2011年5月 中村祐司の教育日誌
11/05/02. Mon.
行政学
連休谷間の授業。週1回のペースが軌道に乗って来つつあり、このことを前向きに捉えて授業に臨んだ。分権・分離、集権・融合について。事例を出しながら丁寧に説明したつもり。そろそろ再来週の試験の問題作成か。現在行政学では「○○村」から身の丈に合った形で、外へ踏み出す勇気をもらえるような新聞記事2つを紹介。裏面は原発地域における無形の財産喪失と、現場で奮闘する自治体職員の過労についての記事を複写した。このようなスタイルで授業を一つ一つ丁寧にやっていこう。
行政学演習
書きかけの提言原稿をもとに、ゼミ生に向けて自分なりの問題提起を行う。熱くなってしまい、45分ほど一人でしゃべり続けてしまった。実際に大学募集のボランティアとして行動を起こした学生がゼミのなかで3人もいたことに感銘。若い世代は震災を間違いなく真正面から受け止めている。次回からがいよいよ本来の演習で、ゼミ生からの報告に入っていく。
卒論指導
卒論生1名と院生2名から報告。毎週とにかくつないでくことが大切。音楽フェス、食品衛生管理、海外石油開発戦略など、話題は別々のようだが、各々の対象領域における先行研究、現在進行形での事業展開、担い手の存在などは共通しているはずで、この点が行政や政策を学ぶ醍醐味かもしれない。
11/05/09. Mon.
行政学
月曜の授業は連休にかからなかったので、進捗のリズムは崩れないで済んだ。日本の分権改革の過程と中央省庁制の特徴について。官房系統組織の機能について受講生は理解できたのでは。現在行政学では震災後の大学の責務。レジメ裏に印刷した資料は新聞報道から第1次補正予算(約4兆円)の内訳と原発をめぐる政治家の意見の違いについて複写。来週は中間試験なので問題作成に取り掛からねば。
行政学演習
連休明けから本来のゼミ活動といえるゼミ生各自の報告がスタート。司会者もゼミ生から。教員は自由討議の最中はできるだけ口を出さないように心掛けた。いずれの報告でも今後は情報源の明示とテーマの絞込が必要だとは感じたものの、概ね活発なやり取りがありよかったのではないか。しっかりと活字の形に残すことが前期ゼミの目標であり、今日のような前向きの雰囲気であれば、研究小論文完成に向けてゼミ生はさらに奮起するに違いない。
卒論指導
卒論生2名と博士後期の院生報告。卒論生は2名ともまずは大きく網を広げたといったところか。今の時期は狭いテーマで固定する必要はないかもしれない。院生報告は明後日に迫った修論にもとづく報告会の準備を兼ねた。教員側は連休中、震災対応をめぐる大きなテーマの提言論文と、定点的な小さなテーマでの申請書作成に根を詰め過ぎたかもしれない。連休明け初めての授業やゼミだったせいか、終了後どっと疲れが出た。
11/05/11. Weds.
国際学英書講読
プリントNO4.となる”Seared into the world’s imagination”. 前半の内容は抽象的ではあったものの、全体的に重厚な表現が目立った。読み進めながら、地球上におけるグローバルな共同体の結びつきを掲げることを現実離れした理念だと切って捨てることはできないと感じた。30数人のほとんどの受講生が集中して読解に努めているようで、教員としてはこのような雰囲気であれば本当にやりやすい。この授業こそ焦らず毎回できることをやっていこう。
余暇政策論
英書講読の受講生の半分ぐらいなので、一人一人を見渡しやすくやりやすい。多人数型のゼミといった趣だ。今日から受講生からの報告を始める。自然の中での遊び、シニア層を対象とするボランティア、読書を通じた内省、婚活、快適なトイレ空間など、学生は面白いところに目を付けるものだと感心した。受講生間のやり取りもスタートにしては結構活発だった。残りの時間で教員から新聞記事からのピックアップ(被災地への化粧品提供、コンビニ等での消費型の支援活動、物資提供にネット地図利用、被災文化財保全活動、書籍提供による貢献)。さらに残った僅かな時間で就活関連の新聞切り抜きをA3表裏1枚で配布(出し惜しみはしない)。
11/05/12. Thurs.
スポーツ・体育社会学(白鴎大学)
メジャーなスポーツ以外でも個人やチームで被災地支援を行っている実践例を新聞報道から紹介した。各々が持つネットワーク機能を最大限に活用して身の丈にあったできる範囲で支援活動を行っている。受講生にしても何かしら学ぶところはあったのでないか。
スポーツ行政論(白鴎大学)
プロスポーツチームにせよ、地域スポーツクラブにせよ、あるいは学校の運動部であっても、夢中になれるものを一生懸命追いかけているという点では同じである。こうしたスポーツ空間の共有者に困っている者がいれば、一にも二にも支援に走る相互の支え合いの諸事例を紹介した。
11/05/16. Mon.
行政学
中間試験の実施。受講生を机の両側に座らせるなど、こういう時は大教室のメリットが生きる。終了後、授業スケジュールの関係で一ポイント(橋本行革)を押さえるミニ講義を行い、現在行政学では直接的に基礎自治体が被災地における公共サービスを支えている点を強調した。答案の内容を見ないと何ともいえないが、次回からは少しペースアップしていくつもりだ。
行政学演習
先週と同じく、受講生からの報告。連休明けからゼミ活動が軌道に乗ってきたのを感じる。自衛隊の役割にせよ、原発をめぐる諸課題にせよ、がれきの撤去にせよ、まさに多くの難題が山積している。次回以降も毎回毎回探りながらやっていくしかない。各々の課題の重さを考えれば、なかなか明るい雰囲気とはいかないが、たとえ手探りでも少しずつ前に進んでいこう。
卒論指導
就活、教育実習などで4名の卒論生と3名の院生で行う。院生1年生からの報告も入れる。今まで気づかなかったが、就活関連の新聞切り抜きコピーは、最初にこの時間に配布するようにしたので、A3版表裏の2枚を配る。今日は社会人院生2名が仕事の都合で、卒論指導終了後の17時30分と19時過ぎに時間差で来室。今日は3コマに自治体職員との打合せもしたので休む間もなく、さすがに疲れた。
11/05/18. Weds.
国際学英書講読
“Rebuilding Tohoku to take years, billions”と”In historic tragedy, ‘stoic’ Japan impresses world”を読む。受講生によって事前の予習に差があるようだったが、教員主導での訳も含めて時間内に何とか読み切る。訳す量が多いとか難しいとかの言い訳がない雰囲気になっているので、非常にやりやすい。この調子で進んでいければ。内容的にも“ソフトパワー”絡みの指摘など示唆に富んだものだった。
余暇政策論
英書講読と比べて受講者数は半分程度となるのでややほっとするものの、その分めりはりに欠けがちになるので、気をつけなければ。まず、受講生7名からひととおり報告した後で、質疑応答や意見交換。アルバイトをどう捉えればいいのかなど、はっきりした回答が見えないがゆえに考えさせられる課題もあれば、コミック人気の国外への浸透など、受講生よりも教員が奥手の課題も提示され、興味深かった。新聞報道から抽出した講義メモを説明する時間が短くなってしまったが、出し惜しみは止めようと配布(結局教員自身にはねかえってくるから)。また、就活関連の新聞記事の複写についても配って終了した。
11/05/19. Thurs.
スポーツ・体育社会学(白鴎大学)
東京の登山医の被災地での活躍、J2湘南と福島ユナイテッドとの交流、日体協のアスリート派遣計画、神戸製鋼の選手の挑戦、福島の中学校部活動、高校強豪ラグビー部による支援などを紹介。「グランドでも社会でも自分が必要とされる」ようになることは教育や生き方の原点だと感じた。
スポーツ行政論(白鴎大学)
Jヴィレッジの試練、岩手県の高校ヨット部の希望、J2チームやbjリーグチームの苦境、「スポーツチームは地元の財産」であると身をもって示しているラグビーチームなど、新聞報道から紹介しつつ、震災後は地元密着をさらに深化させると同時に、地域外でのネットワーク構築が非常に大切になってくる点を強調した。
11/05/23. Mon.
行政学
中間試験を採点したのでその旨と秀・優・良・可についてカッコがつけばぎりぎりの成績(たとえば(優)は限りなく良に近いという意味)であることを説明し、成績毎の人数を口頭で述べた。ポイントは公務員制度と官僚制についての2つ。現在行政学は被災地主導の意味について考えさせられる新聞記事を提示。裏面には記事を複写したもの。授業回数も後半に入ったがこのぐらいのペースで1回1回を大切にやっていきたい。
行政学演習
13時からの打合せ後、慌てて昼食をかき込んでゼミへ。本日で報告が一回りする。ボランティア、風評被害、構造改革特区などいずれも重要なテーマだが、研究小論文作成にはもう一段問題意識を明確にしてほしいと思った。終わりの方で後期のメインの研究室活動であるジョイントについて簡単に説明。4年生3名も駆けつけてくれた。
卒論指導
卒論生2名から報告。いずれも情報源からのまとめが主であったが、このように今の段階で文章化しておくことが大切だ。後になって必ず生きてくる。修士院生2年生は来月の中間発表会をにらんで準備を本格化させる時期。博士院生1年生は早くも来月初めに報告会あり。それぞれが目標達成のために前に進んでほしい。今日は節電実施の第一弾。資料室と研究室の冷蔵庫のコンセントを抜く。9月下旬まで冷蔵庫とはしばらく、さようならだ。
11/05/25. Weds.
国際学英書講読
“Preparation for disaster”, ”Korea-a good neighbor”, “Fate of nuclear energy”, “Nuclear option”の4本の社説を読む。受講生の数は例年より多いものの、そのほとんどが真剣に英文に向き合っている。原発をめぐる状況が今現在でも良くなっているとは思われない状況下で、原発をめぐるワシントンポスト(4本目の社説)の現在のスタンスを知りたいと思った。
余暇政策論
6名から報告。今日で中間報告が一巡した。SNSなどは受講生の方がお手のものといった感じで、教員側が謙虚に吸収していかなければと思った。講義メモも配布を継続している。野外バレエ慰問ツアー、博物館・図書館・美術館の震災対応、原発に警鐘を鳴らしていたアニメ・映画・音楽、そして中学生アイドルによる脱原発ブログなどの記事を紹介。就活に関する記事も配布。
11/05/26. Thurs.
スポーツ・体育社会学(白鴎大学)
スポーツの有する社会・世界への影響力に注目し、仙台のプロ野球とJリーグチームの震災後の対応行動の違い、スポーツNPO法人の活動再開、Jヴィレッジ関係者による支援活動、世界体操選手権の開催と東京五輪招致などの記事を紹介した。教育実習や介護体験などで受講生数は減少気味だが、少しでも多くの受講生にこの時間ならではの問題意識を提示していきたい。
スポーツ行政論(白鴎大学)
スポーツ行政の対象には学校の部活動も入るとして、まず、日体協公認指導者の中学・高校部活動への派遣の動きを紹介した。その後、県高体連専門部の関東大会開催会場の変更をめぐる調整の苦労、被害を受けた県内小中学校の部活動継続の努力、さらには東北のプロアイスホッケーチームの再生活動について説明した。日頃当たり前のように享受していたスポーツ活動環境がいかにありがたい空間であったのかが、対象事例から切々と伝わってきた。
11/05/30. Mon.
行政学
行政の官房系統組織(横割りの組織)による統制について説明した後で、ラインとスタッフの再定義に進む。ラインにおける専決権の割付構造が2つ目のポイント。現在行政学は政治・行政関係を規律と裁量、服従と自発の側面から考えさせた。新聞については、漁業再生をめぐる力作の提言論文と、がれきの分別・再生を取り扱った記事を紹介した。授業開始時は風雨が強かったが、ちょうど終了時には最後の五月晴れといった感じでとても空気の爽やかで気持ちよかった。
行政学演習
4名から報告。地震対策特別措置法の改正、被災外国人、復興財源、失業・雇用対策などいずれもデータをよくまとめているので、さらに一歩踏み込んで現場感覚を研究小論文にぜひ反映させてほしい。欠席者なしでほぼ時間通りに始まり、質疑応答もあり、終了まで時間を持てあまさない形でゼミが続いている。最後にまちづくり提案についての要領を配布(今年は11月に開催)。
卒論指導
2名の卒論生(地域ブランド、ネットワーク型コンパクトシティ)、1名の博士院生(近隣自治組織研究)から報告。いずれも報告者がしっかり気持ちを込めて準備してくるので、その分中身が充実する。報告のない卒論生や院生にも大いに刺激になったはず。就活関連の新聞記事の紹介も、ここから活動のヒントを少しでも得てほしく継続している(配布はここが一番最初)。結局皆が自分を大切にし、まずは自分のために努力することが、研究室全体の活動を向上させる原動力になると思う。