030526                       k010117 菊地史子

〜都市再開発事業と地権者〜

六本木ヒルズの場合、従前権利者数は約500名。以前の再開発事業のアークヒルズでは地区外転出が多く権利者は10分の1しか残らなかったが、この事業では400名ほどが事業に参加、地区外転出者が少ないことも特徴の一つ。

     開発地区の町会が分かれていた(六本木通り沿い、テレビ朝日通り沿い、日ヶ窪地域など5地区)

地区ごとに再開発に対する理解を深めてもらうために懇談会を設け、順次協議会に格上げしていくという活動を森ビルやテレビ朝日が中心となってやってきた。この活動は比較的スムーズに行き、協議会での活動を受けて、平成2年に約8割方の同意を得て、準備組合が設立された。行政側もこれに答えて再開発事業の説明や推進計画づくりについて指導。しかし、実際は一部に強固な反対者が居て対応に苦労。あるグループが賛同すると別のグループが反対するといったこともあったらしい。

     準備組合設立から都市計画決定まで5

容積率についてある程度の理解を得るまでに3年、その後、都市計画の手続きで(再開発地区計画の手続きも含む)と環境アセスメントを並行して進めて2年。都市計画決定時には9割以上の権利者が賛成していたが、その後さらに行政側の指導のもとで、残った反対権利者の説得を続け、平成11年に権利変換計画の認可にこぎつけた。

     地元の人々の理解

アークヒルズはあらゆる意味で日本で初めての本格的な再開発のケースであったため、再開発の話に入る前に大変な労力を要したが、六本木六丁目では最初から再開発について話すことができた。しかも普通、再開発事業では総論賛成、各論反対になりがちで、都市計画決定まで団体で交渉しても計画決定後は個別協議になることが多いが、この事業に関しては都市計画決定後も団体協議で進めることができた。森ビルも多くの会合(公式のものだけで400回を越す)を行ったが、地元の人々の理解度も高かったといえる。

 

     従前地権者は大体どれくらいの床面積を取得するのか

>保留床と権利床は大体半々位。権利床の中では、森ビルとテレビ朝日が6割くらいを取得。したがってその他の地権者は全体の2割くらいを権利床として取得することになる。権利者取得部分は住宅が多いが、その外にも事務所部分も賃料を得られるいわゆる収益床という形で取得して、そこでの収益を住宅の管理費、修繕費に充当することとしている。

     再開発によって生活環境が変わって従前地権者が違和感を持たないか。

>アークヒルズの例では、確かに最初は戸惑いもあったようだが、すぐに慣れたようだ。

     公開空地の管理は誰が行うか。池の部分、東西道路は区の管理?

>管理組合で行うかが、実質的には森ビルが全体のマネジメントを行う。コストやセキュリティの問題が大きく、安全と賑わいを両立させることが今後の課題。池は公開空地であり、区の管理ではない。車道と歩道は東京都の管理で、残りは公開空地。半公共的な空間を民間でどうコントロールするかが問題。特に最初にいかにうまくコントロールするかだ。

     準備組合が発足したときにバブルが崩壊して、権利変換が昨年であり、その間地価下落もあったと思うが、権利変換時の等価変換の基準はどこにおいて合意を得たのか。

>地価下落に伴う従前土地等の評価見直しとともに、建築費等の事業費についても徹底した合理化を図り、地権者の人びとの理解を得られるように進めてきた。

 

     行政から特に要請されたこと

道路などの基盤整備、池や緑地の整備、住宅の供給の3点が主。文化施設に関しては事業者側の判断。高さについては、もう少し高くしたかったが、航空法等の問題もあって現在の計画となった。備蓄倉庫は行政からの指導もあるが、事業者側としても積極的に災害時の対応のため、それ以上のものを整備していく。備蓄倉庫については施設の移管も考えられるが、当面は管理組合が管理する予定。小学校の整備については、都心部で、小学生が減少し、小学校が余っている状態なので、整備の必要はない。

(http://www.h3.dion.ne.jp/~urc-mint/u0920.htm 森ビル株式会社専務取締役山本和彦氏の講演より)

 

<新たな問題と今後の展望>

都心5区の空き室率の上昇。オフィスビルの供給過剰による賃料の低下。既存のビルの賃貸条件が、再開発で生まれた優良物件にテナントを引き抜かれるなどして、貸し手側にとっては厳しさが増している。

しかし、貸し手側に厳しい条件は借り手にとっては有利な条件となる。都心の便利な場所にありながら賃料が安い、という条件を生かして様々なビジネスが誕生している。

例…中古のオフィスビルを改修してマンションに転換。幹線道路から外れたオフィスビルはオフィスとしては不向きだが、住宅には向いている。都心には賃貸住宅は少ない。したがって、住宅への変換は今後有望なビジネスとして成立すると見られる。住む人も増えれば、物品販売やレストランが必要となり様々な文化施設、学習機能も必要になってくる。いわゆる生活機能の充実が不可欠となる。

www.fpcj.jp/j/fshiryou/jb/0325.html