20114月 中村祐司の教育日誌

 

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11/04/11. Mon.

 

行政学

「ポイント行政学」と「現在行政学」の二本立ては昨年通り。後者では東日本大震災をめぐる新聞報道に焦点を当てることにした。A4表裏に印刷したものを配付し、福祉国家の要件とエージェンシーについて早速授業に入る。統一地方選について書いたコメントを読み上げ、情報の取得とそれをどう評価するかについて、原発事故をめぐる官邸の初動についての報道を取り上げ、どう評価するかは個人の見識にかかっている点を強調した。

 

行政学演習

3年生のゼミ生については再来週ぐらいまでは確定しない。この研究室について、前期は現場に行った上でレポート作成を課すことと、のびのびと勉強し調べて考察してほしいと強調した。院生3名(修士1年生2名と博士1年生1名)からも自己紹介。ゼミでは教員が下準備して講義をするようなスタイルは取らないつもりだ。ゼミ生自身でこの研究室活動を担うようになってほしい。ジョイントやまちづくり提案について今の段階で触れる必要はないと判断した。

 

卒論指導

文章化したものを4ページという卒論作成の第一歩となる課題を全員がやってくるという幸先よいスタート。震災を受けて、連絡先やアンケート回答に最初の時間を使う。その後卒論生5名から各々が書いた中身について一通り説明。院生にはこの時間も出てもらうつもり。前期の報告スケジュールを決めている最中に大きな揺れ。震災から1カ月。311日を戦後に匹敵する「災後」(正確には「災中」か)と位置づけた識者がいたが、そうした状況のなかでも(なかだからこそ)研究室活動の継続に努力していこう。終了後は社会人を含む院生と今後のスケジュール設定や履修授業の設定、事務手続きの確認など追われたが、何とか良いスタートを切れた。

 

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11/04/13. Tues.

 

国際学英書講読

当面は東日本大震災関連の英字新聞(ジャパンタイムズウイークリー)を読むことにする。初回は”Massive quake, tsunami hit Tohoku”. これからの授業のやり方をつかんでもらうために、まずは10分間程度予習をさせて、その後教員がゆっくり気味に意味を取りながら読み進めた。受講生にはいつの日か311日とその後のことを英語で説明する機会が来るに違いないだろうから、その時に備えた奮起を促した。英語でのキーワードや文章表現など、教員にとっても収穫のある箇所が多い文章だった。

 

余暇政策論

この時間もやはり気持ちの中で震災関連から離れられない。観光業に与えつつある打撃について説明し、その後「遠くて近い国」であるイギリス(ロンドン)でのチャリティーコンサート、高校生の被災地でのランニングやトランペット追悼などの記事を取り上げて、スクリーンを使って紹介。受講生が確定する次々回くらいまでは教員からの話題提供で授業を構成していくつもりだ。

 

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11/04/14. Thurs.

 

スポーツ社会学(白鴎大学)

一面では「非生産的なエネルギーの浪費である」スポーツという行為自体が他者に感動を与える点に注目し、地域社会におけるスポーツクラブが震災後に果たした物資支援活動や、県内高校サッカー部による被災地域の高校に対する練習場貸与の活動などを紹介した。貴重な素材を一つ一つ提示していき、節目で個々の事例や事例間関係から見えてくることの体系化も試みたい。

 

スポーツ行政論(白鴎大学)

スポーツ行政の担い手を広く捉え、広範囲かつ多様なスポーツ公共サービスのあり方が震災後に激変した事例として、スポーツ施設の被害や避難所や救援物資の置き場として利用されていることを強調した。また、組織経営面からもプロ野球における試合内容そのものが変容する兆しを指摘した。情報収集はどうしても自転車操業となるが、できるだけ現在進行形の素材を拾い上げていこう。

 

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11/04/18. Mon.

 

行政学

統制の規範、分離の規範、大統領府の総括管理機能について分かりやすさを心掛け説明し、「現在行政学」では今後の地震発生の可能性について、昨日の注目すべき新聞記事を取り上げた。来週には受講生がほぼ確定するので、次回はこれからの進捗スケジュールを提示したい。

 

行政学演習

2回目のゼミでは、受講生一人一人からこの1週間で感じたことについての話題提供。教員の方で変にまとめるのはやめて相互のやり取りを重視するようにした。そのせいか話がはずみ、あっという間にゼミ終了の時間となった。個々の受講生にまずは発言してもらうやり方が成功したようだ。T.A.(ティーチング・アシスタント)の院生も今回から参加ということで心強い。それでもまだ院生全員が揃ったわけではなく、なかなか一同に会するのは現実問題として難しい。

 

卒論指導

 時間の半分ぐらい使って一人一人と面談。震災関連、進路、就活状況などについて聞く。前向きにチャレンジし続ける中で、今後については皆それぞれに悩んでいる。3.11以後はこれまで依っていたところの価値観や考えの軸が崩れてしまったような感さえある。今は逃げずにこの試練を誰もが正面から受け入れる時なのだろう。

 

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10/04/20. Weds.

 

国際学英書講読

プリントNO2.となる”Japan Leading the way in disaster preparations”を読む。大震災の被害の凄まじさから見て、一読した際には違和感が残ったが、再読してこのような視点ももっともだと気づかされた。受講生が30数名と予想外に多い。残念ながら対面式ではできそうもないが、可能な限り一人一人に目配りしていきたい。

 

余暇政策論

前回、資料配付はなかったが、やはり受講生に授業の痕跡をモノ“(=紙媒体)として残しておくことは必要だと思い直した。資料を作成して配布。提供の素材は断片的にならざるを得ないが、とにかく新聞報道から拾い上げていくつもり。被災地でのスケッチ、コミュニティFM、不要不急の消費急減、小学校に選手派遣、ファンションの売り上げで中国から貢献、観光立国ダメージ、水族館魚類やペットの悲劇、医療ツアーやスクリーンツアーの苦戦といった具合に多岐に及んだ。

 

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11/04/21. Thurs.

 

スポーツ・体育社会学(白鴎大学)

被災地での企業チームやクラブ、部活の立て直しに向けた動きを新聞報道から紹介。復興プロセスにおいて地域密着型のスポーツクラブが何らかの役割を果たし得るのではないかと思った。このように行けるところまで、現在進行形の情報を新聞報道から吸い上げていくつもりだ。

 

スポーツ行政論(白鴎大学)

電力不足や計画停電がスポーツ試合に及ぶす影響について、Jリーグとプロ野球の事例を紹介した。開催スタジアムや昼間の試合開始への変更、招待券の取扱いなど、マネジメント面でチームが突き付けられた課題は意外と重いと感じた。観戦者をできるだけ集める宿命が経営側にはあり、時間は待ってくれない厳しさがある。

 

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11/04/25. Mon.

 

行政学

政治・行政の融合論と古典的組織論を説明。できるだけかみ砕いたつもりだったが、受講生の理解は進んだだろうか。現在行政学では政治主導と、被災地首長からの問題提起について。残った時間で今後の授業スケジュールを提示。震災を受けて変更があったのだから受講生に示すのは当然といえば当然であろう。やはりプリントにして配布しておいてよかった。

 

行政学演習

履修登録も終わり、今日から本格的なゼミ活動。震災関連で関心の特にある点について形式は問わずA4版1枚でレジメを提出。コピー忘れや前回休んだため伝達できなかったゼミ生はいたものの、全員から報告を受けた。来週以降のスケジュールについても良いチームワークを示しすんなりと決まった。幸先のいいスタートを切れた。院生も交え資料室に入りきれるぎりぎりの人数だが、折りたたみ椅子の活用で何とかここでできそう。

 

卒論指導

卒論指導も今日から文章化したものを2名から報告。就活とのバッティングなどいろいろあるだろうが、何とかこの卒論指導の時間とのつながりを持ち続けて進んでほしい。要はやる気と元気をどう出していくかだ。次回は連休の合間となるが、回数も限られているのでまじめに一回一回をコツコツやっていくしかない。

 

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11/04/27. Weds.

 

国際学英書講読

“More blasts, fires escalate Japan’s nuke crisis” を読む。訳にあたって、受講生3名から積極的に手が挙がったのが収穫。平易な文章ではあったが、敢えて丁寧に読むことで原発の基本的な仕組みなど、受講生にとって、固有名詞の理解以外に学習効果が得られたのではないか。連休のため次回は来月の11日。あせらず急がず、そして確実に1回につき、英文記事1ページ分を読み込んでいこう。

 

余暇政策論

連休前で盛りだくさんの内容となった。プリントの表は石巻日日新聞、ネット上のpray for japan、コンテンツ産業による文化力発信、電子書籍、小説家(なお、新聞記事のタイトルの「重いを記事に・・・」はこちらの打ち込みミス。「思いを記事に・・・」に訂正してほしい)や映画監督がどう震災に向き合っているか、といった項目に沿って説明した。新聞記事の写真をスクリーンに示すためにOHPも利用。話に熱が入り過ぎ、プリント裏の新聞コピーに言及するのを忘れてしまった。次回以降の授業スケジュールについてのプリントも配布。就活関連新聞記事のコピー(A3で表裏)も配った。

 

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11/04/28. Thurs.

 

スポーツ・体育社会学(白鴎大学)

被災地における地域密着型のスポーツチームが直面する課題について説明。スポンサー契約や入場料収入、サポート会費などのお金が回らなくなり、存続の危機に直面しているプロチームもあり、地域外(全国規模)でのネットワークの力が問われている。今後どうすればいいのか。従来の発想を超える知恵がまさに求められていると感じた。

 

スポーツ行政論(白鴎大学)

民間のフィットネスクラブの志ある社長がまさに地域密着の貢献をしている事例など、法人や任意団体の種別に関わりなく、スポーツ関連組織には個々が共通価値のなかでできることがいろいろとあるのではないだろうか。スポーツ組織はボランタリー活動、経営活動、貢献活動、文化活動など、他領域の組織の模範となり得るのではないかと感じた。

 

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