2004716日

 

年金法改正案ならびに社会保険税導入に関する法律案

 

 

 

宇都宮大学国際学部中村祐司研究室 行政学演習履修生

国際学部国際社会学科    阿部 真弓

 国際学部国際社会学科    鮎ヶ瀬 琢子

 国際学部国際文化学科    佐々木 大輔

国際学部国際社会学科    豊田 浩司

国際学部国際社会学科    長谷川 遥

国際学部国際社会学科    水粉 孝慎

国際学部国際社会学科    渡邊 陽子

 

 

 

年金法改正案ならびに社会保険税導入に関する法律案

 

 

 

骨子

 

 

現在の年金制度を抜本的に改革し、信頼できる制度の構成

 

          公的年金制度の一元化

          保険料制の廃止、社会保険税の導入

          給付方法「最低給付年金」「所得比例年金」

          社会保険庁に代わる新たな「独立行政法人」の設立

          消費税を9%に値上げ その増税分を財源に

          積立金の運用

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2004年7月16日

宇都宮大学国際学部中村祐司研究室3年 年金法改正案ならびに社会保険税導入に関する法律案


目次
 第一章 総則
 第二章 年金制度改革ならびに社会保険制度の概要
 第三章 給付制度
 第四章 制度改革

第一章              総則

(理念)

この法律案は、今年改正された年金制度に対し、不明な点を改良、また抜本的改革をすることによって、わかりやすく、且つ確実に給付の保障があり、国民全体が信頼できるような年金制度を打ち出し、国民が安心して暮らしていけるような社会を目指すものとする。

 

年金制度改革は、公的年金制度が高齢者等のための社会保険制度の基礎となるものであり、且つ、高齢者等の文化的な生活を維持するために、重要な役割を果たすものである。また、現在、問題となっている給付と負担の適切な水準、世代間の不公平、積立金運用問題、社会保険庁抜本的改革などの、制度自体の改正によって、国民にとって持続可能で信頼のできる制度を作成することを目的とする。

また、現在の複雑な社会保険制度は、制度上の非効率や重複をもたらしている。公的年金制度と同時に社会保険制度を改正することによって、国民にとってわかりやすく、安定し信頼のおける制度を創設することを理念とする。

 

(基本方針)
T 公的年金制度は、国民から納付された社会保険税を主たる原資とし、その不足分を消費税や積立金によって賄い、給付を行う仕組みを原則とすること。また、それに伴い、現在ある社会保険料(公的年金保険料、健康保険料、介護保険料)制を廃止とする。

U 現在の職種によって分類される公的年金制度(厚生年金、共済年金など)は廃止とし、すべて「一元化」する。その際、議員年金も廃止とする。

V 公的年金制度が持続可能に運営され、高齢者等の生活の安定に貢献するものとなるようにすること。

 

W 社会保険制度における給付と負担の関係が明確になり、世代間の不公平が解消されること。
 

第二章 年金制度改革ならびに社会保険制度の概要

(社会保険制度)

T 社会保険制度は、すべての国民に対する義務であり、すべての国民が世代にかかわらず、相互扶助することを目的とする。

U 社会保険制度における公的年金制度は、すべての国民が、所得又は報酬に応じて社会保険税を収め、所得比例年金(社会保険税の納付額に比例する額の年金)及び、最低給付年金(所得比例年金の受給額が一定額に満たない場合においてこれを補足するための年金)の給付を受ける制度である。
*参考 民主党案

 

V 社会保険事業は、独立行政法人化した新たな機関を設け、その機関が運営するものとする。

W 社会保険の被保険者は、日本国内に住所を有する二十歳以上のすべての者及び二十歳未満の者であって所得があるものとする。

X 「社会保険税」を導入し、現在、源泉徴収されている公的年金、医療保険、介護保険などの社会保険料を一元化、特定財源化し、徴収することとする。また、社会保険税のうち三分の二を被保険者、三分の一を事業者負担とする。

 

 

第三章 給付制度

 

(最低給付年金)
 最低給付年金とは、高齢者等が生活の基本的な部分に必要な費用を賄うことができる額を限度とし、所得比例年金の給付額に応じて減額するものとする。 *参考 民主党案

 

 

(老齢年金)

老齢年金は、60歳に達したときに給付を受けられるものとする。ただし、60歳以上であっても職を持ち、予定される給付額以上の収入のあるものは給付を受けられない。また、「最低給付年金」は所得比例年金の額に応じて減額されるものとする。

 

(傷害年金)

傷害年金は、障害を負った等級に応じて、「最低給付年金」と併せて「障害に応じた額」が給付される。尚、障害を負う以前、以後にもかかわらず職を持ち、所得比例年金の受給資格のあるものは、それも同時に受け取れるものとする。また、職を得て、予定される給付額以上の収入の見込みのあるものは、「最低給付年金」部分の給付を中断する。

 

(遺族年金)

遺族年金は、原則的に対象者が職を見つけるまでの一時的なものとする。

成人していない、又は就学する子を持ち、職を持つ保護者が亡くなったとき、もしくは生活を支える者が亡くなったときに扶養するものが誰もいない場合に給付されるものとする。給付額は、成人していない又は就学する子を持つ家族は(「最低給付年金」×家族数)が保護者に支払われることとする。尚、子が給付額を上回るだけの収入を得る職に就いたときには、その子に対する給付は終了とし、保護者の場合もこの場合と同じくする。

 

尚、予定される給付額に満たないだけの収入を得ている者は、その不足分のみ給付される。

 

各年度における社会保険費給付に要する費用の総額は、原則として社会保険税及び消費税、いままでの年金積立金から賄うものとする。

 

(夫婦による所得比例年金の分割)

所得比例年金の給付額の算定に際しては、婚姻していた期間において納付された社会保険税については、被保険者とその配偶者である被保険者が当該期間において納付した社会保険税の合計額の二分の一に相当する額をそれぞれが納付したものとみなすものとする。 *参考 政府案

(積立金の運用)
 積立金は、給付額が徴収額を上回った時に、それを切り崩して使用する。また、資金の運営は、長期安定型の株運用や債権投資を中心に行い、現在年金投資によって赤字経営となっている施設は売却または再建、事業転換を行うこと。

 

第四章 制度改革

 

T 社会保険税の確実な徴収及び公的年金の適切な給付を確保するため、納税の義務のあるものに対し

て納税番号を与え、被保険者の所得等の把握に利用することとする。

U 社会保険庁を廃止することでその役割を撤廃し、社会保険制度の効率的な運営を行うため、新たに社会保険制度における管理・給付・運営を行う機関を独立行政法人として導入すること。

V 社会保険の給付の財源に充てるため、消費税の段階的引き上げを行い、最終的に消費税率は9%としてそのうち4%を社会保険の財源とすること。

W 公的年金制度の被保険者が、その社会保険税の納付の実績、所得比例年金の受給額の見通し等を確認することができるポイント制を導入すること。

 

X 社会保険制度の将来にわたる収入の見通し、年金給付額の見通し、年金の財政収支の現状及び見通しを2年毎に行い、50年先までの見積もり、関係する省庁の広報やサイト、マスコミ・プレスなどを通じ公表すること。

Y 国会議員が年金に対するさらなる理解を深め、これからの年金制度等に関して活発な調査、議論を行うために両議院に年金制度調査会を設置すること。