1999年10月の研究教育日誌


1999年10月4日(月)                                               

「現代政治の理論と実際」

後期スタート、初めて講義。インターネットにつながっているパソコン画面をスクリーンに大写しできる 「イメージ・ラボ」という教室をこれから半年使用することになる。受講生は1年生で各学部から全部で10数人。
 ここ1年程で自分の授業スタイルがインターネット利用に変わってきていること、政治情報に限っても IT情報はあふれんばかりの状況であることを話し、「超〇〇法」で有名な野口悠紀雄のホームペー ジから「Web現代」という電子雑誌に行って、自民党の河野洋平(今度の外務大臣)と民主党党首の鳩山由紀夫のインタビューを示してみせたりした。いずれにせよ、学生の関心を喚起できればと思う。

「地方行政論」

 国際学部の2年生を対象にした専門科目。これも「イメージ・ラボ」を用いる。地方行政を学ぶに当たってもインターネット情報を大いに使えるということを最初に強調。
 講義の進め方としては介護保険といったようにあるテーマを設定してこれを追及していくのか、あるいは約半分程度がホームページを開設しているといわれている市町村を対象に魅力的なホームページのランキング作業やってみてはどうかなど、受講生の反応をみながら11月頃決定したい旨を説明した。
学生とコミュニケーションのキャッチボールをしながら、この授業も盛り上げていきたい。

「行政学演習B」 

 12月の他大学行政学ゼミとの「ジョイント」合宿に向けた勉強会と意気込んでいたが大誤算。中心とな るべき3年生が来ないではないか。正直言って動揺したが文句ばかり言っている訳にもいかない。テーマは 防災行政、教育問題、Wサッカーの3領域なので、集まったメンバーで今後勉強を積み重ねていこうと呼び かけた。合宿に参加するしないは二の次で参加しないメンバーが中心になってもいいのだ。それから学年どうのこうの、あるいは行政学で卒論を書くどうのこうのは関係ないと思う。要はこの時間の中身をいかに濃 くしていくかだと思い直すことにした。

「卒論指導」

 演習とは対照的に「さすが4年生」といったところか。6人全員が顔をそろえる。やはりスタートはこうでなければ。1回で3人ずつ発表してもらうので、2週間に1回は回ってくることになる。
 前期は就職活動等で卒論指導は実質的に全く進んでいないので、これから10月、11月、12月と彼ら彼女らには正念場となるだろうが、ぜひ本気になってほしいと思う。他人のテーマでも有用な情報があればメーリングリストを用いて各々が情報提供し合ってほしいということと、発表に対しては臆せずにどんどん批判 してほしいということを強調した。
 昨年は4人を相手にへとへとになったが今年はその1.5倍。こちらは年々老けていくし、エネルギーの消耗に耐えられるか。



1999年10月6日(水)

「比較行政研究」(大学院)

 参加者は若干1名ではあったが、初めて単独で持つ大学院の講義となる。
 受講生の卒論を見据え、各自の修士論文作成に当たって、行政学の見地から役立つような内容にしたいという旨を伝える。この講義の成果が修論の1節あるいは1章となってくれればうれしい。研究の視点につ いて、インターネット情報を活用してほしいということと、現象の交通整理に加えて、現実的な政策につな がるような対案を出してもらいたいということを強調した。次回から本腰を入れてやっていきたい。



1999年10月18日(月)

「現代政治の理論と実際」

 今日は「エンカルタ百科地球儀」(マイクロソフト)のCD-ROMを用いて、宇都宮から東ティモールまでバーチャルフライトした後に、スクリーン上の地図で確認し、その後東ティモール問題の説明に入る。便利な道具があるものだ。あと1、2回は学生の関心を喚起するために、こちらから話題提供していきたい。

「地方行政論」

 手抜きと批判されるかもしれないが、東ティモールの勉強にかなりの時間を費やしたこともあり、地域の視点から解説を入れつつ、1コマ目の素材を重複させる形で用いた。ほぼ同じ内容ではあるにもかかわ らず、学生の反応は1コマ目とは多少異なるように感じた。話しがこちらの方がスムーズにできたせいだろ うか。

「行政学演習B」

 先週は人数が揃わずどうなることかと思ったが、今日はほとんどが顔を出し、ジョイントゼミに向けた勉強がスタートした。メーリングリスト等を利用してインターネット情報を提供し合い、お互いに刺激し合いながら盛り上がっていってほしい。

「卒論指導」

 とにかく、レジメを切ってくるように強調したせいか、発表者は全員レジメを揃えてきた。6人構成なので1週に3人が発表。2週間に1回発表が回ってくることになる。やらされるのではなく、各々がそれぞ れのテーマに夢中になってくるとしめたものだが。今の段階では皆、とても他人の発表内容に対してどうこう言う雰囲気にはなっていないが、各自がテーマを深めていけば、必ず共通項が生じてくるはずだ。6人の学生プラス私で緊張感のある時間にしたいものだ。



1999年10月19日(火)

「比較行政研究」(大学院)

 一地域の問題を論じる際でも、歴史的背景、他地域との関係、ひいては他国との関係を視野に入れなければならないし、入れざるを得ないということを指摘したかったのだが、研究の方法論というには説得力に欠けていたかもしれない。
 先週から今週の前半までスケジュールがきつかったこともあって、やや不完全燃焼で終わってしまった。 大学院の講義自体、これでまだ2回なので、試行錯誤しつつ進めていくしかないだろう。



1999年10月25日(月)

「現代政治の理論と実際」

 今日取り上げたテーマは日産自動車の「リバイバルプラン」。驚いたことに日産自動車のホームページに最高執行責任者のゴーン氏によるプレゼンテーションの中身が掲載されており、しかもその際にスクリーンに映し出した50枚ほどの図表などがPDFでそのまま開くことができる。新聞等の記事のもととなったものがインターネットを用いると即手に入るのである。これと産経新聞の関連記事、共産党の見解、通産大臣の会見、さらにはリアルプレーヤーを用いた日経の解説を提示した。いやはやすごい時代になったものだ。

「地方行政論」

 日本最北端の市町村を見てみようと、北海道稚内市のホームページを紹介する。
一見無味乾燥な印象を受ける市の施設一覧の中に、図書館や小中学校など魅力的なホームページがあり、 他に交通アクセスの箇所などを紹介した。もちろん「現場主義」の立場からはこうしたホームページは表層 的なものに過ぎないかもしれないが、それでも僅か13名の生徒と同じく13名のスタッフが支える小中学 校のページからは、生徒たちの息遣いが聞こえてくるようで楽しい。来週には具体的な課題を提示したいが、 学生はどこまで乗ってくるだろうか。

「行政学演習B」

 情報交換の有用な手段となる電子メールでのメーリングリストを学生がほとんど使っていないのには驚 いたが、ジョイント合宿に向けた自主的な勉強も序々に起動に乗ってきたようだ。
やはり、学生同士の付き合いも国際学部内で終わるのではなく、他大学の異なる学部・学科の学 生の考え方・雰囲気に接するのは貴重な経験になると思う。ジョイント合宿まで1ヶ月ちょっと、良い意味 での緊張感・危機感を持って勉強を積み重ねてほしい。

「卒論指導」

 そろそろ本気になってもらないと困る時期になった。いきなり書き出すのではなく、目次・章立てが建 築物の骨格に相当するので、おおいに悩んでほしい。資料収集も現段階では手探りかもしれないが、ある程度広く網をかけておくような姿勢でいれば、必ずこれはといった資料を得ることができるはずだ。こちらも 6人の各々のテーマについての勉強をするつもりで、アドバイスを提供できたらと思う。

 


10月の主な研究活動(研究室でIT情報の精読と把握)

 2002年Wカップ日韓共催について、日本組織委員会(JAOWC)のホームページを対象にした検討がここ2 週間ばかり続いている。開催地自治体へのインタビュにしてもここを押さえておかなければ話しにならない。 それにしてもJAWOCは開き直ったかのように情報を公開している。記者会見の内容も居ながらにして把握することができる。この巨大イベントは政、官、財の既得権益構造をますます強固なものにするのではないか。
 しかし、逆にこのトライアングルの構造世界の抜きにして開催が可能かと問われれば、答えに窮するこ とも事実であろう。