国道A12号線など)には行かないようにして下さい。

との注意がある。また、スリランカにおいては、つい最近(6月7日)に自爆テロが発生しているため、このように危険だと位置付けられているのも納得がいく。国民の政府に対する不満が募っているのだろうか。さて、日本はこのスリランカとどのように付き合っていっているのだろうか。

  1. スリランカと日本の団体

日本の団体(タランガ・フレンドシップ・グループ)の教育派遣は、スリランカの人々の役に立つように、少しでも役に立てられるように様々な工夫がなされている。それだけでなく日本の子供たちにもスリランカの国のことを知ってもらおうと、スリランカの子供たちの誰もが知っている物語を、絵本にして出版したりもしている。

Bインドネシアの治安

北マルク州では昨年末に発生した抗争により、本年初頭までに700人を越える住民(一部報道では2千人を超す住民)が殺害された旨報じられており、その後も抗争は終息する気配が見られません。宗教抗争はアンボン暴動でも見られるように、お互いが報復を重ねるため短期間での終息は難しく、また、一時的に平穏となっても些細なきっかけで再発し、且つ、再発した場合はそれまで以上に過激な抗争が繰り広げられる可能性もあります。
 マルク州のアンボン島及びその周辺地域には既に危険度4「家族等退避勧告」を発出していますが、マルク州のその他の島嶼地域でも散発的に住民同士の抗争が報じられており、何時大きな抗争事件に発展するか予断を許さない状況です。

アチェ特別州の北アチェ県、ピディ県及び東アチェ県等に於いてはこの数ヶ月の間に学校、政府機関、民家、バス等に対する放火事件や暴動、さらには治安当局と独立を求める武装集団との銃撃戦等が断続的に発生し、多くの死傷者や避難民が発生しています。特に、昨年10月以降、武装集団の動きが活発化し、治安当局や政府機関に対する攻撃だけでなく、民間人に対する強盗や殺人等の事件も多発しています。さらに、上記3県以外の同州内の他の地域についても同様に治安の悪化が見られ、独立を求める住民投票の動きもあり、今後も情勢の推移に一層の注意が必要です。

宗教の違いによる紛争、反乱、抗議、その他は、日本のような単一民族から成り立つような国において、まったくといっていいほどみられない。しかし、どのくらいその争いが激化しているかは、上の文章から少しばかり分かっていただけたろう。

 2.中南米地域

 中南米地域においては、特に注目するような危険地域は危険度3の、エクアドル(トゥングラゥア州トゥングラゥア山脈周辺地域及びピチンチャ州ピチンチャ山脈周辺地域)くらいである。

 3.欧州地域

欧州地域における危険度の高い地域は、危険度3 アゼルバイジャン・アルバニア・ウズベキスタン・グルジア・ユーゴスラビア、危険度4 キルギス・タジキスタン・ロシアのチェチェンである。

1.    タジキスタンの治安

ガルム地方(首都ドゥシャンベ市の東45キロに位置するヌレク市以東でヴァフシ川上流部)では、98年7月に発生した邦人を含む国連職員4名の殺害事件後も国際機関職員や外国人を標的とした事件が続発しています。また、同地方は多くの急峻かつ狭隘な渓谷からなっており、政府の統制が及ばず、大小様々な武装勢力が跋扈しており、依然として治安状況は不安定であり、治安維持のための警備体制がとられています。

4.大洋州地域

危険度3 ソロモン諸島(ガダルカナル島)・パプアニューギニア(ブーゲンビル島)・フィジー島であり、その他特に危険な地域はない。

5.中近東地域

中近東地域ではところどころで危険である報告が出されている。ここでは、危険度5のアフガニスタンとイラクについて知識を深めたい。

1.    アフガニスタンの治安

1)アフガニスタンでは、昨年7月下旬に、タリバーンと反タリバーン各派(主力はマスード派)との間で大規模な武力衝突が発生しました。現在も同国北東部及びカブール北方地域で小規模ながら戦闘が継続しています。

2)また、米国は現在、アフガニスタンに潜伏中と言われるオサマ・ビン・ラーディンの引き渡しをタリバーン側に求めており、米国人を狙ったテロが発生する可能性があります。さらに、ロシアは、「ロシアあるいはロシアの同盟国の国益に対する脅威が現実に生じる場合には、アフガニスタンの国際テロ基地に対して、予防的な意味での攻撃を行う可能性を排除しない」旨述べる等、状況はさらに危険な要素を含んだものとなってきています。

3)昨年春以降、同国から一時退避していた国際機関職員が、一定条件の下で帰任しつつありますが、米英両国は治安上の問題を重視し、自国出身の国際機関職員の同国への帰任を許可していません。

4)なお、在アフガニスタン日本国大使館は一時的に閉鎖されたままであり、邦人保護活動は非常に困難な状況にあります。

2.    アフガニスタンと日本の団体

パキスタン北西辺境州、アフガニスタンにおいてハンセン病の治療を主とする医療活動をしている民間国際協力団体(NGO)、ぺシャワール会。国際化、NGOという言葉すらなかった中、日本の市民団体で始めて、独力でこの種の医療活動を実施した。「あらゆる利害から無縁なところで『人間』に触れ得たのは恵みだ。」とぺシャワール会の先導者は言っている。この様な意見は私達先進国に生きるものにとって、とても大切なもの、そして忘れかけていてモノを思い出させてくれる。また、「パキスタン、アフガニスタンは日本に比べてかなり貧しいが、貧しいからといって人間の品性まで堕落するとは限らない」ということも言っている。考えさせられる意見である。経済大国日本に住む私達はどうしても日々の忙しさに紛れ込んで、しっかり世界を見据えることを怠りがちになるものだ。

3.    イラクの治安

 イラクに対しては、1990年8月2日のイラクのクウェイト侵攻を受けて、同月4日、渡航自粛勧告(現名称:渡航延期勧告)及び退避勧告を発出して以降、同国への渡航及び滞在は厳に差し控えるようお勧めしてきました。
 しかし、98年12月17日、米英両国は対イラク武力行使を終了する旨発表し、また、アンマンに一時退避していた国連人道機関の職員がイラクに帰任し活動を再開し、現状では直ちにイラク全土に対する武力行使が再開される可能性は低くなっています。また、昨年夏以降、大規模な大衆蜂起を伴う騒擾事件は見られません。
 しかしながら、現在でも南北の飛行禁止区域(北緯36度線以北及び北緯33度線以南)における空爆は行われており、また、イラク北部及び南部における治安状況は劣悪です。
 飛行禁止区域以外の地域においても治安状況は不安定で、短期間の内に深刻な状況になる可能性も否定できません。特にバグダット市内のシーア派密集地域(サッダーム・シティ、シュアラー、カージミーヤ及びアーザミーヤ)においては、政府機関等に対する襲撃事件や暗殺事件も伝えられています。
 また、イラクの医療・衛生事情は劣悪で、軽微な事故や怪我に遭遇した場合にも、現地で適切な治療を受ける手段は限られており、また、国外への連絡・退避手段についても、限られています。

6.アフリカ地域

アフリカ地域は最も危険度が高く、危険度5の地域が6カ国もある。アンゴラ、エリトリア、エチオピア北部、シェラレオネ、コンゴ、ソマリアである。これらの国々はいずれも難民、民族紛争、地雷などに悩まされており、日本人が訪れるにはそぐわ

ないという。

7.まとめ

外務省のホームページ、それからインターネット上に公開されている様々な国についてのホームページから各国の事情がありありと映し出されていたように思う。世界の中にはまだまだこれから解決しなければならない問題が数多くあり、21世紀を生きる私達に課せられた課題はとても大きい。この様な地球に生きている一員として、世界を見据える目、柔軟に対処する態度、そして長期間に渡ってその政策が国々に、世界に、そして地球にどのような影響を与えるか考える千里眼を養っていきたいと思う。 8.ホームページアドレスとコメント

海外危険情報

http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/info/joho/index.html

このページから各国の危険度とその理由を、具体的に見ることができる。治安のよい国は載っていない。(廣瀬)

タランガ・フレンドシップ・グループ(イスラエル)

http://www.e-net.or.jp/user/taranga/

このページでタランガ・フレンドシップ・グループの活動趣旨、活動内容が分かる。(廣瀬)

ぺシャワール会(アフガニスタン)

http://www1.mesh.ne.jp/~peshawar/Postcards/index.html

このページでは活動内容はもとより、アフガニスタン実状をおさえた写真(絵葉書)と出会える。(廣瀬)