2004年11月 中村祐司の教育日誌

 

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04/11/01. Mon.

 

現代政治の理論と実際

アメリカ大統領選挙直前ではあったものの、最初にイラク人質殺害事件について取り扱わざるを得なかった。「常識的に○○」という言葉そのものが、混乱社会では通用しなくなって久しい。社会科学を学ぶからには論理的な説明の試みが常に土台となると思われるが、そのような試みを放棄したくなるような出来事であった。大統領選予測では見方が分かれた。ある受講生の支持率をもとにした州レベルの選挙予測に踏み込んだ報告には感心した。次回は結果を受けて、政治状況の整理に努めたい。

 

地方自治論

 市町村合併の流れについてメモ量は多かったものの、端折ってポイントを提示する。三位一体改革とともに、今、日本の屋台骨が揺らいでいることを受講生に理解してほしかった。合併は何のためにするのか、誰のためにするのかについては正しい答えは人によって違うだろう。それでも、今日、自治体数が3000を割った歴史的事実は記憶しておきたいし、現在の日本が国そのものの基盤をめぐる大変容に直面していることを、ぜひ認識してもらいたいという思いで講義を進めた。テキストについての取扱がうまくいかない。来週は3章だが、もっと受講生の意見を吸い上げるようにしたい。

 

卒論準備演習

 各々のグループがそれぞれのやり方で本格的にジョイントやISFJに向けて踏み出した。何となくまだ柔らか過ぎる雰囲気が気にならないでもないが、それが今年度のゼミ生のスタイルなのだろう。やる時にはしっかりやり、ちゃんとした結果を出してくれると信じている。何はともあれ、今月は正念場の月だ。自分も含め、時間を大切にして、集中と多面的な作業および考察、そして執筆を心掛けていきたい。

 

卒論指導

 卒論作成の切迫感が教員にも迫ってきた。11月に入るとさすがに後がないという雰囲気になる。報告は日本の難民認定に関するものと、企業の環境戦略に関するもの。自ら振り返れば、今までにそれなりに論文を書いてきていながら、余裕を持って書き上げたものが1本でもあったであろうか。学生に偉そうに言えないのは事実であるものの、後退すればきりがなくなる。とにかく1回1回を大切にしていくしかない。指導する側も必死。

 

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04/11/02. Tue.

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公開講座(コミュニティ入門)

知事選、市長選について、住民の目線から考察した。とくに公約をめぐってそれが住民の意識にどれほど浸透しているのか、あるいは公約をよりかみ砕いた形での説明なりPRなりが必要ではないかなど、多くの意見が出た。地方政府は住民生活をどの程度まで支えるべきものなのかなど、むしろ教員側がいろいろと考えさせられた。この講座も残すところあと1回。次回はまとめの意味も込めて、若干の話題提供資料を提示しつつも、ボランタリー活動を行う上での原点・原動力なようなものについて、再考してみたい。

 

比較政策研究(大学院)

2名からの報告内容は、国連のDVモデル法案報告書と日本のDV法との比較についてと、日光市の国際化をめぐる諸課題についてであった。両テーマとも切り口として、国際レベルにおけるマクロな視点からも、ミクロな日常生活レベルからの考察も可能で、大変興味深かった。政府のサービスが社会状況を変容させることは確かで、問題はその変容結果を書き手がどの側面からどう評価するかであろう。この時間は院生が相手ということもあり、自分の研究上の視点をめぐるヒントを得たいものである。

 

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04/11/08. Mon.

 

現代政治の理論と実際

アメリカ大統領選挙の結果を受け、今後の世界情勢を見据え総括的な講義内容となった。資料は主に読売新聞と産経新聞から抽出。それにしても毎日新聞が電子媒体上で報道した激戦州でのブッシュ異常票については気になる。本当だとすれば、フロリダ州とアイオワ州の投票結果を見直さなければいけないことになる。次回からは、受講生各自がテーマ案を提示し、それについて調べてきた範囲で報告することになった。

 

地方自治論

 市町村合併についての2回目。地方分権一括法における合併特例法の施行後から、合併関係三法案の成立までの流れを押さえる。受講生には今の合併の動きをめぐる背景を分かってもらえたと思う。昨日のNHK特集についての話もする。大阪市南泉州地域(田尻町、阪南市、泉南市、岬町、泉佐野市)の合併協議が破たんするまでの経緯を追った内容であった。現在、1800の地方自治体で合併が論議されている。阪南市長は、「国の経済政策の失敗を国に押し付けたのが合併」という見方をとっていた。バブルの時期、アメリカからの内需拡大政策への圧力のもと、国が地方自治体の借金(地方債)に交付税措置をとった状況がよく分かった。次回はテキスト4章と県内の合併状況について説明。文化祭のための休講をはさんで、その次がテストとなる。

 

卒論準備演習

 ゼミ生の取組みが軌道に乗ってきた。和気あいあいとした雰囲気の中にも論文やレジメ作成、発表に備えた緊張感が出てきたのはいいことである。まだ、日数は残されている。これからできることの範囲でベストを尽くしてほしい。再来週が休みなので、次回がジョイント前では、本ゼミ最後の詰めの作業となる。とくに提出が前倒しとなる共通テーマについては、完成版を作成するくらいの意気込みがほしい。13日に迫ったISFJの論文提出も正念場だ。

 

卒論指導

 化粧品流通・販売と商店街活性化問題についての2つの報告。卒論の方も12月20日の研究室内締切日がじわじわと近づいてくる。プレッシャーもかかるだろうが、ここは一つ、学業面での学生生活総仕上げのつもりでやってほしい。実際に現場に出かけていくことで、新たな発見があるということを学生の発表を聞いて再確認することができた。実証研究と文献研究は物事の本質に迫っていくための車の両輪だ。これについては学生レベルも研究者レベルも関係ない。教員にとっても目の回るような時期を迎えつつあるが、前向きに乗り切っていきたい。

 

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04/11/09. Tue.

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公開講座(コミュニティ入門)

今回が最終回。スポーツ活動と地域社会について話題提供する。その後、こども時代の遊びや身体運動、スポーツ活動の在り方や、生涯スポーツ活動の秘訣等について話し合う。これだけ活発なやりとりが続いた公開講座も珍しいのではないか。来年も時間帯の変更はあるものの、受講生数の多寡に関係なく何とか継続していきたい。今まで頭の中で簡単に片付けていたことを、受講生による実際的見地からの発言によって訂正していくという点だけに限っても、教員側が得るところ大である。

 

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03/11/10. Wed.

 

リサーチ英語セミナー(学部必修)

 “Oil price windfall strengthens Mideast’s repressive regimes”の残りを読み終え、“Olympic hurdles in Beijing”に入る。事前の準備では文意を把握していたつもりでも、すんなりとはいかない箇所がいくつか出てくる。思い込みで違った理解をしていることも多く、受講生からの積極的な指摘は教員にとって大変ありがたい。受講生自身でパラグラグ毎に交代してどんどん読み進めていけるようになるのが理想である。かなりスピードアップし、長めの文章の半分までいった。

 

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04/11/15. Mon.

 

現代政治の理論と実際

アメリカ大統領の不正投票について文章があったのでそれを紹介する。ただし、この問題をこれ以上深く突っ込んでも、こうしたことにエネルギーを費やすむなしさも感じる。今後のイラク情勢、日本とアメリカの将来についての予測、北朝鮮問題などについて話し合う。次回以降は各受講生が自らテーマを設定して、主としてインターネット情報を利用して深く調べていくことにした。教員もどのようなテーマで書くべきか、思案する必要がある。

 

地方自治論

合併についての3回目の講義。本日で6回にわたった説明が終了。栃木県内の合併状況については、宇都宮地域に合併協議会委員として直に関わったためか、説明の内容が感情的になってしまったかもしれない。しかし、合併問題が抱える特有の難しさを何となくでも分かってもらえたのではないか。次回は分権、合併、テキスト(第1章〜第5章)についての試験。そこですっきりと一区切りつけて、それ以後はレポート作成に向けて進んでいきたい。

 

行政学演習B

 来週が文化祭で休みのため、ジョイント前の最後のゼミ。ISFJでの発表テーマでもある年金については、原稿を提出しほっとした面もある。しかし、今後は内容の間延びを修正して、まずはジョイントの場で締まった内容の発表をしてほしい。その後、ジョイントで受ける質疑を参考に、ISFJ本番に備えることになる。分科会テーマのまちづくりについては、今後の仙台での調査の密度がレジメの出来を左右しそうだ。共通テーマである地域の国際化では、真岡市をクラーズアップさせるためにも、栃木県と宇都宮市の状況をまとめておくことが大切だ。いずれにしても、これからの10日間が非常に大切となる。

 

卒論指導

報告は地方競馬に関する一本。こちらも佳境に入ってきた。教員側も独特なプレッシャーを感じてきた。今年は文化祭参加企画(「宇都宮大学と子どもたち」)のハードな準備もあり非常にしんどい反面、研究室に閉じこもっているだけでは得られない充実感もある。教員にとっても文化祭企画と論文作成とを相反させるのではなく、何とか相乗効果を得られるような結果にしようともがいているのが現状だ。卒論生も同様に今回の貴重な機会を自分の成長に生かしてほしい。

 

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04/11/16. Tue.

 

比較政策研究(大学院)

報告のテーマは、難民問題をめぐる一部判例紹介とNPOのマネジメントに関するものの2つ。こうして少しずつでも発表を積み重ねていけば、決して無駄にはならないはずだ。しかも文章化しているので、期せずしてちょっとした修論作成の予行練習ともなっている。報告をめぐり、難民の捉え方や、NPO運営の成功例などなるほど思わせるヒントのようなものが得られた。大学院の授業はこのスタイルを継続させていきたい。

 

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04/11/17. Wed.

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リサーチ英語セミナー(学部必修)

“Olympic hurdles in Beijing” を比較的スムーズに終えることができ、次の” North Korea’s ticking time bomb”に進む。教員側がさして気にせず、思い込みで素通りしてしまったセンテンスを、受講生の質問によって気づかせてもらえるので大変助かる。今回あたりから皆で読み進めていくという雰囲気が出てきたのは喜ばしい。最後の30分程度を受講生に1パラずつ訳させる。これも予想外にスムーズに行き、手応えを感じた。

 

 

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04/11/29. Mon.

 

現代政治の理論と実際

栃木県知事選挙の結果について話題提供。その後、レポート作成に向けたスタートを切る。中国文化大革命、沖縄の米軍基地、自衛隊のイラク派遣、北朝鮮の観光、北朝鮮における金日成時代の政治的特徴などが挙げられた。次回からノート報告という形でレジメを掲載することにした。

 

地方自治論

 分権と市町村合併の推移に関する試験。次回からレポート作成に向けた内容が主流となる。県知事選の総括も少しやりたい。受講生約20名のやる気にかかってくるであろう。

 

卒業論文準備演習

ジョイントの翌日のため、休みを考えていたが、ゼミ生自ら志願して自主ゼミとなった。ジョイントの反省について話し合い記録と残すという。その積極性に感心した。前期の年金発表、今回のジョイント発表についてできるだけ早目に掲載したい。再来週のISFJに向けて全員体制でもうひと踏ん張りしてほしい。

 

                                                 卒論指導

3名から報告。市町村合併、生協、難民問題について。文章作成の時期である。実際に書き始めてみると註の付けかたや引用・まとめのやり方に戸惑っているようであった。自分の原稿も締め切りを抱えているので、プレッシャーの共有感はある。とにかく目の前のことをやっていくしかない。

 

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04/11/30. Tue.

 

比較政策研究(大学院)

発表は中国の環境問題と市街地活性化についての2つ。各々が修士論文に直結する内容であった。早いもので年内は残すところあと1回。今のうちからコツコツやっていれば、それが来年になって生きる時が必ずくるはずである。他の原稿締切日の焦りがあったものの、この授業の手を抜くわけにはいかない。(当日の18時からの学科教員の持ち回りでやっている公開講座をすっかり忘れてしまい、危うくすっぽかすところであった。)

 

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