2015年6月 中村祐司の教育日誌

 

---

 

15/06/01. Mon.

 

国際学英書講読

“Japanese scholars’ warning”, “Sorry, Charlie Hebdo”, “Aid still needed for Nepal”, “Abe’s speeches reveal his real attitude”を読む。いずれのグループも時間内に読み切った。とくに2本目は風刺のあり方について考えさせられる内容だった。時間の余裕もでき教員も満足していた矢先、1本目3パラの下から4行目の”they”が何を指すかで受講生から諸説入り乱れ混乱した。授業を終えた直後にそれが、1パラの”Japanese Prime Minister Shinzo Abe and his right-wing conservative gomernment”であることで確信。最初の理解でよかったのだ。教員として英文解釈の軸がぶれないことも大切だと痛感した。

 

新入生セミナー

 この1週間で興味深いキャッチコピーを探し、それを紹介し合った上で、各グループで対象を明確にした上でのキャッチコピーの作成に取り組む。とにかく素直に課題に向き合うスタンスがいい。オープンキャンパスの応援もありがたかった。テキストと新書についても最後の方で言及する。次回から2回にわたってISを取り上げることとした、

 

行政学演習

本日が学部紀要原稿の締切で博士後期院生も昼休みに提出。昼食の時間はなくなったがこれでまずは一区切りとなった。提出後そのままゼミに向かう。全員での進捗と課題の共有を目指す。教員からは書くという行為を前面に打ち出した。そして、動けば世界が見えてくるはずだ。ファーストネームで呼ぶのはいいが、名字もしっかり押さえておかなければと思った。

 

行政学

中間試験の実施。PPPについての発案・企画力を問う内容。やや強引だったが終了後にこの3月下旬に被災東北3県の沿岸部を回った際撮影した写真を提示して、次回グループワークの課題について説明した。人材と財源を活用しかつ10年間継続の事業を提案するというもので、ぜひ各グループ(次回の冒頭に提示する)は勝負をかけてほしい。

 

卒論・修論指導

就活や教育実習などで数名欠席。それでもSNSで補いながら卒論指導のこの時間は死守していくつもりだ。今が論文締切のプレッシャーを感じずに構想を練るのに最適な時期なのだろう。大いに意見交換し、自らの視点や発想に役立ててほしいと思う。

 

---

 

15/06/02. Tue.

 

余暇政策論

子ども、若者、高齢世代を対象ディズニーリゾートの事業提案をに各グループで行った。子ども世代は自分たちげ経験してきたことを踏まえた提案であり、若者はまさに受講生自身がそうだ。それから高齢者世代は、将来の自分たちである。高齢者世代に癒やしを提供するストーリー性のある提案には感銘を受けた。

 

 

15/06/04. Thurs.

 

スポーツ・体育社会学(白鴎大学)

予定を変更して、FIFAの大規模な不祥事を急遽取り上げる。その背景について、欧州勢と非欧州勢とのバランスにおける会長の後者への支援(プロジェクトなど)、同じくワールドカップ出場枠をめぐる後者への支援などを指摘した。紙媒体の新聞報道では会長辞任については取り扱えず、今後の展開も含め、次回授業でも取り上げるつもりだ。

 

スポーツ行政論(白鴎大学)

珍しいことだが、スポーツ社会学と同じFIFAの事件を対象とする。焦点を当てたのは組織構造。FIFAの最高組織(会長−副会長−理事)、会長選挙における6大陸連盟の各々の票数、汚職の構図と起訴・逮捕者との関係、スポーツマーケッティング会社とテレビ局やスポンサー会社などとの資金の提供・授受関係などに注目した。1回だけで終えることはできない。やはり次回授業でも取り上げたい。

 

---

 

15/06/08. Mon.

 

国際学英書講読

“ISIS group ‘recruting Americans’”, “ Kim’s new reign of  terror”, “Moving on after apology”, “CIA leakers receive different kinds of justice” を読む。前回と同様に読みづらい部分を説明した後、グループに分かれて訳に取り組む。この時間を自分の糧にできるかどうかが、今後英文に向き合う上でとても大切になると思う。週に社説4本というこのペースを維持していこう。

 

新入生セミナー

 ISを対象に今回は疑問点を含め共通認識を持つことに重点を置いた。新聞報道が少なくなってきた最近においてこそ皆で知恵を絞ることの重要性があるはずだ。次回は各グループが執行部の立場で、人材や資金、設備などの制約を設けずに、ソフトパワーの領域で何ができるか提案を出し、それを全体で共有し、さらにその先を目指したい。

 

行政学演習

最初に先日届いたまちづくり提案の日程や要項について、ポイントとなる説明資料1枚を皆に配布して後期履修者はぜひ積極的に取り組んでくれるよう促した。その後、対象とした村を実際に訪れたグループから報告を受ける。やはり実際に現場に行って見たり聞いたりしたことを踏まえた報告には充実感が出るものだ。行政職員など人との出会いも貴重な経験だ。論文作成に向けていよいよ本格化してきた。

 

行政学

A〜Jの10グループに分かれて震災復興に向けた提案に取り組む。条件は少なくとも10年間は継続することと、資金などの制約はないということ。60-70名のグループワークなので、始める前は正直気が重かったが、制約時間の中での各グループの話し合いや報告を、前回の経験を踏まえて、模造紙の回収の仕方など細かい点も含めてしっかりやってくれ嬉しかった。グループワークは教員が背負うものではなく、受講生とのある種のコラボ授業であることがわかった。

 

卒論指導

就活最盛期の中で欠席は2名のみ。今回から博士後期の院生も加わり、互いのやり取りに幅が出てきた。無難に報告すればそれで良しという雰囲気が昨年度まではあったかもしれない。互いの考えを率直にぶつけ合うことで、卒論作成への意欲が高まるのではないかと感じた。

 

---

 

15/06/09. Tue.

 

余暇政策論

たまたま先週末に読んだpower travelerの書籍からをヒントを得て、その筆者のHPなどを紹介した後で、power writer’s travelers groupを造語し、A〜Fのグループに分かれて、次回は討議と報告をすることとした。6大陸別(欧州、アフリカ、アジア、オセアニア、北中米、南米)に合わせてグループ分けした。どこで何を対象にどのような内容のものを書くのかと仮定した。次回の各グループの報告が楽しみだ。

 

---

 

15/06/11. Thurs.

 

スポーツ社会学(白鴎大学)

FIFA汚職事件で、司法取引に応じた元幹部の金銭感覚や22年カタール大会の変更可能性など、背景や今後の展開を探った。それにしても市民感覚とはあまりにもかけ離れた桁違いの不正額に驚く。FIFAがこれまで掲げてきた公正や正義のスローガンなどは一切吹き飛んでしまったかのようだ。

 

スポーツ行政論(白鴎大学)

数日前の会長の辞職会見を受けて、今後の会長選の動きを把握する。それにしても総会まで時間がないことを理由に会長選に打って出て、当選後わずか4日間で辞職表明したことで、会長選が半年も後にずれこんだことの影響はあまりにも大きいのではないか。たとえあと数カ月だとしても会長が今のポジションにいること自体の正当性が問われるし、今の会長のもとで改革が進むのか。欧州対非欧州といった単純な構図を超えた複線的な力学が絡み合っているのが、新聞報道からも窺える。

 

---

 

15/06/15. Mon.

 

国際学英書講読

“Missile defense dispute”, “U.S.losing war in Iraq”, “Argentina needs fair inquiry”, “Japan’s quest for UNESCO listing improper”を読む。最初に構文も文意も取りにくい2カ所を教員が説明した後で、グループで訳に取り組む。余裕で読み終わったグループもあれば、最後まで届かなかったグループもあったが、前向きに予習してくる授業環境が続いており心配はしていない。

 

新入生セミナー

 ISにソフトパワーでどう対抗していくのか。いずれのグループも決め手となりそうな対案が見つからず、狡猾で巨大な壁を前に喘いでいるかのようであった。教員も何が何だか分からなくなっている。しかし、考え続けることだけは放棄したくない。気持ち・精神で負けたくない。2回に及んだ解決策模索の格闘は今回で一区切り。

 

行政学演習

 イメージラボの鍵を事前に開けに行くのが、横着感からか億劫になってきた。急いで昼食を済まし、歯磨きするともう時間が迫ってくる。こういう時は5階まで上がるデメリット感も強くなる。しかし、ゼミでは実際に村に身を置くことで、積極的な視点や理解がどんどん報告に出てきて、こちらが元気をもらったような気がした。自分が行って見て聞いてきたことを活字で表現することをまず大切にしようと強調した。まちづくり提案の申込みもすんなり2人が手を挙げ、後期を睨んだゼミ活動も幸先のよいスタートを切ることができた。

 

行政学

慌ただしく教室に滑り込み、スクリーンやシャッターを下げ、ノートパソコンをつなぎプロジェクターの電源を入れて、さあ授業スタートと思ったところでマイクが効かないことが判明。事務まで行って一緒に教室に戻って見てもらうとコードの配線のつながりが時々良くないとのこと。空調でも戸惑い時間を食ったので焦ったのがいけなかったのか、今度は予想よりも授業が早く終わってしまった。授業終了後、中間試験の成績を聞きにきた受講生も予想外に多くて、間違えてはいけないと老眼に苦慮しつつ対応に必死だった。

 

卒論指導

ここまで来ると表情は穏やか感を出すよう努めてはいるものの、疲れは隠しようがない。卒論生が自主的にどんどんやってくれるのが本当に助かる。就活で半分程度の出席だが、それを院生や3年生が補ってくれる好循環も生まれている。今の時期はあまり発想の枠を狭く押さえずに、興味関心の向くままにいろいろな関連領域に足を突っ込むのも一つの手だ。

 

---

 

15/06/16. Tue.

 

余暇政策論

各グループが世界の六つの大陸を対象にパワーライターズ・トラベラーズグループとして何を書くか知恵を絞ってもらう。途中、敢えて口を出さないように心掛けた。グループ討議中、教員は積極的に各グループに口をはさんだり、全員に向けた発言をどんどん盛り込む方がいいのかどうか、なかなか見極めが付けられないまま今日まで来ている。グループ討議があまり盛り上がっていないように見えるグループができの良い報告を行うこともある。アクティブ・ラーニングはつくづく生きものだと思う。

 

---

 

15/06/18. Thurs.

 

スポーツ社会学(白鴎大学)

パラリンピック・障害者スポーツをめぐる支援環境の変化を取り上げる。競技についても基礎知識として板書した。競技性がクローズアップされる中で、2020年東京大会に向けて、どのようなレガシーを構築していけるのか注目したい。また、追加種目をめぐる課題についても取り上げた。便乗という感じがしなくもない競技もあるが、競技団体としては切実に五輪競技への参入を希望している裏返しでもあろう。

 

スポーツ行政論(白鴎大学)

新国立競技場問題を経緯も含めて理解しようとした。これは相当難しくなっている。デザインを変更し縮小したことで、斬新さが後退したのは否めないし、建設コストがそれで解決するとも思われないからだ。屋根にしても観客席にしても可動席に焦点が当てられ、前者については2本の巨大アーチと切っても切れない関係で、しかもそのアーチが新国立競技場のシンボルとなっている点に錯綜した難しさがある。

 

---

 

15/06/22. Mon.

 

国際学英書講読

“Diplomatic mistake by Pyongyang”, “ASEAN’s migrant crisis”, “Rise of regional hegemons”, ”U.S. needs cool head to calm troubled waters”を読む。習熟度別グループに分けたつもりだったが杞憂だった。どのグループも正確な意味把握に取り組み、非常に良い形で終えることができた。グループによっては、微妙なニュアンスが求められるセンテンスについてもじっくり検討することができた。今回で10枚読み切ったことになる。早くも終盤近くに差し掛かっている。

 

新入生セミナー

新聞記者の方から18歳投票権についてのアンケート取材と話題提供。3名欠席とやや寂しかったが、質問用紙に真面目に向き合い、グループ討議も活発で、これは嬉しい誤算だった。その後予定を変更して記者の仕事や視点などについて率直なやり取りを行った。新たな授業の取り組みとしても収穫の多い時間であった。その後、“プチ研究論文”の作成と今後のスケジュールについて説明。やはり最後は書くという行為にこだわりたいと思う。

 

行政学演習

 今日から論文作成が本格化すると意気込んで臨んだが、予想外の欠席者の多さに出鼻をくじかれてしまった。それでもとくにゼミ活動は先に進まなければいけない。朝慌てて印刷した執筆要領などを確認のために配布した。まちづくり提案についても昨日になって見逃していた手続きに気づき、慌てて印刷した数枚を配布。テーマ2つをどうにか決めて、今日か明日中のファックス送信可能な状況まで持っていけた。ゼミ活動はここからが本番だ。

 

行政学

ゼミを終えて鍵を取って小走りで教室に向かうともう開始直前。スクリーンやバインダー、ノートパソコンと電源コートやケーブルの接続などどうしても数分程度は掛かってしまう。従来の行政学(面従腹背行動)と新しい行政学(指定管理者制度)について講義を進める。地域資源の活かし方として学生の発想(八幡山公園の活用)を軸に書いた以前のコラムを紹介。前回とは異なり、時間ぎりぎりで終了した。

 

卒論指導

どうしても遅れ気味になる。疲れもあり教室に入っていくまでが精一杯という感じだ。どんどん自分たちで進めてくれるのが助かる。時期が間延びした就活の影響をもろに受けているが、SNS活用で安定的に卒論指導を週1回継続できている。紙を使わないありがたさも実感する。

 

---

15/06/23. Tue.

 

余暇政策論

開始時間帯と降雨とが重なったが、出席カードはいつもどおり定刻に配布。不評かもしれないが、リラックスして臨む授業だけにこの点は最後までしっかりやっていきたい。事前の準備段階では相当迷ったのだが、ボクシングのリカルド・ロペスを取り上げる。連勝につぐ連勝のダイジェスト動画を見せた後。練習風景を紹介。もう少し時間を掛けてこの練習風景を見せたかったが、栄光の裏には地道かつ必死の努力の日常的な積み重ねがあることは伝わったのでは。“りきじょ”(力士に対する熱狂的な女子ファン)についての受講生の反応は把握できず。来週の課題として、これについても迷いがあったが、新国立競技場建設問題を取り上げる。説明後の10分程度の話し合いは予想外で、この問題に一定の関心を持っている受講生が多いことがわかった。

 

---

 

15/06/25. Thurs.

 

スポーツ社会学(白鴎大学)

FIFA大会汚職問題の追加情報、五輪追加競技の第一次選考結果と今後の見通し、男子新体操競技、6年目の女子プロ野球を取り上げた。メジャーであれマイナーであれ、スポーツが社会に及ぼす影響力に注目すると、スポーツに限らない社会の制度や作動が見えてくるように思われる。

 

スポーツ行政論(白鴎大学)

新国立競技場問題の追加情報と論点、東京五輪会場の変更と警備や選手移動など分散開催化の課題、県の総合スポーツゾーンにおける新スタジアムと新武道館のコンセプトとコストなどを対象とする。施設や設備がないとスポーツは成り立たないが、競技が求める特有のソフト・ハード環境もありなかなか難しい。

 

---

 

15/06/29. Mon.

 

国際学英書講読

“Japan’s defense strategy”, “Lying about infections”, “Breaking down Japan Inc.”, ”U.S. takes gamble over tiny, distant islands”を読む。各グループとも積極的に訳に取り組む。2本目1パラ4行目の”it”が何を指すのかは、最後まではっきりせず。結局、要請かMERSかの両論解釈とせざるを得なかった。毎回1枚を読み切る覚悟ここに来てほぼ全員に浸透してきたのを感じる。

 

新入生セミナー

今日は全体セミナーで、大教室に1年生が集まり、保健所からスタッフを招く形で保健指導と心の健康、その後同僚からキャリアについての講義。この時期、学年のほぼ全員が集まってくること自体、良しとしたい。担当のクラスには最後の出欠カード受取の際に先週の18歳投票権の新聞記事のコピー、選挙管理委員会からのセミナーのチラシを配布した。

 

行政学演習

 いよいよ論文作成の山場に差し掛かってきた。スクリーンに映しながら、各自の原稿について本人の説明を聞きながら進める。出欠席の状況を提示せざるを得なかったのは残念だったが、残り少ないこれからが前期ゼミにとって最も大切な時期となる。

 

行政学

小走りで教室に駆け込む。電子機器の設定は始めるまでが忙しい。手をいろいろと動かさなければならないからだ。こういう時は紙媒体の良さを感じる。従来の行政学については政策学に入る。新しい行政学は独立行政法人。受講生はまさに人文社会科学系なので、国立大学法人に大転換を求める文科省通知についても説明。少なくとも今在籍している学生に不利益が及ぶことはないものの、自分たちにとって身近で差し迫った問題として理解してもらえたのではないだろうか。

 

卒論指導

4月初旬以来、昨日までお会いしていなかった社会人院生OBが顔を出してくれて、関わっている市政の重要課題についての情報を提供してくれる。就活のために欠席した卒論生や季節の変わり目に伴う体調不良者が出て半数程度だったが、この時間帯、教員は休むわけにはいかない。学生主導で進めてくれるので助かる。とにかく続けていくことが大切だ。

 

---

15/06/30. Tue.

 

余暇政策論

手ぶらで教室に向かったのは10年ぶりどころか、本当に久しぶりだと思う。今回は前回話題提供した新国立競技場の建設問題ついてグループワークを行う。1グループ67名を見込んで5グループとした。結果として1グループ8人のところもあったが、学生の場合、職員や社会人と比べて個々人間の垣根が低いのかもしれない。45人の場合よりもダイナミックが意見交換がなされたようで、1グループの最適人数について考えさせられた。報告会ではどのグループも建設費が高過ぎとの結論で終わるかと思われたが、最後のグループから異なる見解が出たことで、受講生にとっては別の視点もあることが学べたのではないだろうか。

 

---

研究室トップへ