2001年4月 中村祐司の教育日誌
01/04/16.Mon.
行政学概論
あっという間に新年度の講義が始まる時期がやってきた。確かに年数を増すごとに慣れてくるし、進め方の要領も何となく分かってはくる。しかし、それでも最初は緊張するものだ。2、3月の間に前期の授業の下準備を全部終わらせてしまおう、などと考えていたが、実際はほとんど手付かず。毎年のことだが自転車操業でやるしかない。
国際学部の専門科目となってはいるものの、教育学部と農学部の学生に対しても受講を認めているせいか、70名近く入る教室がちょうどいっぱいになった。昨年、適当な教室の確保に苦しんだので予め事務に希望を出しておいたのがよかった。この建物は冷房の設定も時期を選ばすにできるのでその点が心強い。
使用するテキストが全面改訂され数日前に刷り上ったとのことで、先週は使うことができなかった。少しでも進んでおきたかったので、旧テキストの1章を板書しながら説明する。それから今年度は新しい教科書をもう一冊用いることにしたのでそれも紹介。受講生にとってはやや金銭的負担となるが、その分、教える側としては講義の密度を濃いものにしていかなければならない。
来週は『行政学』(テキスト)の第2章と『公共を支える民』(サブテキスト)のプロローグ。あと、本日やりきれなかった補足メモも簡単に説明したい。
行政学演習A
思い切って予め場所を、研究室の向かいの資料室としておいてよかった。9名ほどのちょうどいい人数がそろった。一人一人の自己紹介を聞いても各自がやりたいことをかなり明確に持っていて、これならば来週以降、人数が激変することはないだろうと確信した。4年生2名と院生が就職活動のピークで忙しい中、顔を出してくれて、新ゼミ生にアドバイスをしてくれた。その話を聞いていて、それぞれがここ数ヶ月現実社会の荒波にもまれているせいか、言うことに説得力があると感心した。あと、1、2週間で多少の出入りがあるのは仕方ないだろうが、いずれにしても今日、ゼミがスタートした。数ヶ月後にゼミとして何を発信しているだろうか。
来週はとりあえず、各自がやりたいテーマとの関係で1府12省庁のうちどれかを選んでもらう。また、連休明けから少しずつでも毎週毎週の結果をホームページに残せていけたらと考えている。
卒論指導
7名の卒論生のうち、出席は3名。欠席者1名はその旨メールで連絡をもらったものの、残念なことに3名は音沙汰なし。出席した3名に文句を言っても仕方ないと分かりつつ、つい愚痴めいた説教でスタートを切ることになった。忙しく大変な時期なのは分かる。しかし、発表にあたっている者は事前にメールでレジメを送付することはできるはずだし、発表でなくても欠席の連絡を一言ほしい。誰もが他にやることを多く抱えているのだといった旨を話した。
夏休みまで、月曜の午後4時にはできるだけ顔を合わせたい。できる範囲でのレジメを作成してきて、それを少しでも蓄積していくことが必ず生きてくる。内容がどうであろうとレジメは研究室のホームページに載せていくことになる。ホームページに掲載するというタイムリミットを卒論作成の推進力として生かしてほしいと願うからだ。
01/04/18.Weds.
インターネットと政府情報(初期セミナー)
今年度から初期セミナーの開講コマ数が増えたせいか、受講者は僅か6名。高校時代のインターネット体験、過去の政府情報で印象に残っていること、レポートのテーマを今決めるとしては何にするか、という質問に答えてもらう形で一人一人の名前を覚える。インターネット情報を積極的に利用することの意義について説明した。少人数なので全員で厳しく、それでいて和気藹々に楽しくやっていきたい。「講義メモ」として用意していた部分をやりきれなかったため、来週はここから。
余暇政策論
社会学科、文化学科と半々ずつぐらいで30名弱ほどの受講生を前にこの講義のねらいと特徴について説明する。顔見知りは3分の1ぐらいか。主として3年生だが、入学以来、初めて見る顔が多くて驚いた。説明の過程で研究室ホームページを利用できる便利さをあらためて感じた。レポートの中身はテキスト中心でいくことなどを強調した。あまり受講生の出入りがない形でこの程度の規模で進んでいけたらいいと思う。来週はノート作成例についてもう少し丁寧に説明したい。
01/04/23. Mon.
行政学概論
『行政学』が新版になった関係で、レジメも講義に合わせて直していかなければならない。職能国家の具体例について自分なりに考えて説明すると、今度はなぜ「職能」なのかという質問が出た。学生の質問には素朴ながら、なるほどと思わせるものが多い。虚をつかれた感じだ。後で「広辞苑」を引いてみると、「@職業・職務上の能力 A職業によって異なる固有の機能 Bそのもの固有の機能」とあり、どうもしっくりこない。
また、別の国語辞典では、「@職務を遂行する能力 A各職業がもつ固有の働き Bものの働き。ある物事の機構の中で果たす役割」とある。どうやら「職能」という言葉自体にはサービス等が拡大する意味はないようだ。こじつけに近いかもしれないが、国家機能、国家という固有の働きが拡大したような国家像と捉えるしかないように思われる。ちなみに英語ではprofessional (occupational) abilityやfunctionとある。いずれにしても国家機能の拡大という意味合いで職能(機能が拡大した)国家として捉えるしかなさそうだ。
今日はテキスト(『行政学』)1章の補足と2章のポイント、そしてサブテキスト(『公共を支える民』)のプロローグ「二つの公共性と官、そして民」の内容を説明。僅かながら前回よりも受講生が減少したように思えた。引き止める強制力はないので、自分にできることとしては講義の中身を充実させていくしかないだろう。来週は連休のためなし。再来週、テキスト3章とサブテキスト6章「清掃行政と公民協働」の前半をやるので予習しておくようにと述べた。
行政学演習A
先週、とりあえず、自分の関心のある政策テーマを中央省庁と関連づける形で提示してほしいという注文をつけたため、これに関して一人ずつ述べてもらう。自分のねらいとしては、各自がそれぞれにレポートを書くにしても、たとえ緩やかな形であろうと共通の見解というか、何か共同作業のようなものを皆で協力し合ってやってほしいというのがある。ゼミ生共同による達成感が大切なのだ。
今年度の演習生は各自のやりたいことをかなり明白に持っているようで頼もしい。人数も12,3名になりそうで、資料室の大きさからいってもちょうどいい。ゼミ長、副ゼミ長も押し付けではなく、自主的に手を挙げてくれうれしかった。いずれにしても急に欲張り過ぎずに、連休明けから本格的にゼミの活発化と充実に向けて後押ししていきたい。
確かに迷いはあるものの、毎週の成果をどんどんホームページに掲載していった方がゼミ生にとっては励みにもなるし、週単位で締め切りを設定することで力も付くのではいかと考えるようになった。再来週は各自が1枚程度、htmlでレジメを切ってくる課題を出した。発表にはプロジェクターを用いる予定だ。内容はばらばらでも何とかそれを統合させる作業をゼミ生自身にやらせようと思う。
卒論指導
5名が集まった。意外なことに業種によってはまだ本格的な就職活動が展開されていない分野もあるとのこと。こうなると卒論性7名の就職活動も全体としては長期戦になるような感じを受けた。欠席者からは事前にメールをもらい、具体的な就職活動の中身についての報告もあった。手助けといっても具体的には推薦状を書くぐらいしかできないものの、音沙汰がないのとは大違いで、近況を知るとこちらも何となく安心する。
レジメをそのつど公表していくというスタイルは卒論完成まで貫いていきたい。今のところは卒論生も手探りだろうが、結局はこうした積み重ねが良質な卒論につながっていくのではないか。次回は3名が発表の予定ではあるものの、そのうち1名は今日の時点で欠席が分かっているとのこと。事前にレジメを送付してもらうことでカバーしていきたい。
01/04/24. Tue.
修論指導
2名の修論作成に向けて本日からスタート。院生に対しては、どうしても研究に対する自分の思い込みのようなものをぶつけてしまうのは避けられないだろう。7月4日か6日が中間発表なので、とりあえずそこを目標に、資料収集と読込み、目次の作成、出だしの章の書き出しぐらいまでいってほしい。同僚が大学院の会議で、中間発表が決意表明のようなものでは意味がないと言っていたが、確かにその通りだと思う。あれをやります、これをやりますというのと、実際に論文を書くのとは、注がなければならないエネルギーは全く異なる。この修論指導において提出されたレジメはホームページに掲載していく。
01/04/25. Weds.
インターネットと政府情報(初期セミナー)
先週は用意した講義メモを使わなかったので、「ノート整理01」を表示して、html文書でのノートの取り方について自分なりのやり方を紹介する。ノートからそのままリンクできるなど大変便利である。人数は先週の計6名で安定しそうだ。出たり入ったりの受講生がいると大変やりにくいので、この調子だと助かる。後半はサッカーくじの概要についてまとめた「ノート整理02」を用いて説明。ノートの内容を理解させるというよりは、ホームページからのアドレスの貼り付けや、自分の文章や問題意識と引用とを峻別することの大切さなどを強調した。「野口悠紀雄online」もぜひ利用するようにとアドバイスした。来週までにこの6名の中間発表の日程表を作成し、再来週の次ぐらいから受講生の発表をセミナーに取り入れるようにしていきたい。
余暇政策論
何と、前回から受講生が半減! まるで集団脱走されたかのようだ。しゃべり過ぎに嫌気がさしたのだろうか。それともレポートの作成が敬遠されたのか。ただし、今日から出席した受講生も数名いた。
イギリス文化省のホームページを用いて、「ノート整理02」を表示し、内容そのものというよりはノートの取り方を説明する。フォルダ名は年月別に、ファイル名は年月日を入れる形で作成しておくことの便利さなどを強調した。初期セミナーと同様に有用なリンク先も紹介した。来週に中間発表の日程を確定して、再来週の次から発表形式で進めていきたい。テキスト『公共を支える民』について、来週までに読んでおく箇所(第6章の1、2)を指摘するのを、ついうっかり忘れてしまった。講義終了後に一人の受講生から指摘されて気付いた。1週間ずれてしまうが仕方がない。