20167月 中村祐司の教育日誌

 


 

16/07/04. Mon.

 

国際学英書講読

プリントNo.12の“Obama seeks an Asia pivot, ”Peace in Afghanistan, Clinton’s email debacle, Concerns over Korean carriers’ aviation safety”を読む。4本のうち3本がアメリカ関連であったが大統領候補のメール問題などその深層がよくわかった。やはり英文ならば何でもよいわけではないのだ。社説を素材に選んだことが長年のこの授業の継続を可能にしていると改めて思った。

 

行政学

予算の編成過程について説明。テキストは今回で10本の論文とコラムすべてに目を通したことになる。来週は参院選翌日なので今後の諸政策の展開をグループ討議で予想する。少し早めだったが、試験についても候補問題も含めて提示した。その分準備が大変だったが、やっておいてよかったと思った。

 

余暇政策論

熊本の現場に再び入った受講生から報告。そのことがきっかけで教員からかぬま多文化共生の今年度の取り組みについて紹介。バングラデシュの悲惨なテロの報に接して思い出した動画”This land is mine”を提示した。その後以前受講生が行ったリスペクトとアサーションについて紹介。そのことから世界最強チャンピオンといわれるリカルドロペスの動画を思い出し紹介した。今月25日提出のエッセイ-作成要領を写しながら、体裁を守ることの重要性を強調しつつ詳しく説明した。この授業でも同じく事前の準備が効いた。

 

行政学演習

市貝町、芳賀町、鹿沼市との関わりがまちづくり提案やジョイントと絡んでくる。そのため学部学生と研究室所属学生を対象に調整の要が出てきた。この時間帯と次のコマとの参加メンバーの違いから、頭の中での混乱はあったものの、まちづくり提案の二つのチームとその構成メンバーがほぼ確定し、あとは実行あるのみのスタート環境を作ることができた。ここまでは教員がリードする責任がある。イギリスから一時帰国の学生が参加し、活気を与えてくれた。

 

卒論・修論指導

ゼミで決めたことを卒論生や院生に伝え調整するのにどうしても時間がかかった。しかしこれは研究室活動を一定の方向へ進めていくために不可欠な作業だ。おかげでここでもすっきりとした形でのスタートが切れた。2名から報告。25日の懇親会(打ち上げの場所も確保し幹事も決めた。考えてみれば、ゼミ論、卒論、修論、博論すべてが学術論文作成という一点でつながっているのがこの研究室なのである。

 


 

16/07/07. Thurs.

 

スポーツ社会学(白鴎大学)

12回目のポイントは「2020年東京五輪は2016年リオ五輪から何を学ぶか」。EU離脱のイングランド・プレミアリーグへの影響、リオ五輪における文化事業の減少や聖火リレー受け入れ拒否の自治体、難民選手団、東京五輪に向けた文化祭典の準備、夏季五輪の開催時期の真相などを取り上げた。リオ五輪終了後に本格化する東京五輪に関わる文化諸事業の中身も注視していこうと思った。

 

スポーツ行政論(白鴎大学)

ポイントは「スポーツ産業新展開の課題とは何か」。1億総スポーツ社会、スポーツ未来開拓会議のねらい、「稼げる大学スポーツに向けた動き」、全米大学体育協会(NCAA)の収益力、プロ野球における球団とスタジアムの一体経営とボールパーク化、米国プロラグビーの台頭、バスケBリーグの9月開幕などを対象とした。教育の枠組みで位置づけられてきたスポーツの転換点にあるのではと思う反面、行き過ぎた市場化は拝金主義に行き着くのではという懸念がある。

 


 

16/07/11. Mon.

 

国際学英書講読

No.13が最後のプリントとなる。“S. Korea’s declining birthrate”, Kim’s diplomatic flurry, Japan’s tax hike delay, Time to clean up the Olympic Games”を読む。グループでの役も今回がラスト。再来週に辞書使用可でこれまでのやったところから出題する試験を40分程度取る予定。初回から愚直に続けてきた。その意味では起伏のない展開だったが、目先をころころ変えないこのような授業スタイルがあってもいい。

 

行政学

 参院選が終わり、今後諸政策がどのように推移するのかについて10グループによる討議を行った。良くやってくれているTAが最初9グループで分けてしまい一瞬焦ったが、事なきを得た。報告時間を多めに取っておいてよかった。時間ぎりぎりで終了する。教員からはやはり政策論議は大切で、政策を媒介に有権者と政治家はつながっていることを最後に強調した。

 

余暇政策論

研究室卒論生2名から留学(海外研修)経験について語ってもらう。パワポのスライドも用意してくれて感謝。先週授業の準備をしっかりやっておいたので細かい説明は省略し、後半はエッセイに向けた発想を磨く話し合いに当てた。スマホ等からのネット情報は一切なしでこれまでの経験を素材に書くスタイルは受講生にとって新鮮かもしれないと思った。もちろん行数など形式面も守ってほしいが、最も大切なのは肝心のエッセイの中身だ、

 

行政学演習

先週末は参院選をめぐる7紙の新聞報道の読み込みに力み過ぎたせいか、この時間帯に一気に疲れが出た。やはりもう無理をできない年齢になってしまった。それでも学生活動を支援する助成申請をあきらめたくない。ゼミ、卒論・院生指導で出会った研究室のメンバーを対象にできることはやっていこうと思う。研究小論文提出の締切を皆が守ったのは教員にとっても大きな収穫だ。

 

卒論・修論指導

2名から報告。確かに、留学生の文章を直す作業を修士1年生の今の段階から研究室メンバーの協力を得ながら積み重ねていくことは大きい。提出が迫った段階での教員とのすれ違いも解消するだろう。来週はオープンキャンパスなので授業はない。前期の研究室活動も残すところあと1回のところまできた。後期のスケジュールも睨みながら、それまでに教員がやるべきことに早めに取り掛かかっておこう。

 


 

16/07/14. Thurs.

 

スポーツ社会学(白鴎大学)

最初に3週間後の定期試験対策について丁寧気味に説明。その後授業に入る。ポイントは「五輪をめぐるドーピングは根深く、とボーダーレスは加速する」。ロシアの組織的ドーピング疑惑の今日までの経緯、五輪と性的少数者(LGBT)、健常者を超える義足ジャンパーの世界記録をめぐる反応、義足ランナーが背負う期待、カヌー・スラロームの醍醐味と期待の日本人選手などを取り上げる。五輪を考える上では外せない難題であるにもかかわらず、ドーピング問題はこれまで気が重く避けてきた。今回取り上げてよかった。

 

スポーツ行政論(白鴎大学)

この授業のみを取っている受講生もいるので、スポーツ社会学と同じく最初に定期試験対策について説明。ポイントは「スポーツを支える細部にわたる技術、知識、技能」とした。最初に議論が続く中学部活の話題と米国のアメフト離れの背景にある脳振とう問題に触れた後、本題に入る。市場を占有するアイスランドの義足メーカー、走り高跳び日本人選手が義足旧型モデルを用いる理由、短距離走の義足の走りを解析する日本人研究員、レース用車いすの持ち手部分の妙、顔認証の技術進化(厳格さと円滑さを両立した安全技術の開発)、日本語を多言語に瞬時に翻訳する「メガホンヤク」、時差対策と医科学などを紹介する。こうなってくると五輪よりもパラの方により魅力的なダイナミズムを感じてしまう。

 


 

16/07/21. Thurs.

 

スポーツ社会学(白鴎大学)

ポイントは「新国立競技場の迷走から国家意思の危うさを学ぶ」。あの騒動は一体何だったのか。とくにキールアーチの設置など建築・土木の難工事の側面から捉えた。今から思えばもし白紙撤回していなければ大変なことになったはずだ。改めて時流や一定の渦中に巻き込まれることの恐さを感じた。結局のところ真っ当な判断をしたのはステークホルダー(利害関係者)の圏外にあるメディアや国民だったのだ。

 

スポーツ行政論(白鴎大学)

ポイントは「スポーツ環境の変容は地域にも」。事例数は多くなったが、敢えて小出しに紹介した。JR首都圏駅のナンバリング、図記号の国際標準化、夜中のリオ五輪観戦が与える悪影響、進化する水泳競技の舞台、新体操やシンクロなどのメイクの力、野球の独立リーグに属する選手の夢の意味、サッカーJFLのクラブ(浦安)におけるセカンドキャリア支援、ミキハウスによる五輪出場レベルにある選手への支援、ゴルフ場利用税をめぐる賛否などを取り上げた。今回はスポーツ環境の変化が身近に感じられる事例を敢えて抽出した。

 


 

16/07/22. Fri.

 

地域デザイン学序論A(地域デザイン科学部必修科目)

 1回担当するオムニバス形式の授業。新学部生を対象に一人で向き合うのは初めてで、準備段階から相当緊張したが、やってみるとあっという間であった。白紙撤回となった新国立競技場問題を難工事とコスト乱高下に絞って説明する。三学科の受講生への投げかけがどれほど伝わったのかはわからないが、この授業における一つの貴重な素材を提供したつもりだ。グループ討議の後、用紙を回収して時間が許す限り読み上げてコメントする予定であったが、授業評価アンケートの実施など急遽15分程度前倒ししなければならなくなったので、その場で報告させた。報告はすべての班に至らなかったので、その分提案事業をじっくり読むつもりだ。

 


 

16/07/25. Mon.

 

国際学英書講読

これまでやってきた英文社説から4本をピックアップし、各々の一部を囲み、そこを40分で日本語訳させ、その後解答例を提示した。採点はこれからだが、訳の精度や日本語の並びはともかく、構文をしっかりと把握できているかが目安となる。たとえできなかったしても、毎回、逃げずに向き合ったこと自体が大きい。あらかじめ次回の訳の担当をグループ内で割り当てるやり方がいいのかどうかは、落ち着いてから来年度に向け考えよう。

 

行政学

5問中3問を出すというやり方なので受講生にも抵抗感はないであろう。テキストのポイントから選択する自由記述についても、まとめと自分の考えが的確に記述されているかをチェックしたい。机の両端に座らせても余裕のある教室ということもあって、スムーズに進んだ。後半は総括の授業。その後授業評価を行って終了。毎年度の授業は決して繰り返しではないと実感した。

 

余暇政策論

エッセイの提出。ほとんどが形式を守っており感心した。10グループで内容を共有する。これが予想外に盛り上がり、急遽もう1回グループを編成し直した。やはり自分の経験を素材に活字にした実体験の凝縮された内容は、バーチャルな情報よりも引きつけられるのだろう。少なくなった残りの時間で新国立競技場問題を紹介した。毎回情報を仕入れるのに苦労したが、その分自分のものの見方が少し広がった気がした。

 

行政学演習

メール添付のファイルを一つ一つ確認しながら、ゼミ生が送信した研究小論文を持参のノートパソコンに取り込んだ。掲載作業を教員がやらなければいけないのが残念だが、毎回全員が報告するスタイルが功を奏したのが良かった。2年生も含め後期のゼミ所属どうこうに関係なく、一つ一つの対外的活動に丁寧に取り組んでいきたい。後期の研究室活動についても色の付いた紙を配布して説明。芳賀町の自治体職員の方とのやり取りも貴重な経験であった。

 

卒論・修論指導

 夏休みの計画を全員から報告。対外的活動について教員主導で調整。とくに今年の前半は教員が著書に向けてエネルギーを注ぎ込んだせいか、夏休みに「自分の背中を見ろ」とは言えなかったが、卒論・修論に向けて自分なりのエールを送って終了。4月から授業も含めてどうにかこうにかここまで来られた。まだやらなければならいない雑務はだいぶ残っているが、この日をもって前期の研究室活動に一区切りを付けることができて嬉しい。

 


 

16/07/28. Thurs.

 

スポーツ社会学(白鴎大学)

授業最終回のポイントは「IOCの終わりの始まり―リオ五輪ロシア全面除外見送り―」。結局、スポーツ大国抜きでは五輪や国際大会そのものが成り立たないということなのだろう。国家や政府、関係組織から個人への露骨な責任転嫁ともいえる。果たしてこれで五輪の精神的支柱の一つである清廉さが保てるといえるのだろうか。

 

スポーツ行政論(白鴎大学)

ポイントは「スポーツの新境地を自分たちで切り開く」。意識的に身近でかつポジティブなスポーツ事業実践を抽出した。スポーツ施設をめぐる官民連携、充実しつつある公共スポーツ施設、群馬サッカーサイト、ミヤランなどのファンランの工夫、デジタルを用いたランナー支援、クリケットの街佐野、世界トップのフットバッグプレーヤー、ヴァンデ・グローブ(世界一過酷なヨットレース)などを取り上げた。スポーツ世界はその規模が巨大となり過ぎて、国家威信・政府権力や巨額な市場マネーなどが絡み合いおかしな方向に行ているのではないか。顔の見える身近で把握できるスポーツ事業こそが価値を持つのではと思った。

 


 

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