2001年10月 中村祐司の教育日誌
01/10/01.Mon.
現代政治の理論と実際
すっかり秋の気配が漂い始めた。後期スタートの最初の授業。思いの外、受講生が多くて驚いた。出席カードをみると受講生の学部も4学部にまたがっている。イメージラボを利用する理由と、研究室ホームページからの「発信」型の授業スタイルをとるということについて説明。「消化」型の授業内容にはしたくない旨も強調した。米同時多発テロ事件について一言聞くと、歴史的経緯、アメリカ市民社会の受け止め方、日本がとるべき行動など皆それぞれが重く受け止めていることが伝わってきた。受講生の世代にとっても相当にショッキングな事件であったことが窺われた。受講生の一言を受けて急遽、次回は今回の事件に関してインターネットから何らかの情報を集めて、1枚にまとめ2〜3分程度でそれを紹介してもらうことにした。事前にレジメを準備しておいたが紹介する時間がなくなってしまったが、まあ、それはそれでいいだろうと思わせるような初日だった。
地方自治論
前の時間にも感じたことだが、授業内容やレポートのホームページ掲載があるために、それを紹介することで、授業の進め方など導入部分の説明が大変やり易い。研究室ホームページの存在を知っている受講生はほとんどいなかったものの、あまりがっかりした思いがしなかったのはなぜだろうか。先日、NHKのドキュメンタリー番組で高齢者(とはいっても皆生き生きしていた)が起業にチャレンジする姿を紹介しており、その中で釣り情報のホームページを作成し、資金的にもぎりぎりの3年目に成功をおさめた人が、「3年間はやってみないと分からない」と言っていた。その話の内容が印象に残っていたのと、とにかくこれから受講生には大いにこのホームページを見て刺激になればいいという思いがあったせいだろう。ややアットホームな雰囲気を感じたのは、前期に行政学概論をとった受講生が何人かいたせいかもしれないし、自分が属する学部の受講生で占められていたからかもしれない。次回までに地方分権推進委員会中間報告の第1章総論を読んでくるようにいう。
行政学演習B
本日から12月のジョイント合宿に向けた勉強会と幹事校としてもろもろの雑務処理がスタートした。後期のゼミのメンバーはほとんどが前期からの継続者。他大学では9月中旬あたりから後期が始まっていると思うので、これから2カ月、このゼミではぜひチームワークを発揮して、短期集中型で両方に目配りしながら取り組んでもらいたい。毎週の発表ノートをホームページに掲載していくスタイルは前期と同じ。
卒論指導
こちらもこれから2カ月あまりが正念場。残念ながら、就職の内定式等で参加は半分程度。発表日程についてもホームページに掲載していなかったこともあり、まず日程表の作成から始める。次回以降は全員体制を望む。毎回の発表の充実なくして卒論内容の充実はないだろう。ここでも毎回、各自のノートをホームページに掲載していくことにする。前期以来の1日フルの教育活動でさすがに頭の疲労を感じた。
01/10/03.Wed.
比較政策研究(大学院)
僅か1名の受講希望者が研究室に。やはり国際学研究科の院生にとって「比較政策研究」というのはやや遠い存在か。本人の今後の研究計画や興味関心など話し合った結果、民族問題を取り扱うこととし、まずは米同時多発テロとの関連でアフガニスタンについて学んでいこうということになった。英文のレジメを作成してもらい、これをホームページに掲載していく。自分も可能な範囲で調べていきたい。考えてみれば、学部も大学院も卒論指導も修論指導もここ1,2年で完全に「発信型」の内容に移行しつつある。
01/10/09.Tues.
修論指導
大学院も2名が修論作成に向けて待ったなしの時期に入ってきた。自分にとってはもう15年程前の経験だが、日暮れの早まりとともに当時、独特な重いプレッシャーを感じたことを思い出す。自分としてもできる限りのアドバイスをしていくつもりだが、最終的には書き手自身の意欲というか意地みたいなものが論文の質に直結していく。論文作成は共同執筆でない限り、まさに「単座の飛行機」という感じで、頼れるものは自分自身のみである。自己の論文作成も含めて、孤独感と達成感のいくつもの循環を完成に至るまでこれから3名で共有していけたらと思う。
01/10/15.Mon.
現代政治の理論と実際
前回の出席者17名が7名に。必修科目ではないので選択は受講生の自由だが、最初の時間にレポート作成について説明したことで敬遠されたとしたら情けない。他の同僚ともたまにぐちをこぼし合うのだが、講義に出たり出なかったりというのが、教える側としては一番やりにくいし、毎回出席する受講生にも迷惑だと思う。いずれにしても今日の7名でぜひこの講義を充実したものにしていきたい。今日は今日始めての2名を除き、米同時多発テロについて1名3分程度で簡単なプレゼン(の練習?)をしてもらう。いずれもそれなりに自分で調べて、準備してきていたことがうれしかった。やはりこれからは学生にとっても講義に積極的に参加する姿勢が求められるのではないだろうか。来週も同じように用意してきてもらったものを発表(できればhtml文書化したフロッピーファイルで)してもらうこととする。できれば来月以降は、受講生の発表ノートを掲載していきたいと思う。
地方自治論
受講生を数えた訳ではないが、この授業も前回より減ってしまったようだ。今日は地方分権推進委員会の中間報告の総論を理解することを目的にした。当初、地方分権といわれても受講生にとってはつかみどころがないという印象を持ったと思うが、これを読んで少しは理解できたという声が聞けてほっとした。機関委任事務などの行政用語を、具体例を挙げて分かりやすく説明したつもりだったが、正直なところ、広範囲に浸透していたこの事務サービスの実態について本当は自分も分かっていないのでは、という思いを改めて強くした。ひとくちに言えば、地方自治体というものが受講生の多くにとって身近な存在ではないのである。このあたりのところを、どのように講義を通じてクリアしていけばいいのか、しばらくの間、試行錯誤が続きそうだ。次回までにテキスト『公共を支える民』第1章の1,2,3まで読んでくるようにいう。
行政学演習B
前回から今日までの間に、ジョイント合宿に関する実務面での仕事がいろいろと入ってきたようだ。勉強会は30分程度で、残りの時間は準備のスケジュールその他の打ち合わせに費やされた。3年生の間でのやりとりを聞いていて残念に思ったのは、この場で昨年ジョイントに参加した4年生がいればいいのに、ということだった。今日の演習では自分だけが参加経験者なので、記憶をたどりながら何度か説明したのだが、どうしても教員の立場からの経験を話すことになり、運営主体側の学生からの視点との間で微妙にずれる部分が出てきてしまう。このあたり、来週以降、4年生の一部でもいいから参加してアドバイスしてもらえれば大変ありがたい。考えてみれば、昨年のジョイント2日目の夜にコンパが開始される直前、4年生と院生との間で真剣に話し合った末、宇大が幹事校を引き受け、新しく入ってくる3年生を助け支えながらやっていこうと決めたのだ。学年に関係なくこの研究室のチームワークが問われている。
卒論指導
卒論生全員7名が揃ったのは4月以来、初めてのことではないか。これから卒論の完成に至るまで毎週、このように全員参加で進んでいきたい。各自が自分の卒論作成に最大限の知力を注ぐのは当然だとしても、他者の卒論作成に対してもお互いに刺激し合うと同時に意見を出し合っていくようにしたい。来春以降の進路など、この研究室の卒論生一人一人を取り巻く状況は様々
であろうが、各々のできる範囲でベストを尽くすことが肝要だ。
01/10/22.Mon.
現代政治の理論と実際
先週と比べて各受講生の「ミニ報告内容」が格段にレベルアップしたのが感じられ、大変うれしかった。むしろ低学年の方がインターネット情報の選択的取得をスムーズに行っているのではとさえ感じた。米同時多発テロというテーマをめぐる情報があふれていることも、受講生が取り掛かりやすい要因かもしれない。来週、html形式でノートを作成してきてもらうことにした。これがうまくいけば、再来週からホームページに掲載可能となる。
地方自治論
『公共を支える民』の第1章の1,2,3を扱う。前回、分権委員会の中間報告内容を把握したせいか、おおむね受講生の理解はなされているように思われた。後半は、これだけは押さえておきたいということで、「地方自治の基礎知識」と称して高校政経の資料集や改正後の地方自治法を使った説明を行った。受講生には来週もう一回辛抱してもらってこのような形態で続け、再来週あたりからレポート作成要領やテーマ例、ノート掲載(現段階では新しい試みとしてノート内容が推測できるように各自のノート内容を示す標題を盛り込みたいと考えている)の進め方などに入っていきたい。来週は『公共を支える民』同章の残りの部分と「基礎知識」の後半。
行政学演習B
2グループによる発表。まだまだ手探りという感じだが、今の段階ではテーマ設定そのものについてもあれこれ迷うことも大切だと思う。いずれにしても本番では2週毎の報告内容の積み重ねがそのままさらけ出されることとなるので、ぜひ毎回の発表を大切にしてほしい。ジョイント幹事校としての実務も来週あたりから本格化するとのこと。4年生の協力を得たり、ホームページ掲示板(今のところすごく良い感じで進めてもらっている)をフルに活用したりして、ぜひチームワークを発揮してほしい。その他、資料室の管理やメールでの連絡網、勉強主体の環境、演習日誌の継続、ウイルス対策などについてゼミ生に要請した。
卒論指導
各々の問題意識はかなり明確になってきている。これからは卒論作成において不安と自信が交錯する日々が続くかもしれないが、後者に力点を置いてこの有難い機会を飛躍に生かしてほしいと思う。卒論生からの強い要請と、ジョイント参加との絡みもあり研究室内締切を12月17日とせざるを得なくなった。例年の指導経験からこれ以上はもうずらせないという感じだ。
01/10/23.Tue.
比較政策研究(大学院)
都合により1名欠席となり、1対1でアフガニスタンの概況と歴史について勉強する。受講生は徹夜でレジメを作成してきたとのこと。研究室ホームページに掲載するということは、こうした受講生の努力に応えている面もあるのではと思った。次回は自分もまともなレジメを作成してこなければ。
修論指導
2名とも各々のスタイルで本格的な修論作成に入った。あと数回の発表がそのまま修論の中身につながっていく。これからは、まさに読む側の能力(助言内容の良し悪しなど)がより一層の緊張感をもって問われてくる。この時間には自らの研究に向けるのと同様のエネルギーを注いでいかなければいけない。
01/10/29.Mon.
現代政治の理論と実際
米同時多発テロに関する受講生による発表を継続している。こちらが用意してきた分の説明の時間がなくなるくらい、受講生が一生懸命やってくれるのはいいことだと思う。日本の自衛隊の在り方や、世論など切り口はいくらでもある感じだ。次回からいよいよホームページに受講生の発表ノートを3回にわたって掲載していく。
地方自治論
『公共を支える民』の第1章の4、5、6を扱う。受講生との間で少しでも相互コミュニケーションを図ろうと質問するように心掛けている。テキストはこれからも読み続けていくので、ぜひ購入するようにしてほしい。「地方自治の基礎知識」の2回目。やや説明が乱暴だったかもしれないが、これでもって地方自治に関する高校資料集の把握はなされたこととした。来週はテキスト第3章の1〜3まで。また、レポートの作成・内容・提出についての注意事項を来週説明したい。
行政学演習B
早いもので、あと1カ月ちょっとでジョイントである。実務面は誠意を尽くせばよいのであって、寸分の狂いもなくというのは無理だろうし、そうすべきではないだろう。器(うつわ)が整っても肝心の発表内容が充実していなければ盛り上がりには欠けるだろう。このゼミにとっても時間のバランスは難しいだろうが、まずは充実したレジメを作成し、発表準備をしておくことが最優先されるべきだろう。そうすれば道は自ずから開けてくるのではないか。要するに宇大のジョイントに向けた勉強の真摯さが、そのまま他大学の参加者に伝わっていくのだろう。参加者が120名を超えるとのことで、正直なところプレッシャーを感じた。何と国際学部の学生の2学年分とまるまる2泊し、リードしていかなければならない。しかし、ゼミ生にとって、これだけの人数を率いていく経験はおいそれとは得られない貴重な経験となることも事実。発表面でも実務面でもエンジンがかかってきたようで頼もしい。今、ゼミ生に一番必要なのは「できる」という自信かもしれない。4年生2名とゼミOBが参加してくれて、昨年の経験を話してくれ、とても助かった。これから1ヵ月こういうことがもっともっとあった方がいい。
卒論指導
もちろん、各自が自分の卒論を完成させることが最重要視されるべきだが、7名皆で進んでいくというチームワークも大切だと思う。卒論指導は午前中に授業2コマをこなし、午後のゼミの後となるせいか、体力的にしんどいのは事実。昨年あたりまでは勢いで乗り切っていたのに、あくまでも学生との比較でいえば相対的に年をとったということか。研究室内卒論提出まであと1カ月半である。正確かどうか分からないが、「火事は最初の3分、選挙は最後の3分」(火事も選挙も1分だったか?)というようなことを聞いたことがある。卒論や修論については「最後の1カ月」が肝心だといえるのではないか。いずれにしてもこれからである。