2000年10月の中村祐司教育日誌

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2000/10/31

<政治学>(作新学院大学非常勤)

  NHK特集が日曜に放送した「民族浄化-ユーゴ・情報戦の内幕」を鑑賞。

92年3月のボスニアヘルツエゴビナの独立との絡みで、アメリカに単独で訪問したボスニアの外務大臣に対して、米国務長官が、セルビア人によるイスラム系住民に対する迫害や残虐行為を止めさせるには、西側世界へのメディア戦略を展開せよとアドバイスを行う。アメリカのルーダーフィン(情報コンサルタント企業)社がこれを担当し、92年5月にボスニア外務大臣による記者会見が行われた。

ethnic cleansing=民族浄化 という言葉をルーダーフィン社は用いて、これをファックスで世界に向けて流すことにした。次にTVに働きかける。ボスニア外相のTV映りがよいこともこの動きを促進したという。記者会見を世界中で設定した。特に重視したのはアメリカの政権担当者がよく見る「ABCのナイトライン」。

同年6月には、ボスニア紛争の責任の大半はユーゴにあるとアメリカ国務省の見解が提示される。そしてユーゴに対する経済制裁がなされた。ホワイトハウスは当初、現地への介入には「アメリカは世界の警察官ではない」として慎重だった。そこでルーダーフィン社とボスニア外相は当時のブッシュ大統領へ働きかける。そしてブッシュから「私は民族浄化を強く非難します。セルビア孤立化政策を推し進めていきます。」という言質を取り付ける。セルビア大統領府は、 アメリカンドリームを体現した人物はユーゴ首相にし対抗メディア戦略をとるが失敗。しかしここにおいて「PR戦争が勃発した」ことになる。

 そんな折、ボスニア大統領府に、セルビアが強制収容所を作りイスラム系住民を押し込んでいおり、9万5,000人以上が強制収容されているという情報が入る。この強制収容に関する記事や写真がさまざまなメディアにのって世界に発信された。セルビア側は難民キャンプだと否定し、国連部隊司令官も強制収容所の存在に疑問の声を挙げたが、メディアからの激しい攻撃を受ける。

 同年8月のロンドン会議で、ミロシェビッチが協議に冷淡な態度を示し、ユーゴ首相の記者会見での態度も洗練されていなかった。一方、ボスニア外相の演出は巧みで、難民の親子を連れて傷口を見せることをさせた。ロンドン会議はセルビア軍のボスニアからの撤退を決議。

同年9月15日の国連総会において、ロシア、フランス、中国がユーゴに理解を示すものの、ユーゴの国連総会からの追放が圧倒的多数で決議された。ルーダーフィン社はその決定的要因となったアメリカ大統領による演説の草稿作りを担当し、「ボスニアには民主主義と複数民族が共存している」という演説がなされた。

オランダハーグにある国連の戦争犯罪法廷では93年から裁判が開始されている。97年になってイスラム側にも強制収容所がありセルビア人が入っていたという事実が明らかになった。「対立する双方を取材することが大切」「非難はすべての当事者に向けられるべき」という発言がメディアからも見られるようになった。

非人道的行為の実態はどのようなものだったのか。という問題提起をして番組は終了。

 メディアの情報に依存せざるを得ない中で非常に考えさせられる特集だった。余談だが作新の教務から来年は政治学を開講しないとの口頭連絡。ほっとしたような残念なような初めての経験。一方で宇大で職を得ていることのありがたさを実感。複数の大学での非常勤を生活の糧にしている人にとってはたまらないだろうと想像した。大学を取り巻く環境の厳しさの中で、まずこのような立場の弱い者が切られていくのだろうか。

<卒論指導>

 まだまだ粗い感じだが目次らしきものができあがってきた。各章の中身を充実・ふくらませていく見通しもついた。この1カ月でどれだけ質の高い資料を収集し、さらに問題意識を鋭いものしていくことができるかどうかだと思う。自分も勉強するつもりでやっていきたい。

<比較行政研究>(大学院)

 2名にあらかじめレジメを出してもらい、それを検討する。ホームページにレジメをそのまま掲載することで適度な緊張感が出るとのこと、よいことだと思う。年内にもう一回りして、3度目は論文形式でやってもいいなと思った。終了後、卒論生も加えて久しぶりにビールを飲みながら一緒に夕食。とても楽しかった。

2000/10/30

<現代政治の理論と実際>

 細野真宏『経済のニュースが面白いほどわかる本』(中経出版、2000年)を用いて、「小さな政府」と「大きな政府」について説明。後半は参院比例区の非拘束名簿式について解説。分かりやすく述べることを心がけたつもりだが、反応がないようでやや不安。

<地方行政論>

 地方制度の基礎と称して、浜島書店編集部『最新図説政経』(浜島書店、2000年)を用いて、国税や地方税、補助金の仕組み、直接請求制度などを説明。その後、レポート作成の際の留意点を紹介した。準備に時間をかけたつもりだったが、原稿の締め切りに切羽詰ったここ数日の疲れが一気に出たのか、ややぶっきらぼうな話し方になってしまった。ワールドカップキャンプ候補地に申請している自治体のうちのいくつかを選んでホームページを提示する。果たして受講生からはどんなテーマが飛び出してくるのだろうか。楽しみもある反面、編集作業を考えるとやや気が重いことも確かである。

<行政学演習A>

 各班の発表も3回目。だんだんと班の個性が出てきたなという感じ。足でかせいだ資料・情報にもとづく発表の方がやはり迫力がある。あと1カ月。どのようなレジメに仕上げてくれるだろうか。文章として提示することができるだろうか。ホームページに掲載することを考えるとその方がベターなように思われる。

2000/10/24

<政治学>(作新学院大学非常勤)

昨日放送のNHKスペシャル「世紀を超えて―テクノロジー―あくなき挑戦「インターネット公開技術の衝撃」をビデオ鑑賞。中国市場を舞台にパソコンのOSをめぐるリナックスとWindowsの綱引きが伝わってきた。「全ての業務をインターネット上に構築」しようとしている企業や、リナックスの技術公開が中国企業のプログラム作成を可能にしたことなどが紹介されていた。

確かにリナックスの創始者が言っていたように「プログラムは1万人が共同で作り上げることができる」ものなのだろう。

その他にも「中国市場を制することが世界を制す」など、IT技術開発の迫力が伝わってきた。まさ21世紀の新技術は「閉ざされた研究室」からではく「インターネットによる公開技術」から生まれてくることは間違いなさそうである。

<修士論文作成指導>(大学院)

 市町村合併を統計情報におけるデータ分析により評価するユニークな論文作成をめぐってアドバイス。行政研究に携わる者にとって合併問題を看過することはできないし、自分としても謙虚に学んでいきたい。

2000/10/23

<現代政治の理論と実際>

先週やったユーゴスラビア情勢について少し補足した後で、自民党のホームページから公共事業見直しの三党合意について取り上げる。民主党、共産党の公共事業に対する見解についてもピックアップ。続いて、『週刊ダイヤモンド』の記事も提示。

<地方行政論>

 景気対策のための減税と公共事業について、非常に分かりやすく書かれた書籍(細野真宏『経済のニュースが面白いほどわかる本(日本経済編)』中経出版)を用いて解説。1コマ目と同様『現代用語の基礎知識』と『週刊ダイヤモンド』の記事を取り上げる。

<行政学演習A>

 各班の発表の2回目。現場に行って話しを聞いて資料をもらってくることで、説明の迫力度が全然違うなと妙に関心した。図書館、NPO、市町村合併、市のイベントとしてのまつり。各々のテーマそのものと、ここから派生する問題をどんどん把握していってほしい。

2000/10/17

<政治学>(作新学院大学非常勤)

インターネットで収集した解説記事等をもとに、長野県知事選の結果について、何が読み取れるかについて考えられるところを説明した。後半は新聞という情報収集の手段が紙媒体から電子情報に変容しつつある事例を下野新聞の特集記事(ホームページ)から取り出し、受講生にどのように思うか質問した。

<卒論指導>

今日からいよいよレジメを積み重ねていく形で、卒論作成に向け具体的な成果を毎回明らかにしていくことになる。次々回ぐらいからはホームページにも掲載していけたらと考えている。

<比較行政研究>(大学院)

自分と受講生1人が各自の関心テーマについてレジメを作成し発表。レジメはホームページに掲載。残り2名の受講生も1年生であるが、この共同作業的な授業が各自の修士論文作成へのステップとなってほしいし、自分の研究の進展にもつなげたい。

2000/10/16

<現代政治の理論と実際>

ユーゴスラビア情勢について、最初に受講生に質問した上で、作新で用いた新聞記事に加えた資料も含めて説明した。コシュトニツァ政権の抱える諸課題について自分なりの整理を紹介。講義メモを受講生がアクセスできる配慮も示した。

<地方行政論>

時代的趨勢と捉えられる地方分権について、1993年以降の日本での動きについて解説し、地方分権推進委員会の中間報告総論の一部を読み取った。「行政」から受講生がイメージしがちな固さをほぐすことと、地方分権が内包する国際・国内社会システムの変革要素を理解してもらえればと考えた。

<行政学演習B>

今日からいよいよ12月初めのジョイント合宿に向け、本格的にレジメ作成に取りかかる。

4つのグループによって多少温度差はあったものの、「好発進」という感じでやや安心した。

文献の購読も不可欠だろうが、学生の特権でもあるフットワークの軽さを武器にどんどん現場に出

掛けていってヒアリングを重ねてほしい。

2000/10/10

<政治学>(作新学院大学非常勤)

新聞の切り抜きを用いて、ユーゴ情勢について整理。ミロシェビッチ政権の崩壊と同時に山積する問題も吹き出していることがよく分かった。新聞記事を深く読むことでこの国の状況を理解するための基礎的な知識がかなり得られる。

2000/10/04

<比較行政研究>(大学院)

受講生は3名。自分も加わり次回から4名で各自関心のあるテーマや論文についてレジメを切ってくることとする。レジメはホームページに掲載する予定。

2000/10/03

<政治学>(作新学院大学非常勤)

前2回にわたって、イギリスBBC放送の「絶望の淵で」を鑑賞。今日はボスニア紛争やコソボ紛争の背景を少しでも理解しようと「エンカルタ百科地球儀」」用いて、ユーゴスラビアの地勢について説明した。

2000/10/02

<現代政治の理論と実際>

本日から後期授業の開始。受講生が予想外に多く驚く。介護保険料の基本的な枠組みについて、新聞記事を用いて話をした。12月にHTMLでのレポート提出を課すことになるが、これだけの人数で大丈夫だろうか。

<地方行政論>

補助金と地方交付税を取り上げて、新聞記事からこの制度が抱える問題点について話をする。最初の講義のせいか自然と力が入ってしまった。「現代政治の理論と実際」の講義と同様、初めて「パワーポイント」というソフトを使ってみたがなかなか便利だ。ただし、見栄えがいいだけに中身が空虚の場合でも一見ごまかされてしまいそうだ。

<行政学演習B>

12月初めのジョイント合宿に向けて本日からスタート。4つのテーマのどれを担当するか10名に決めてもらう。タイトルの設定等割とスムーズに進む。後は各担当者の意欲次第だ。

4名からなる一グループの除いて3つのグループが各2名ずつ。若干心細い感じがするが、責任感が強くなることで質の高いレジメになることが期待できる。

<卒論指導>

今日からティーチングアシスタントとして院生にも加わってもらう。公共事業、水(特に飲料水)の問題が修論、卒論のテーマとなる。ノート(カード)の作り方、資料のあたり方など自分の経験から得た点について話す。論文の作成は「単座の飛行機」を操縦するようなものだ。あくまでもこちらは手助け役。

         

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