2003年11月 中村祐司の教育日誌

 

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03/11/04. Tue.

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公開講座(コミュニティ入門)

早いもので折り返し点の5回目。テキスト7章4節5節。とくに「元気な高齢者」をめぐって、その活躍の場をどう設定すればいいのかなどの意見が出された。今後の介護サービスをめぐる方向性についてはテキストの記述はもちろん、実際の活動の場試行錯誤しながら積み上げていくしかないといういうことで一致した。後半は町内会・自治会についてのまとめ。「町内会・自治会の新展開」から、以下のような町内会の捉え方の視点を紹介した。@近代の市民社会とは相いれない組織A日本に固有な集団文化B多様な生活機能に着目C合併によりなくなった町村を引き継いでいるものもあるD土地の実質的な占有(所有)関係E共同利用とそれにもとづく共同管理の組織。そして、やはり同書から有用な資料として、「部落会町内会整備要領」(内務省訓令第17号、1940年)「ポツダム政令第15号」(町内会部落会又はその連合会等に関する解散、その他の行為の制限に関する件、1947年)「自治会・町内会等の住民自治組織の実態調査結果の概要」(自治省、1980年12月調査)「地縁団体認可状況等調査結果―平成四年度」(自治省、1993年3月)「地方自治法第260条の二<地縁による団体>」「地方自治法施行規則(第18条〜22条)。次回のテキストは章1,2,3節。地域コミュニティ組織やNPOの活動について紹介する。

 

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03/11/06. Fri.

 

現代政治の理論と実際

 今回は受講生の間での意見交換をメインにまずは年金問題について話し合った。世代間の負担や給付の不確実性や税負担の導入などをめぐってやりとりがあった。その後は外交問題や雇用、郵政事業などに課題を移し、受講生からの率直な意見を求めた。やはり、講義形式よりもお互いのやりとりによって、講義を組み立てていくというやり方をもっと積極的に取り入れようと思った。その方が教員にとっても刺激的であるし、基本的な認識をめぐる再発見もある。次回は衆院総選挙の結果を受けて、政権党となったマニフェストの今後の行方や投票行動のあり方などについて、教員と受講生、受講生間の双方向のコミュニケーションを図っていきたい。

 

地方自治論

 分権一括法の成立と、その中の地方自治法の改正により、自治事務と法定受託事務がどのように位置づけられたのか説明し、一応、今日に至るまでの説明を終わる。

テキストは2章の1,2節。「相乗り」といった言葉や首長選挙における政党公認の問題、条例制定請求をめぐる課題などについて、質問が出される。今の段階では教員からの情報提供が圧倒的だが、今後は徐々にでも双方向のやりとりを増やしていきたい。ただし、合併問題については2回程度費やして説明しなければならないかもしれない。一コマ目の時間と同様、受講生とのやりとりで講義を組み立てていくことの大切さを再確認した。次回は合併についての説明に入りたい。テキストは2章の3節4節。また、衆院選の結果を受講生はどのように受け止めたかについてもきいてみたい。

 

行政学演習B

 1回につき1グループの発表ということで、今回は「在日外国人児童に対する教育について―未就学問題から―」について報告があった。今日のように率直に意見を出し合う雰囲気を継続してほしい。ラスト30分間で朝日新聞の取材が入り、3年生を中心に今回の選挙についてざっくばらんに語ってもらう。学生が選挙にどのように向き合っているのかを記事にするという。明日の朝刊が楽しみだ。

 

卒論指導

 実質的な資料収集やインタビュができるのもあと1カ月弱である。遅くとも12月に入ったら書き出さなければならない。意欲と問題意識が全てといえ、方法論はその後から追い付いてくるもの。本日のテーマではなかったものの、就職内定先の研修で卒論生が作成した「お金」に関する考察(郡山駅から宇都宮駅までの路線情報)は大変面白かった。卒論テーマと絡む要素もあり、ぜひ卒論に盛り込んでほしいとアドバイスした。

 

比較政策研究(大学院)

 4人から報告。テーマは「シンクタンクの影響力」「自治体における国際交流のあり方と今後の方向性について」「足尾銅山の公害の歴史」「移民と言語教育政策」。一見、個々にばらばらのようであるが、発表を聞いていて政策という面で連結していることを実感した。研究室HPにもさっそく掲載することにする(この点、あらかじめ表を作成しておいたので、作業面で昨年よりも掲載しやすくなった)。

 

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03/11/10. Mon.

 

現代政治の理論と実際

午前3時近くまでテレビの衆院選報道を、チャンネルを変えながら見ていた疲れをひきずったまま授業に臨んだ。1昨日の「スペシャルオリンピックスを広めよう」集会が成功裏に終わった報告を行った後、各政党の解散時と選挙後の議席獲得数を板書し、低迷したままの投票率の原因について受講生に問いかけた。次回はもう一度衆院選を取り上げ、とりあえずの締め括りに持っていきたい。

 

地方自治論

テキスト2章の3節と4節。しかし、感想を聞こうとしても教科書をまだ購入していなかったり、読んでこなかった受講生が続き、出鼻をくじかれた格好となった。仕方ないので、概要を説明した上で、他の受講生から何とか意見を引き出した。スペシャルオリンピックスの報告を行い、その後、市町村合併についての説明を始める。次回は、94年の第24次地方制度調査会の答申から。あまり込み入った話はできないだろうが、何とかあと1,2回使って合併問題を取り扱い、その後地方分権と合併についての試験実施後、各自のレポート作成に向けて進んでいきたい。市町村合併特例法についてしっかり把握しておかなければ。次回のテキストは3章1,2,3節。地方選挙に関する宇都宮市民世論調査について書いたコメントも紹介したい。

 

行政学演習B

 ジョイント分科会に向けた準備報告。今回は「都市の中の緑」というテーマで発表があった。やはり今後、実際に宇都宮市や栃木県の事例を積極的にあたっていく必要がある。時間的な余裕はあまりなく、ぜひ奮起してほしいと感じた。ジョイント宿泊先の館山セミナーハウスの収容人数の関係で宿泊者を2名減らさなければならなくなり、後半は対応に皆で知恵を絞る。結局、館山市内の他の宿泊所を捜し、そこに4年生とOBに泊まってもらったらどうかいう線で打診することになる。さっそくインターネットで検索したところ、格好の施設が見つかったが、最終的な結論が出るまでにはあと1,2日ほどかかりそうだ。

 

卒論指導

インターンシップを取り上げた発表。とりあえず目次を作成した上で、書けそうなところはどんどん盛り込んでいこうという姿勢が感じられた。それでいいと思う。とにかく書くにあたっても思い切って踏み出すことが大切だ。このテーマについては他の卒論生もいろいろと考えるところがあったようで、活発な意見交換がなされた。文部科学省がインターンシップに対してどのような基本的スタンスをとっているのか、把握してみたらどうかとアドバイスする。それ以外は論文作成を後押しするような他の卒論生からの意見が相次いだため、教員としては耳を傾けていればよく、非常に頼もしい思いがした。

 

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03/11/11. Tue.

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公開講座(コミュニティ入門)

前半はテキスト8章の4節、5節にもとづいて、身障者の移動権や政策参加の課題について意見交換。後半は一昨日の日本自治学会における近隣政府をめぐる分科会報告の内容を紹介した。地方制度調査会の最終答申にも今後注目していきたいと指摘した。意思疎通の結節点としての会議のあり方や、政策過程における行政職員の役割、さらには住民や地方議員による取り組みの課題についても話し合った。合併問題との絡みでも地域内自治のあり方がクローズアップされることは必至であろう。次回は9章の1,2,3節とNPOに関する話題提供を行いたい。

 

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03/11/17. Mon.

 

現代政治の理論と実際

衆院選を振返って、各党別の確定議席を押さえ、新聞社による見方を整理した後、栃木選挙区や比例代表北関東ブロックの結果について解説。その後、意見交換となったが、受講生の手はあがらない。指名すると結構いろいろといってくれる。やはり活発な討論を展開するためには教員側からの工夫がもう少し必要かもしれない。一応、今回で衆院選については区切りをつけ、次回からは別のテーマを取り扱っていきたい。

 

地方自治論

テキスト3章の1,2,3節。前回読んでこなかった受講生に感想を聞く。それでも読んでこなかったという受講生はいなくてほっとした。教員にとってはすんなりと読んでしまうところでも、受講生にはひっかかってしまう箇所があることを知った。ノートにまとめたからといって安心しないで、再度予習するつもりで事前に読み込んでおかなければいけないと反省した。次回は同章の4節と5節。講義では市町村合併について、94年の地方制度調査会の答申内容と、分権委の中間報告・一次勧告・二次勧告における市町村合併・広域行政への言及内容について説明。次回は98年の地方分権推進計画から。合併をめぐる状況は今日に至るまで変動し続けているが、何とかあと1,2回でまとめていきたい。その後、試験をはさんで、受講生によるレポート作成にもっていきたい。休日、時間割振替などなかなか週単位のリズムが刻めず苦しい面があるが、とにかく一回一回を大切にしていきたい。

 

行政学演習B

 残り10日余りでジョイントに突入する。各グループの準備も大詰めをむかえてきた。パワーポイントを用いるグループが3つあり、2回の模擬発表の教室とプロジェクターの借用についてゼミ終了後、教務課と学部事務に行き了承を得た。まず、文章でしっかりしたものを作成し、それをもとにパワーポイント用のレジメを作成し、両方を印刷して配布することに決めた。パワーポイントを使わない場合には文章とレジメとなる。いずれも見開きの表裏として折り込んでもらうようにする。印刷室の利用についても確認。

 

卒論指導

有機コーヒーをめぐる報告。卒論作成に向かう強烈な気合に皆が元気をもらったような雰囲気となった。後は実行(作成)あるのみである。時間的な制約という枠内でぜひベストを尽くしてほしい。確かに論文作成においては、学術上無駄な部分は削ぎ落としていかなければならないというのが大前提である。しかし、結論に向けて迷いつつ、試行錯誤しながら書いていくというのも事実であり、その時点で盛り込んだ方がいいと判断した内容については躊躇せずにどんどん掲載していってほしい。

 

比較政策研究(大学院)

4人の発表テーマは各々、「日本企業における国際化について」「スハルト声明に見る権威主義的思想」「地方自治体の国際協力―政府による地方自治体への支援―」「リサイクル社会とまちづくりについて」。教員側が黙っていても、この授業の意図を院生が理解してくれていて、しっかりしたペーパーを用意してくれるのがうれしい。ただし、参考文献の内容のまとめや引用が主体のものと、自分で文章を組み立て文献はそれを補足するためのものとしているものとに二分されているように思われた。後者の取り組みをぜひやってほしいと強調した。朝からこれだけ連続する講義は今年度後期が初めての経験。体力勝負であることを痛感する。

 

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03/11/18. Tue.

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公開講座(コミュニティ入門)

 早くも3回目。事前のコピーを生涯学習教育研究センターのスタッフの方がしてくれるので大変助かる。まずはテキストをもとに意見交換。受講生が、関連で治安をめぐる多摩での試みである「たまたまパトロール」などを紹介してくれたりして興味深かった。その他にも身近なレベルからの情報交換ができた。1週間程前に購入したシグマリオンVを使って、内容をメモにとっていたのだが、操作を誤って削除してしまったらしい。今後は気をつけたい。滑り込みという感じではあったが、用意しておいた町内会・自治会に関する論文のまとめも提示。次回はテキスト7章の1〜3節まで。町内会・自治会関係でもう少し調べてみたい。いずれ市町村合併についても話題にしたい。

 

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03/11/20. Thurs.

 

大学院(さいたま)サテライト公開授業

 「ワールドカップの『遺産』をどう活用すればよいのか」(宇都宮大学大学院国際学研究科第4回サテライト公開授業「ワールドカップから1年―ワールドカップがもたらしたもの―」) と題して、さいたま新都心駅近くの「彩の国8番館産学交流プラザ9号室」で18時から20時45分まで行った。学部の同僚教員2名の協力に感謝。受講生は僅か2名ではあったが、拙稿をもとに前半は講義、後半は皆で討議を行った。受講生2名の問題意識が明確なこともあって、予想以上に中身の濃い授業を展開することができたと思われる。このような形での担当は年1回程度であろうが、ぜひ継続していきたい。

 

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03/11/25. Tue.

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公開講座(コミュニティ入門)

 早くも8回目。テキストは9章の1、2、3節。自分が担当したところでもあり、記述しなかった内容を中心に補足した。スポーツ施設の利用やプロアイスホッケーチームの将来、既存の組織との摩擦などを話題として意見提供を行った。受講生の発言がいずれも大変興味深いもので、時間の経過があっという間である。最終回(10回目)に「コミュニティを考える」という大きなテーマ(具体的なテーマは各自設定)で、受講生に400字換算3〜4枚で文章を作成してもらい、これをホームページに掲載することで了承を得る。調査、資料収集の上ではなく、この公開講座を通じて考えた事や新たに感じた視点などを、あまり構えずに書いてもらえたら、と考えている。泉が丘地区の総合型地域スポーツクラブの立ち上げについて説明した後、残り僅かな時間で『まちのマネジメントの現場から』(学芸出版社、2003年)という本から、熊本県小国町、熊本県宮原町、岩手県藤沢町におけるまちづくりについて簡単に紹介した。次回のテキストは同章の4節。

 

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03/11/27. Thurs.

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公開講座(まちづくりカレッジ)

「地方分権とまちづくり」と題して、前半は分権をめぐるここ10年の動きについての概略説明。後半は急遽予定を変更して市町村合併とまちづくりについて、具体的な問題点を出し合った。受講生の意見はまだまだ続きそうで、来週はまるまる2時間を討議に当てることにする。自分の見解も出していきたい。

 

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