2004年度公開講座「コミュニティ入門を振り返って」

 

中村祐司(担当教員)

 

 受講生は少数ではあったものの、3名の間で毎回活発な意見交換がなされた。社会人受講生の発言は、その土台が豊富な経験や実践活動にあるがゆえに常に迫力満点であった。その勢いに教員側が圧倒されることが多かった。このような濃密な情報交換と人間的交流が達成できるのが公開講座の醍醐味である。開講し続けることの意義を改めて再確認した。以下、6回に及んだ当講座についての「教育日誌」を掲載することで、コメントに代えたい。

 

第1回目(04/10/05. Tue.

若干2名ではあるが、その分、相互のコミュニケーションの密度が上がった。過去2年間の成果を振り返って、コミュニティについて自分が向き合うスタンスを説明した。受講生から、この講座に入った動機や今までのコミュニティ活動などについて話をしてもらった。いろいろと興味深い、議論の対象となる題材が出てきた。次回以降が大変楽しみである。

 

第2回目(04/10/12. Tue.

市内の自治会組織と身近な経験としての自治会サービスについて説明。受講生からの豊富で興味深い経験論にも耳を傾ける。合併については時間不足となってしまったものの、大まかな流れについてフォローした。地元や地域生活圏域について良いところ、誇れるところ、あるいは将来そうした可能性が見出されるところに注目し発掘していくことを心掛けると、日々の生活が楽しくなるであろうし、別の側面からも生きがいを感じ取ることもできそうである。

 

第3回目(04/10/19. Tue.

 県内の市町村合併の状況について、配布資料は多くなったものの、かいつまんだ説明をしながら、質問を受けたり、意見・情報交換を行ったりした。受講生の視点には素朴ながら鋭いものが多々あり、「こういった点を調べておかなければ」と気づかせてくれることが多い。県内合併状況は、いくつかの例を除けばまさに混沌としているといっていいのではないだろうか。次回は合併問題に関する具体的な処方箋について考えてみたい。

 

第4回目(04/10/26. Tue.

個々人がボランタリーな活動に従事する原動力は何なのかをめぐって、議論が盛りあがった。何のためにやるのかについては、最後は人間や社会をどう見るかという哲学的な部分や、生きがいをどのように追究するのかといった点を抜きには語れない。自分の価値観とやりたいことをコアに、たとえそのコアが現状では不確かで圧倒的な自信が持てないとしても、まずは自分の気持ちに正直に向き合うことが大切だ。次回は合併、市長選・知事選などを話題に、代表制の意義など、身近な生活レベルから論じ合うことにした。

 

第5回目(04/11/02. Tue.

知事選、市長選について、住民の目線から考察した。とくに公約をめぐってそれが住民の意識にどれほど浸透しているのか、あるいは公約をよりかみ砕いた形での説明なりPRなりが必要ではないかなど、多くの意見が出た。地方政府は住民生活をどの程度まで支えるべきものなのかなど、むしろ教員側がいろいろと考えさせられた。この講座も残すところあと1回。次回はまとめの意味も込めて、若干の話題提供資料を提示しつつも、ボランタリー活動を行う上での原点・原動力なようなものについて、再考してみたい。

 

第6回目(04/11/09. Tue.

今回が最終回。スポーツ活動と地域社会について話題提供する。その後、こども時代の遊びや身体運動、スポーツ活動の在り方や、生涯スポーツ活動の秘訣等について話し合う。これだけ活発なやりとりが続いた公開講座も珍しいのではないか。来年も時間帯の変更はあるものの、受講生数の多寡に関係なく何とか継続していきたい。今まで頭の中で簡単に片付けていたことを、受講生による実際的見地からの発言によって訂正していくという点だけに限っても、教員側が得るところ大である。