2004年5月 中村祐司の教育日誌

 

---

 

04/05/07. Fri.

 

行政学概論

授業振替のため、金曜に月曜の時間割を実施。人の体内時計は意外と1週間単位で動いているのかもしれない。何となく感覚が変だ。テキストの3章と4章。今回から2章分ずつ進んでいく。受講生数は気のせいか漸減したものの、教室の容量がちょうどよくなったのでこの点は好都合。アメリカ行政学の行政理論と組織理論の系譜と日本行政学の課題などについて。またもや質問できず。これではさすがに聞いている方はうんざりするかもしれない。昨日とは打って変わって暖かくなりちょうどいい気候であった。秋と並んで今の時期が一番勉強しやすいかもしれない。2日間しか間隔がないが、次回は一気に5章、6章と進んでいきたい。

 

行政学演習A

ディベートのテーマ絞りに入る。ゼミ生に進行役を任せて、国外的な問題と国外的な問題との分けて検討した。試行錯誤しつつも、前者については「北朝鮮に対する経済制裁の是非」「自衛隊のイラク撤退の是非」、後者については「外国人雇用者を増大させることの是非」という線で固まってきた。次回までに国内問題についてのテーマ案と各々のテーマの是非をめぐる具体的な中身について考えてくることとする。今日の段階で案としてまとまったテーマはいずれもうまい具合に、「政府は○○すべきである」という形に沿ったものになったと感じた。

 

卒論指導

「栃木県の市町村合併」と「広域物流特区について」と題して2名が発表。前者については、今、自分なりに苦闘している課題なので、おおいにやってほしいという気持ちが前面に出てしまった。後者については、物流の波及効果、影響力、依存の大きさを垣間見る思いがした。いずれもとことんやってほしい。かならず、作成者に見えてくるメカニズムがあるはずである。概論、演習、卒論と自分が喋る量が序序に減少していくのでその点、演習と卒論指導は楽なのであるが、全体の議論状況のバランスなどに気を使う点では気を使う。いずれ、ゼミ生や卒論生が主導していく度合いが強くなっていくであろう。

 

---

 

04/05/10. Mon.

 

法学概論(産業技術大学校)

 栃木県立産業技術大学校県央校において9回シリーズでの授業が始まった。テキスト「公共を支える民」を用いるものの、受講生に直接的に関心を向けさせるような内容も盛り込みたいと考え、初回の今日は昨晩、インターネット上の「中央職業能力開発協会」のHPから得た「技能五輪全国大会」と「技能五輪国際大会」の概要について説明。県央校は機械技術科、制御システム科、自動車工学科、建築設計科、設備システム科の5科から構成されている。2回目以降も、各科の学生が行っていることと何らかの連結を意識した授業を行っていきたい。テキストのプロローグを説明し、次回は第1章。

 

行政学概論

2日間空けて通常時間割の授業。テキストの5章と6章。以前はテキストに書いてある内容を網羅的に教え込もうとして予定通り進むことができないことが多々あった。その反省に立って、今回はポイントを絞った説明を優先することにより順調に進んでいる。制度論の大枠(世界と日本の中央―地方の政府間関係)について、地方分権の流れも含めて説明する。受講生数もようやく「底を打った」ようである。質問を発する余裕が前回と同様なかったので、直さなければ。次回は1週間後で何だかだいぶ間隔が空いているように思え、ちょっとほっとした。テキスト7章と8章をやる。そろそろ試験の教室を押さえて、これを受講生に周知しなければいけない。

 

行政学演習A

試行錯誤しつつも、確実にディベートに向けて前進していると感じさせるゼミ内容であった。添付ファイルの利用や使用可能容量などの点で、携帯やyahooなどの無料メールでは限界があるので、大学から与えられた学籍番号アドレスでのメール使用をゼミ生にも奨励しようと、院生が行っていた作業の設定を手伝うが、これが大誤算。どういうわけかうまくいかず、何度やってもエラーメッセージが出てしまい、パスワードやログイン名についても混乱し、ゼミの半分以上の時間を費やしてしまった。どうやら情報センターで今の時期になってもアカウントを開設してくれていないらしいことが後で判明。なかなか難しいものだ。このゼミの提案としては、「政府は北朝鮮に対する経済制裁を行うべきである(の是非)」「政府はイラクから自衛隊を撤退すべきである(の是非)」「政府は外国人労働者を積極的に雇用すべきである(の是非)」が固まる。各々の肯定論、否定論の内容にどのようなものがあるが検討し、次回までに国内問題のもう一つのテーマについて考えてくることとする。ごみ問題シンポジウムとエイブル2の上映についても、関心を示してくれたゼミ生が複数いてうれしかった。

 

卒論指導

 ごみ問題と化粧品を取り上げた2つの発表。切り口についてはこれから探っていくとのこと。質問が積極的に出てくるのがいい。就職活動でなかなか全員が揃うことは難しいものの、「光陰矢のごとし」を意識しない今の時期の毎回毎回の積み重ねが後で生きてくるはずだ。HPへのレジメ掲載もしっかりやってくれており、この点でも心配ない。市町村合併、ごみ処理施設設置、NPO運営などめぐり現実に直面する厳しい課題を肌で感じることが多いだけに、逆の意味で理想や理念の大切さを実感しているので、学生の考えはおおいに参考になる。3年生との接触にも前向きで、この点も頼もしい。

 

---

 

04/05/12. Weds.

 

「国際社会を見る目を養おう」(初期セミナー)

2週間ぶりであるにもかかわらず、ほとんどの受講生がイラク問題に関係する何らかの情報源をインターネットから引き出してくれた。いずれこうしたものもHP上で紹介していくつもりである。OHPやコンピュータ画面のスクリーンへの提示なども初めてのわりには皆、スムーズであった。中には、Windowsの「拡大鏡」の機能を紹介してくれた受講生もいた。このように電子媒体を調べていく上でのツールの利用方法についても皆で共有していきたい。次回も同じようなやり方で受講生に報告してもらうことにした。

 

余暇政策論

前の時間の初期セミナーとは対照的な内容となった。余暇関連の情報の紹介をしてくれる受講生が誰もいなかった。前回、慌ててごちゃごちゃ言ってしまったせいだろうか。課題の内容がうまく伝わっていないようであった。急遽、電子媒体上でのノートの取り方を説明することにした。「和紙の博物館」というHPも紹介。テキストは6章の後半でごみ問題についての意見を募った。最後の方で少し盛り上がってきたので良しとしたい。講義メモで紹介したHPにアクセスした受講生がほとんどいなくて、この点は残念だった。次回は予め指名した5名に余暇関連のHPを紹介してもらう。テキストは7章の1節と2節。今後の進捗日程について準備しておかなければ。

 

---

 

04/05/17. Mon.

 

法学概論(産業技術大学校)

前半では技能五輪全国大会について過去の経緯と大会の規模、活動の広がり等についての概要を把握させるようにした。この10月の全国大会に配管部門で参加する学生もいた。次回には具体的な競技の職種についてももう少し見ていきたい。休憩を挟んで後半はテキスト第1章の地方分権についての考え方の説明。地方自治体として身近なサービスや提供可能なサービスは、できるだけ地方自治体と当該住民たちの責任で行った方がいいのではないかと問いかけた。これからも、どんな課題を取り上げれば学生の興味を引くのかを探りながらの授業展開になりそうだ。

 

行政学概論

再来週の試験場の確保ができないまま授業へ。テキストの7章と8章。制度論の中枠(議院内閣制)と小枠(国家公務員制)。ポイントに絞り過ぎたため受講生にはつながりがやや掴みにくかったかもしれない。受講生の中で公務員志望者がどれだけいるのであろうか。仮に民間企業志望であっても日本の国家公務員の採用システムと入省後の一般的に言われている特徴について押さえておくことは意味があると思う。次回は9章と10章。試験のポイントと教室を数日中に講義メモに掲載しておかなければ。

 

行政学演習

ゼミ生間で提案テーマについて詰めた結果、候補テーマとして前回の3つに加えて「政府は東京一極集中を是正すべきである」を加えることとした。ディベートの実施日時を7月9日(金)あるいは7月16日(金)の16時頃からとし、場所は大学会館を当たってみることになった。また、サブゼミの日程や研究室内での模擬ディベートの開催(6月11日(月))、さらにはディベートの進め方の決定や選出人数、勉強の段階では全員が2つのテーマについての肯定論と否定論を勉強することなどを決めた。田巻研究室との調整作業も貴重な経験だと思う。なにせ初めての試みなのでこれからも試行錯誤はあるものの、テーマをめぐる真剣な勉強を積み重ねていくことであるという共通認識を持つことができた。

 

卒論指導

就職活動関係で2名が欠席となったものの、「日本における難民受け入れ体制の現状と問題点」と「大型店進出による地元商店街に対する影響」というテーマで発表があった。ここにきて1週間のサイクルが早くなってきたような気がする。まだまだ、テーマをめぐる問題点を探っている段階だが、とにかく今の時期に前向きに取り組んでおくことが後で生きてくる。他の卒論生からのアドバイスも貴重なはずだ。月曜は授業が詰まっていてきついことは確かだが、卒論生間の活発なやり取りを聞いていると回復力をもらうようでありがたい。

 

---

 

04/05/18. Tue.

 

公開講座「地方自治体入門」

 

6回シリーズの第1回目。まずは自己紹介を兼ねて自分が今までにやってきたことと、最近の関心課題について述べ、過去2年のこの講座におけるレポートのまえがきを示した後に、5名の受講生に自己紹介してもらう。市町村合併について意見交換。状況についての共通認識を得たいとのことで、今日に至るまでの合併をとりまく推移を頭に入っている限りで説明した。次回も県内の市町村合併状況を説明した上で、双方向型の講座内容にしていきたい。

 

---

 

04/05/19. Weds.

 

「国際社会を見る目を養おう」(初期セミナー)

イラク問題について、一人一人ノート報告させるつもりであったのが、先週うまく伝わっていなかったらしく、全員という訳にはいかなかった。よく調べてきている受講生もいる。もう1段レベルアップして、自分が必要だと思われる箇所をノートに記しまとめていくと、その作業がレポートにつながっていくはずである。ファイル名やhtml文書での保存方法を教える。次回までに全員がノート報告してくることにした。

 

余暇政策論

予め指名しておいた5名のうち4名が報告。バーチャルミュージアムなどいろいろと興味深いHPを紹介してくれた。これも前の初期セミナーと同じで、ノートとして引用してくるなりまとめてくるなりするとレポートに生きてくるはずだ。そろそろ今後のノート報告のスケジュールについて気にし始めなければ。受講生数が30名ほどなので、回数分けをうまくやらなければいけない。また、あとしばらくは自分の方から積極的に話題提供していく必要がある。とにかくこの授業は受講生の意欲にかかっているので、それを引き出す工夫をもう少し続けていきたい。

 

---

 

04/05/24. Mon.

 

法学概論(産業技術大学校)

前半では技能五輪国際大会について、1950年以降の開催国の推移や、運営主体である国際職業訓練機構(World Skills)の機能、さらに機構の理念や目的、国際大会開催の意義などについて、英文の資料を訳す形で説明を加えた。各々のものづくりの実践が、世界レベルでの活躍の可能性につながっている点を強調した。後半はテキストの2章に関して、基礎的自治体による行政サービスの浸透と、これらをめぐる住民、職員、企業による参加と合意形成の意義とその効果について述べた。先週と比較して、やや話しやすく疲労感を感じなかった。

 

行政学概論

来週の試験時間や場所について確認し、今から取り組んでも十分間に合うということと、受講生自身のためにやるのだということを強調した後、テキストの9章と10章の講義に入る。官僚制についての位置づけの歴史的変容と官房系統組織によるライン組織に対する統制の特徴について、できるだけ分かりやすく説明した。1昨日の官房機能を取り扱った行政学会での理解も、今日の授業には役立った。来週で早くも折り返し点。週1回のペースも軌道に乗ってきた。

 

行政学演習

不覚にも涙を流しそうになるほどうれしい思いをした。ディベートに向けたゼミの取組み方について、事前の詰めが不十分であったことから、両方に迷惑をかけてしまったと反省しつつ、ゼミ活動をこのゼミだけの発表形式にしたらどうかと提案した。ネガティブな反応を半ば予想していたのだが、意に反して、恨み言は何もなく、前向きな方向展開へ向け、単独ゼミとしてディベートをやるということで皆が一致した。これだけでも非常にうれいしのに、加えて、その枠組みやテーマの見直し、今後のスケジュールなどをめぐって、ゼミ生、チューター、院生の誰もが少人数によるディベート開催の工夫など、教員側の発想ではなかなか出てこないような良いアイデアがたくさん出された。この研究室を選択した学生には本人が意識するにせよ意識しないにせよ、ある種の幅の広さと芯の通った何かがあると感じた。教員冥利を感じた日。

 

卒論指導

2名によるノート報告が順調に回っていくようになった。今日は「競馬の目的と役割」と「栃木県の市町村合併」についての発表。前者については、例えば、特殊法人改革が政府による従来のコントロールにどのような変化を及ぼしたのか、後者については今後の合併状況の予測など、重要な論点はたくさんあるように思われる。各々のテーマをめぐって卒論生の間で多くの質問や意見が出て、時間の経過が早く思われた。

 

---

 

04/05/25. Tue.

 

公開講座「地方自治体入門」

 

  5月15日の「地方自治を学ぶ会」で用いたレジメを使用して、県内市町村合併状況について説明。その後、受講生の一人から南河内町、石橋町、国分寺町における住民の視点に立った合併の成り行きと取組みに関する貴重な資料が提供された。意見交換では地方議員の役割や合併目的、経済性という単一指標で当該地域の活性化を評価することの是非など、いろいろな視点が提供され興味深かった。次回は直接請求のしくみや日本の地方自治制度の経緯、地域自治制度、編入合併と対等合併それぞれの場合の在任特例と定数特例について取り扱っていきたい。

 

---

 

04/05/26. Weds.

 

「国際社会を見る眼を養おう」(初期セミナー)

 イラク問題についてのノート作成の課題を出席者全員がきちんとやってきた。報告のやり方もなかなかうまく、何よりも嫌々やらされた感じが全くないのがいい。報告を聞きながら、最終的には個々のレポートを別個に並べるのではなく、順番も考えて統合してもいいかもしれないと考えたりした。今後のスケジュールも示した。締切(7月7日)とその前の中間報告を目指して、今日を起点にノート作成に本格的に取り組んでいく雰囲気が醸成された。教員からの話題提供は中途半端となってしまったものの、Japan Times Weekly(May 8, 2004)の”Iraqis question sovereignty without authority”を取り上げる。個人的にはイラク暫定統治機構について書いていきたいと考えている。

 

余暇政策論

先週、了解を得た2人から各々、コーヒーをめぐるフェアトレードと地域通貨についての報告。他の受講生に刺激となったのは間違いない。今後のスケジュールを示す。人数が多めなので中間報告は1回で、提出後の討議を3回にわたって行うため、提出日も6月末日と初期セミナーより早く設定せざるを得なかった。でもまだ時間はある。興味深いテーマ設定がいろいろと出てくることを期待したい。教員からの話題提供としては、同じくJapan Times Weekly(May 8, 2004)から、”Read about social concerns in a comic”を取り上げた。紹介しながら、余暇政策というのは捉え方によっては非常に多様な領域となることをあらためて感じた。スペシャルオリンピックス関係の上映会についてPRしたこともあり、テキストを取り扱う時間が切迫してしまったものの、7章の後半を終える。次回は8章の1,2,3節。

 

---

 

04/05/31. Mon.

 

法学概論(産業技術大学校)

三菱車輪脱落事故と大型車のクラッチ系統の欠陥問題を取り上げる。ハブの形状と破断のしかたやプロペラシャフト脱落事故のイメージ図からキーワードを黒板に書き出した後、後者の事故の経緯と欠陥隠しの実態を把握した。三菱グループ主要企業との関係を図示したりして、大企業組織における構造的な問題と技術上の欠陥隠しが結びついた問題として、ものづくりに携わる受講生に専門領域以外の視野の拡大を求めた。テキストは第3章。理念上の地方議会の存在意義と現実に直面している課題について説明した。

 

行政学概論

農学部の教室を借りて中間試験を実施。蒸し暑いわりに風が強く、窓の開閉加減に苦労した。解答の出来はどうであったろうか。ひとまず折り返し点まできたので、来週から気持ちを切り換えてやっていきたい。受講生には出来不出来にかかわらず、一度リセットして期末試験に向けてやる気を出してもらうようにもっていきたい。1回分は予備日を設定できるので、僅かではあるが余裕をもって進めるかもしれない。採点を早めに済まさなければ。

 

行政学演習

年金問題と裁判員制度をめぐるディベートの準備が本格的にスタートした。解説書や新聞報道をそのままの形でもってくるのでなく、自分の頭で理解・納得した部分を積み上げていくことの大切さを強調した。基本的事項についてはメンバー間で理解を共有しておくことが必要。ノートのファイル化や配布のしかたなどは、おいおい定着してくるだろう。ゼミ生が各々臆せずに発言していた姿が印象的だった。

 

卒論指導

2名によるノート報告。テーマは「広域連携物流特区について」と「日本における難民受け入れ体制の現状と課題」。前者は一般の消費者が普段の生活の中では当たり前のように受けとめていることが、実はマーケットの領域では基幹となっている点が興味深い。特定の製品を追いかけていくのか、全体を見渡すのか、今後の勉強で見極めてほしい。後者についても、意識レベルではなかなか明確な問題意識として浮かび上がってこないものの、ある意味で日本の政策的矛盾が凝縮されたような領域である。政府説明(言い訳?)をも追う作業の中で、いろいろな政策課題が噴出してくるように思われる。

 

---

 

研究室トップへ