1999年11月の研究教育日誌


1999年11月1日(月)

「現代政治の理論と実際」

 インターネットの「深澤ポン太のホームページ」を紹介し、この中の「政治の研究」における2000円札紙幣の発行に関する論評を題材として使う。ATMやレジスターに及ぼす影響など興味深かった。次週までにこのホームページでリンク先として紹介している「カリブの海賊」の「石油・エネルギー」について述べられているところを読んでくるようにという課題を出した。

「地方行政論」

 AVCC(視聴覚コンサルタントセンター)からgood site賞を受けた茨城県猿島町のホームページをスクリーンに映して紹介する。人口2万人に届かない小さな町がこれだけ意欲的に町のPRに取り組んでいることに驚きを受ける。次週までにこのホームページに目を通し、数行程度の感想を研究室宛にメールで送るようにという課題を出した。

「行政学演習B」

 ジョイント合宿の勉強会も残り僅か1カ月。朝鮮人学校を取り扱う班は公開授業を聴講するなど意欲的な取り組みだが、W杯サッカー担当の班は大会終了後のスタジアム利用ということで、テーマとしてややもったないのではないかと思わず口をはさんでしまった。防災班は那須の水害を中心に据えて、インタビュも意欲的にこなしそうでやや安心した。

「卒論指導」

 就職先の研修や教育実習の事後指導なるものが重なり、出席は半分の3人。ぎりぎりでも1カ月後には書き出さなければ間に合ないと思うとこちらが心配になってくる。国際学部特有の広範な科目を履修することがかえって法学部の学生などとは違って、行政学に関する卒論生の間での基盤となる認識を持ちづらくしている面も否定できない。いずれにしてもあと数回の発表で卒論作成の骨組が構成できるようベストを尽くしてほしい。


1999年11月2日(火)

「比較行政研究」(大学院)

 比較行政の視点から、各自が取り組む修論作成に生かしてもらおうという趣旨から、各々3人の受講生がレジメを持ち寄り発表してもらう。3名のうち1名は社会人の方でその経験談を興味を持って聞かせてもらう場面も多く、世代が異なる4人の間で個性的な大学院授業にしていきたい。


1999年11月8日(月)

「現代政治の理論と実際」 

 先週出した課題について、受講生1人1人に感想を聞く。ガソリンの価格設定やガソリンスタンドのサービス、セルフスタンドの将来性、湾岸戦争の背景などについての関心が高かった。新聞報道等では得られない情報や見方に関心を持ってもらおうというのが今日の講義のねらい。次回は「首都機能移転」をテーマにこれに関連するホームページを読んでくるようにという課題を出した。

「地方行政論」 

 出席者を対象に担当を割り当てる。1人3県、市町村ホームページを担当。1県から一つを選定するわけだが、その際の大まかな評価基準について皆で考える。県によっても個性があるだろうし、また、県内の市町村ごとでも相違があるであろう。初めての試みだけに試行錯誤しながら進めざるを得ないが、受講生の取り組みの度合いがこの授業の成否に直結するだろう。

「行政学演習B」

 教育問題についてはメンバーの役割分担においてもうまく噛み合っているし、勉強も深まっているようだ。防災とW杯サッカーについては少し心配。何を調べればいいのかは自分たちで決めるべきなのに、このあたりが何とも心もとない。各々のテーマに対する勉強が面白くなればなるほど充実したレジメが出来上がるはずだ。

「卒論指導」 

 全体として進み具合があまり良くない。目次が現段階でも固まらない。目次作成と資料収集がなされなければ何も書けないはずなのだが、このあたりの事情が未経験ゆえに分からないようだ。12月は相当にきつくなることを覚悟せざるを得ないなと感じた。そうは言っても自分の論文作成のことを考えると偉そうなことは言えないか。大学院の頃、友人に「締め切りが過ぎてから慌てだす」と言われたことを思い出した。


1999年11月15日(月)

「現代政治の理論と実際」 

 首都機能移転についての受講生の関心はあまり高くはないようだ。身近な問題としてなかなかピンとこないからであろう。講義では岐阜県のホームページからの抜粋を用いて、首都機能移転に関する基本的な事項と、PR内容をまとめた。しかし、この内容とは正反対に「絶対反対」を掲げる東京都のホームページも紹介し、都道府県という同じ地方自治体レベルでも見解が真っ向からぶつかることを説明したが、その中身については時間切れで紹介できなかった。12月17日(金)17:00を締め切りとする課題を出す。

「地方行政論」

 担当希望のなかった福井県と和歌山県については私が担当することになったこともあって、福井県の上中町のホームページを取り上げて、ファイル上でのノート作成のやり方を示した。果たしてどのような内容のレジメが出てくるであろうか。最後の質問で1県あたり3ページかと聞かれ、そうだと答えたが、全体として9ページでは少し負担が重いかもしれない。再来週の中間経過報告の状況をみて、変更するかもしれない。

「行政学演習B」

 来週が、学祭で休みなためレジメ作成の見通しが今日でつくかどうかが大切。教育問題班は大丈夫。防災、W杯も遅ればせながら盛り上がってきたようだ。再来週までに完成レジメを切ってくるように言うが、出典を押さえ、レイアウトなどはともかく、意欲の感じられるレジメを期待したい。成否を分けるのはレジメ作成の当事者が夢中になれるかどうかであろう。

「卒論指導」

 皆、余裕を持ってというよりはぎりぎりでレジメを出してくる感じ。それぞれが事情を抱えていることは分かるが、この時期に危機感が感じられないのはどうしたことか。来年1月10日(月)は「成人の日」で休みということで、卒論締切日との関係で気になるところだ。年末にバタバタするのだけは避けたい。2週間後にどのような内容のものが出てくるのか、一番緊張しているのは当の本人たちよりもこの自分だ。終了後、久しぶりに皆(8名)で夕食に出掛ける。「若い者」という言い方は失礼かもしれないが、そのような彼女彼らに囲まれていると気分的にこちらも元気が出てくるようで、この点、大学教員というのは何ともありがたい職だとつくづく感じる。


1999年11月16日(火)

「比較行政研究」(大学院)

 政府の経済対策閣僚会議が今月の11日に決定した「経済新生対策」(総額約18兆円)と首都機能移転をめぐる論点について、簡潔に話しをする。科研費の手続きミスを修正しなければならず、受講生に詫びて早目に切り上げる。 次回は地方分権や市町村合併についてたっぷり説明させてもらうということで勘弁してもらった。


1999年11月29日(月)

現代政治の理論と実際」 

 本日から2回に分けて、受講生に中間報告をしてもらう。テーマは現代社会に関わることなら何でもOK。まずは関心のあるテーマに関するインターネット情報の検索が必要となる。自分で書いた文章と引用部分とをはっきりと分かるようにしておくことと、特に写真や図の引用も含めて出典を明記しておくことを強調する。各自でぜひ充実したノートをフロッピー上に作成してほしいと願う。

「地方行政論」

 1コマ目では全体として戸惑いの雰囲気が多かったようだが、この時間では積極的な受講生の姿勢が目立ちうれしかった。中間報告では既に取り上げる市町村のホームページを絞っている者もいて、それはそれでいいのだが、絞り込む過程での勉強も課題の重要な要素であることを説明する。

「行政学演習B」 

 来月3日から2泊3日で千葉県の館山市で開催されるジョイントゼミに参加するが、今日がその大詰めの発表。各班の勉強の進み具合に温度差があり、これがそのままレジメの出来不出来となって現れるはずだ。とにかく、宇大以外の学生とゼミを通じて接する機会は大変貴重であり、いい意味でのカルチャーショックを受けてほしいと願う。

「卒論指導」 

 講義に臨んで決して手を抜いているわけではないが、卒論指導はいいも悪いもこちらの個性が演習以上に前面に出るものだと思う。ところが、残念ながら各テーマごとにおける内容をめぐるこちら側と卒論生との緊張感のある議論がなかなか展開していかないのはどうしたことか。結局のところ、この時点に及んでまだ本気になっていないということか。この職業に就いて、締め切りが論文作成のエネルギーを生み出す一つの源泉であることを年々痛感しているが、それにしてもあと3週間余りで行政学の卒論としての基準に達するものが本当に生み出てくるのだろうか。正直なところ心細い。


1999年11月30日(火)

「比較行政研究」(大学院)

 先週の3日間にわたる栃木県市町村研修協議会で使った資料を渡し、主に1993年以降の地方分権の流れについて説明する。市町村合併の是非は当該市町村毎に論じなければならないことを忘れてはいけないものの、国の促進策の勢いにはすさまじいものがあり、市町村にとって、外堀は埋められつつあるのではないかというのが個人的な見解。