2017年6月 中村祐司の教育日誌
17/06/01. Thurs.
スポーツ社会学(白鴎大学)
第7回目のポイントは「地域密着型プロスポーツの飛躍」。リンク栃木ブレックスのリーグ制覇の背景に焦点を当てた。今回の快挙はバスケに限らず、プロスポーツクラブの先導モデルとなり得るだろう。何よりも地元栃木県での頑張りが全国的に通用することを証明した。このことは他のスポーツ競技に限らず、県内の多くの人々に勇気を与えたのではないか。
スポーツ行政論(白鴎大学)
第7回目のポイントは「スピード追求の先駆者たち」。ミッドナイト競輪、インディ500の佐藤琢磨選手の優勝、ボートレーサー今村豊選手の病との向き合い方、全盲ランナー高橋勇市選手の頭の中での時間計算と正確な走行距離の把握、往年のマラソン名選手君原健二氏の1964年東京五輪プレッシャー経験を取り上げた。そこに共通するのは所与の環境をポジティブに捉えることの大切さではないか。
17/06/05. Mon.
行政学
中間試験の実施(50分間)。採点してみなければ何ともいえないが、ほとんどの受講生が集中して解答用紙に鉛筆を走らせていたので、まずは一安心だ。解答用紙回収後、次回以降の授業に勢いをつけたくて、ミニ講義として全体概要について説明し、現段階での位置づけ(制度学の終了)を明確にした後、早めに終了。受講生はこのままさらにステップアップできるのではないか。
余暇政策論
前半は反転授業として、予めMoodleに掲載しておいた新聞記事5本(高校生と社会人のグループ討議、母親の「ワンオペ育児」CM動画の反響、米欧書店の巻き返し、多様性を尊重するアーツ、足で稼いだ五街道情報の価値)の中で、受講生が最も関心を持った記事を指摘させ、それを取っ掛かりにやり取りを行った。途中、追加の新聞記事と絡めて育児分担のあり方を問う動画を三つほど提示した後、再び意見交換を試みた。次回は研究室所属の社会人院生による話題提供。
行政学演習
いよいよ今回から2巡目の報告。ゼミ論作成を強烈に意識した報告となる。そうはいっても白紙に活字を埋めていくのは並大抵の知的作業ではない。何度経験しても締切のプレッシャーと論文作成だけは楽にならない(むしろ年々どんどん辛くなる)が、皆で励まし合って誰もがこれまででベストの論文に仕上げてほしい。まちづくり提案について市から要領が来たので紹介。ゼミ生にはぜひ積極的にチャレンジしてほしい。
国際学英書講読
プリントは8枚目、オピニオンとしては3枚目。”Okinawa reversion, 45 years on”と”Trump’s
disability is Dunning-Kruger effect”. 読み返すたびに一国の指導者が果たしてこれでいいのかと不安になってくる。確かに教員にも受講生にも取っつきにくい内容だが、認知科学のアプローチの発端が、この分野ではまったくの素人のコラムニストというのが大変興味深い。残念ながらThe Japan Timesの各国社説の復活はどうやらなさそうだ。音声もあり、ありがたいと腹をくくってオピニオンを読んでいこう。
卒論・修論指導
2名から報告。今回も全員が揃う。修論生にとって論文作成の大切な分岐点となる中間報告会が近づいてきた。来年3月卒業・終了する学生・院生にとって、今月は正式な就活解禁の月だ。進路もあり論文もあり、いろいろと大変だろう。種々抱えているのは大学教員も同じ。やるべきことを正面から捉え、伴走していきたい。
17/06/08. Thurs.
スポーツ社会学(白鴎大学)
第8回目のポイントは「世界のプロサッカー市場と社会」。サッカーマネーの新聞特集から、欧州、日本、中国、南米、北米のリーグ運営の特徴や賭けの対象となる欧州について触れた。進行中の試合を対象にした賭けが200種類あるとの記述に驚いた。スポーツベッティングの深みにはまるとどこまでも行きそうで恐いと思った。準備の内容が授業では正直にさらけ出されるものだと実感した。
スポーツ行政論(白鴎大学)
ポイントは「高速競技と技術」。エアレース(空のF1)、高速ヨット(海のF1)、卓球の日本製球、チェアスキー、フレスコボール、(高速競技ではないものの)ボッチャ、そしてブラインドサッカーを対象とした。最高速度が時速90kmの高速ヨットの技術発展の中身について揚力や水中翼など、文系の頭で必死に説明した際、受講生の集中力も上がっていったようだった。受講生の評価はともかく教員としては、間延びした内容授業はタブーだ。濃縮的な授業に毎回チャレンジしていきたい。
17/06/12. Mon.
行政学
官僚制組織論の後、管理学に入る。横割り組織と縦割り組織の調整などできるだけかみ砕いた説明を心掛けたが、どうしても抽象レベルの話が続いてしまった。情報伝達経路の太さの話は次回なので、粘り強く丁寧に進めていきたい。テキストは地方自治体の改革について。コラム二つも早足で終わらせ、地域社会と若者をつなぐ組織スタッフによる説明の時間を取る。実践に踏み出す受講生が出てきてくれればありがたいが。次回のテキストは第7章とコラム。
余暇政策論
マスコミ勤務の社会人院生から真っ向勝負のトークと質疑応答。空理空論とは無縁な実践からの知見は受講生を引きつけたはずだ。受講生からの質問内容もよかった。転職を例に挙げれば、大切なのは自分が従事してきた仕事の中身であって、転職そのものの良し悪しをそもそも論じる意味はないのだ。受講生への応援歌ともなったであろう。こうした機会を折り触れて授業に取り入れていきたい。
行政学演習
2巡目の2回目報告。複数のゼミ生から論文の輪郭がよりはっきり見えてきた。この調子で進めいけば、完成への道は遠くないと思う。やはり現場に身を置いた上での指摘には迫力がある。そこで得た情報は価値あるオンリーワン情報でもある。まちづくり提案などにも論文作成の経験は必ず生きる。ただ、後期ゼミの年内活動の中心はどうしてもまちづくり提案とジョイントとなるだけに、今月末のゼミ履修との絡みで悩ましいところだ。
国際学英書講読
プリントは9枚目、オピニオンとしては4枚目。”Limiting universities in Tokyo”と”Burton
Watson, noted translator, remembered”. 1本目は大学生の関心に直結した内容。2本目は確かにエッセイ風の回想録であったものの、繰り返し読むと登場人物の人間味の深さに引きつけられた。とくに英文は一度読んで面白くないと見切るのではなく、読み返すことで新しい知見を得るケースが多い。この授業では辛抱強く継続していくことの大切さを毎回実感している。
卒論・修論指導
前期ゼミ生へのまちづくりやジョイントの説明の仕方などをめぐって、期せずして卒論生との間で話し合いの機会を持つことができた。その分、報告開始は遅れたが、教員にとっては次回のゼミ内容の道筋が付いた機会となった。論文作成は孤独な作業の連続だからこそ、 研究室メンバー間での励ましや一体感が不可欠なのだろう。
17/06/15. Thurs.
スポーツ社会学(白鴎大学)
ポイントは「スポーツ人が持つ社会的インパクト」。プロ野球から社会人野球に移りさらに拠点が変わった選手の野球に向き合う姿勢、独立リーグの球団社長としてスタートを切った元選手、ノルディック複合トップ選手の他競技の動きを取り入れる練習方法、インド女子レスリング選手がスポーツの女子参加に果たした役割、地域密着型プロバスケットチームが優勝した意義などを取り上げた。対象の競技・種目は異なるものの、いずれの事例でもスポーツ価値の社会へのポジティブな影響力を発揮している点で共通項がある。
スポーツ行政論(白鴎大学)
ポイントは「スポーツテクノロジーの浸透と広がり」。IT技術がスポーツ現場と観戦を大きく変えること、医療施設におけるメディカルフィットネスに見られるスポーツの可能性の拡大、オリパラ教育教材の意義と教育における新境地、パラスポーツ出前授業への期待、”スポGOMI”とバリアフリーのまちづくり、スポーツと花(フィギュアスケートの場合など)を取り上げた。たとえばビクトリーブーケ一つをとっても、それを支える人と市場のメカニズムがいかに大切か痛感した。
地域の姿と課題T(地域デザイン科学部学部必修)
昨年度と同様に、4人の教員が8回の授業を担当する。やはり昨年度と同様に、外部からゲストスピーカーを呼び、質疑応答、グループ討議など参加型授業も盛り込む。授業時間割表の建物番号が間違っていて慌てたものの、受講生は臨機応変に対応してくれた。昨年度の教室よりも若干やりやすいのではないか。初回は授業ガイダンスの内容で、本格的には次回以降からだ。受講生には六つのテーマのいずれにおいても問題意識を深掘りしてほしい。
17/06/19. Mon.
行政学
情報伝達経路の太さの話から入る。組織均衡論、面従腹背、取締活動の整備基準など。あまりにも一方的な講義が続くのもどうかと机を回って受講生の理解度を確認した。わからないという反応はなかったものの、興味深く聴講しているという風でもない微妙な雰囲気だった。しかし、こちらとしては政策論までは是が非でも終わらせたいので、残り4回の講義は詰め込んだ内容とならざるを得ない。グループ討議を入れられるかどうか。新聞折りの実演も反応は今ひとつか。次回テキストは第8章とコラム。
余暇政策論
スクリーンの操作はTAに任せ、自分が教室内をマイク持参で回る形で受講生とのやり取り重視の授業スタイルを取った。これが結構よかた。というのは普段より多めの新聞切り抜きのどれかに反応した受講生がいたからだ。芸術における参加型作品、電子コミック市場の拡大、人気ユーチューバーの閲覧数の凄さ、学生の就職活動、ネットトラブルやブラックバイトへの対応、オワハラ終焉の背景、大学による保護者向け就活情報の提供、雇用を増やしたい対象大学における地方国立大の健闘(宇大は5位!)、三味線演奏家の国際的活躍(動画提示)、瀬戸内7県の観光地の美しさとアイドルグループの融合(動画提示)、地域の活力と「ごちゃまぜ概念」、牛写真家の熱い取り組み、などいずれも新聞切り抜きから紹介した。
行政学演習
2巡目の3回目報告。いずれのゼミ生も確実に前に進んでいるのが大きい。後半は4年生らまちづくり提案・ジョイント合宿経験者とゼミ3年生との率直な話し合いの機会とした。研究室としては初めての経験だと思う。院生と研究生については資料室にて明日の修論中間発表の最終的な詰めを行った。まちづくり提案もジョイントも学生時代ならではの貴重な経験の場であり、ぜひ意欲的に取り組んでほしい。後期ゼミ履修者の輪郭が少しずつ見えてきた。
国際学英書講読
プリントは二桁の10枚目まで来た。オピニオンとしては5枚目となる。”AlphaGo AI stuns go community”と”We need an environmental criminal court”を読む。これまで積極的とは言い難かった男子受講生3人がバトン渡しのように訳を名乗り出た。教員としてはやや心が折れかかっていたので救われた。時間も余裕を持って訳し終えることができた。やればできるということだ。残り4回、このような形で充実させていこう。
卒論・修論指導
決して安心しきっているわけではないが、ようやくここまでたどり着いたといった感じだ。報告は実質3名から。残りの時間はとくに留学生の就活について話し合った。世代間のやり取りが実践できる研究室なので、こういう機会を設けるのは、とても有益だと思う。この時間の研究室メンバーの顔を見ると、元気をもらえる。
17/06/22. Thurs.
スポーツ社会学(白鴎大学)
第10回のポイントは「スポーツと地域社会の活力」。サッカー・キッズリーダー活動の巡回指導を通じた保育園・幼稚園児を対象とした企業の地域貢献、Jリーグクラブを仲立ちとする日本企業のアジア進出、バスケBリーグが抱える会場不足の課題、日本・米国籍を持つスポーツクライミングの新星、サッカー元日本代表の沖縄でのチームや農業等の挑戦、南アフリカ共和国出身の大リーガーの初安打、1964年東京五輪直前にはずされた元サッカー日本代表主将の失意からの奮闘を取り扱った。とくに最後の話題が教員にも受講生にも最も印象深く心に残ったのではないか。
スポーツ行政論(白鴎大学)
ポイントは「多世代かつ多面的なスポーツ参画」。第5世代(5G)における立体映像・AI・IoTのすごさ、米インディアナポリス市のスポーツを核とした都市づくり、スペイン・ビリャレアル市のサッカークラブと市民、北海道旭川市西神楽の住民主導によるパークゴルフ場づくり、栃木県佐野市・小山市・矢板市のスポーツツーリズム、「ぐんまフットボール映画祭」をめぐる主催者の熱い思い、大学運動部員(中京、立命館、法政)に対するキャリア設計や複数の居場所づくりの支援を対象とした。規模や集客とは別の次元のスポーツ参画を通じた社会形成の価値を感じた。
地域の姿と課題T(地域デザイン科学部学部必修)
2回目の今回からが本番となる。7回目まで毎回ゲストスピーカーを招き、講話、グループ討議、質疑応答を展開していくからだ。コミュニティデザインの担当回は今回と次回。教室は昨年度よりもやや大きくてやりやすかった。首長から町政を預かる日頃の思いを率直に語ってもらった後、グループ単位で質問を作成し、一問一答で町長と受講生とのやり取りを行った。また、予定にはなかったが町長から受講生へ質問(将来何になりたいか。またその理由)を投げかけてもらった。それに対する反応もなかなかのものだった。福祉に関わる最後の受講生と町長のやり取りは胸に迫るものがあった。昨年度と同様、確かに事前の調整は大変だったが、この授業を担当して良かったと心底思った。次回もしっかりと臨みたい。
17/06/26. Mon.
行政学
官僚制批判の説明から入ったが、どうしても目下の政官摩擦の問題が頭にちらついてしまう。その後は政策論に入り、いよいよ最終コーナーが遠くに見えてきた感じだ。政策対応のレベルについて板書したこともあり、テキストに触れる時間が短くなってしまった。マイナンバーについては根本に給付か捕捉かの考えた方の違いがある点を、コラムでは緑の空間の大切さを指摘するにとどまった。あと3回の授業のうちに果たしてグループワークを入れることができるだろうか。まずは次回(第9章とコラム2つ)をしっかりやることだ。
余暇政策論
昨年度受講生の真剣な創作が印象に残った「愛と数学の短歌」づくりを今年度も実施。受講生が多いため紙は小さくなり時間もさほど取れなかったものの、やはり反応は良かったと思う。短歌については一つ一つ丁寧に向き合って見ていきたい。その後、新聞記載提示に戻り、地方(北関東)のレトロ風遊園地、震災復興につながる東北のヒップホップグループや盆踊りバンドの活動、元祖人形アニメーション作家のすごさ、「もっと亀になる」という声楽家の卓越した信念を取り扱った。後半の3事例については動画4本を提示した。
行政学演習
今回予備日に設定しておいてよかった。二つに分かれて論文の主に形式面をチェックした。時間切れで半分強のゼミ生にとどまったものの、完成に向けての弾みとなったはずだ。いよいよ来週が草稿の提出となる。今後のスケジュールを確認すると何と7月31日は定期試験なのに最終報告会を入れてしまった間違いに気づく。正しくは7月10日が完成原稿の提出で、24日が最終報告会となる。訂正をゼミ生に伝えなければ。
国際学英書講読
プリントは11枚目で、オピニオンとしては6枚目。”Make hate speech law stronger”と”The sin of engineering without a license”を読む。結局1本目を一人が訳し、2本目も別の一人が訳す。予習の程度は両者で雲泥の差があったものの、訳し切るという達成力では同等なので、敢えて他の受講生には当てなかった。次回以降からは主導性を教員ではなく受講生が発揮してくれればありがたい。
卒論・修論指導
この時間帯となるとメンバー間で気心が知れているせいかほっとするのも事実。それでも各自の研究の歩みを止めるわけにはいかない。二人から報告。そのうちの一つについて、意欲は尊重したいものの、テーマを絞らないとしんどいのではと直感した。社会科学の領域でかつ個人研究を前提とする場合、実験系のように研究室単位での方向性が決まっているわけではなく、個々の研究の試行錯誤は付きものだと思い直すようにした。
17/06/29. Thurs.
スポーツ社会学(白鴎大学)
第11回目の板書のポイントは「どうなる日本の大学スポーツ(など)」。新聞の7回にわたる連載特集記事から、全米大学体育協会(NCAA)をモデルに日本版NCAA創設の検討と課題などを指摘した。克服の鍵は競技別統括組織の垣根をどう取り払うかにありそうだ。続けてスポーツ選手個人の焦点を当てた。ゴルフの男子全米オープン、フリースタイルスキー・モーグルの若手男子選手の台頭、シンクロナイズドスイミング混合デュエット男子日本代表の奮闘、平昌冬季五輪共催案の行方とその背景などを対象とした。断面あるいはパーツであってもスポーツ世界の日々の変動ぶりを追う関心の度合いが下がることはない。
スポーツ行政論(白鴎大学)
ポイントは「転換期にある中学校の部活動(など)」。読者から多くの声を拾った新聞の4回にわたる連載特集記事から、中学校の部活動をめぐって活動時間、指導者、改善策、自治体教委の対応など具体例も紹介しつつ課題とその克服策を探った。教員、外部指導者、学校、生徒、保護者などの立場や考えはそれぞれで、なかなか一長一短には解決に至らない難しさを痛感した。部活動外部支援員や多世代型クラブの存在など、解決のヒントとして地域における人材ネットワークの力の活用が挙げられるのではないか。
地域の姿と課題T(地域デザイン科学部学部必修)
ゲストスピーカーの方への飲み物をうっかりしたのと、教室外で待機していた際に思いの外暑くて、さらにUSBのデータの移し替えができずに少し慌てたが、事なきを得た。教室の空調機能が弱過ぎるのではと心配していたが、今回はしっかり効いていた。ほぼ予定どおりに進む。昨年度と異なり、受講生には事前に資料を読み込んでおくように伝えておいたが、実際のところどうだったのだろうか。質疑応答も時間内におさまった。時間をやりくりしてゲストスピーカーを快諾してくださった環境省と塩谷町のお二人に感謝したい。この重い課題を受講生(そして教員も)が継続して考え続ける契機となったと思われる。準備に時間が掛かったのは事実だが、こうした授業スタイルは知識や人的ネットワークだけでなく、実務面対応での教員の幅を広げてくれる機会となった。