gen010115   各レポート内容をめぐる全体討議   司会 小島周一郎

青字は討議内容のメモ

赤斜体字は担当教員(中村祐司)による感想

各々のレポート内容は→こちらから

 

名前

テーマ

1

倉持 秀章

環境アセスメント法においての、名古屋市の動きと実態

 

自分たちの生活にどのように関わってくるのか考えてみたい。/この法律が成立した背景は?干潟に関わる反対の住民運動が起点に。

テーマをここまで絞り込んだのはよかったものの、名古屋市側の事業を進める言い分は何だったのか。事業反対に動いた市民団体や学会側の主張と、自分の考えとは完全に一致してしまっているのか

2

井上 智子

介護保健法はなぜ必要?

 

改めてこの法律の重要性が分かった。/財源はどうするのか?/賛成論の根拠は?ある程度国が提示する枠組み必要/反対論の根拠は若者の金銭的負担が大き過ぎるし、郵貯の活用もある。これからは低福祉の時代。今の制度では老人のいたわり過ぎ/今の日本の制度の基幹を作ったのは老人世代だから大切にすべき/しかし、今のままでは公務員の人件費に消えてしまう。受益者負担の考え必要では?/サービス提供の多様化必要/自己責任重視すべき。税金をとる必要なし。

「地域単位の制度で対応」していこうとするのが介護保険制度ではないのか。自分なりの問題意識をもとに論を展開していったのは良いが、この法律の実際の運用をめぐる問題点にも踏み込む必要があったのでは。

3

高久 雄 典

21世紀のスポーツの在り方について

 

高齢者スポーツについての考え方は?→施設設置や学校施設の利用/学校体育と高齢者スポーツとのつながりは?→学校週5日制完全実施の中で体育の時間減少や部活離れあり。週末にスポーツに親しんでもらおうという動きあり。

終始一貫して自分の経験や一住民の目線からの問題提起はよかった。しかし、「スポーツ離れ」の解決に「統合型地域スポーツクラブ」がどのような役割を果たすことができるのか、もっと具体論を提示する必要があったのでは。

4

増渕 悠子

加藤政変と森内閣の行く末

国会審議の慎重性欠けているのではないか/森内閣はそんなに悪いのか?日本の有権者の反応にも問題あり/国民の反応を見ない首相に問題あり/神の国発言は悪いのか/そもそも内閣の新しい方針が見えない/選挙における一票の格差を考えてみると、これが地方で強い自民党が政権を獲得する基盤となっている/政治家の資質に問題があるのではないか。これが投票率の低下につながっている。

最後の「考察」の内容に迫力がある。首相公選制も含めて国のリーダーを選出するしくみを変えることについてはどのような考えなのだろうか。ただ、「加藤氏らの取った行動」が結果として人々の政治離れを加速することになった側面もあるのでは。

5

山口 俊治

長野県知事田中康夫による新県政について

 

田中康夫不支持の理由として、前知事よりはいいと思うが発言内容が難し過ぎる/政策がなし。メディアを巧みに利用しているのでは/今、判断を下すのは早急過ぎるのでは

「住民の多様な声を効率的に集約した上で、公益性の高い事業を進める仕組み」の実現はどうすれば可能か。「動」の県政と「静」のそれを融合すべきだという主張は面白い。県を身近な存在として捉え、自分なりの視点で論点を随所に提示している。

6

福地 幸夫

揺れる思川開発事業

 

県の地下水に注目。ダムにはランニングコストが高くつく/ダムは50年ぐらいしかもたないというのは本当か?→ダムの底に泥がたまり効率悪くなるので長い目でみると便益なし。

当たった情報を簡潔に検討・整理したことが読み取れる。しかし、メディアによる批判的検討の紹介以外に、例えば、「緑のダム」についてもう少しその実現のための方策や課題を提示してもよかったのではないか。

7

南 史代

少年法改正に伴う人々の声と、少年法のこれから

「考えることから始めなければ、何も始まらないと思う。」ということを実践した好レポート。下線の部分の自分なりの思考の展開と「自分の意見」は読みごたえがある。法律制度の変容を無批判に受け入れてはいない点もよい。ただし、この問題を真剣に考え続けるための社会的環境を醸成する上での具体策にも言及してほしかった。

8

小島 周一郎

2000年栃木県知事選挙における県民の選択とこれからの県政

 

投票率50%に届いていないのはおかしい。よりましな候補者を選ぶという考えが大切なのでは/福田知事への期待度→前知事は官が民を見下す雰囲気があった。新知事はこのあたりを変えてくれるのではないか/今まで県政に興味はなかったが今回の選挙で少し認識が変わった。栃木に住んでよかったと思うようなことをやってほしい/これからの県政次第で有権者の関心出てくるのでは。

投票率の側面から今回の知事選について、無党派層の関心の低さを指摘し釘を刺している。データを加工してグラフ化するなどの工夫あり。「考察」には今後の地方自治の可能性を感じさせる重要な指摘がある好レポート。欲をいえば、例えば、県内市町村別の各候補得票数の分析などを行うと別の見解も出てきたかもしれない。

9

長田 元

環境税導入と環境会計の確立を目指して 環境保全のために

 

高温焼却でもダイオキシンの発生を防ぐ技術が今後は可能/高いガソリン税を課すと地方の交通不便なところはどうなるのか/環境税の負担は必要なことではないか。

テーマの絞り込みがいい。それでいて「自分の考え」以下では論を大きく展開し、循環経済や受益と負担、市場と国家との関係を考えさせる内容となっている好レポート。データの引用・整理にも無駄がない。ただし、環境保護を主張するNGOの中に市場のメカニズムを重視し、政府に先んじた制度設計を試みている団体が全くないと言い切れるのであろうか。

10

佐藤 信太郎

日本の国家財政は今後どうなる?

 

返済可能なのか→返済しようとする努力をしない限り破綻するのは確実/所得税増税、消費税廃止の意味は→消費税を上げれば景気悪化。所得の低い人の負担が増す/アメリカの財政再建の経験に学ぶならば所得税は減税すべきではないか/法人税を上げると企業活力がなくなるし、企業が国外に逃げ出すのではないか。

本当に「国家財政を危うくしてあるのは一部の人間だけ」なのであろうか。批判の対象となっている政治家を当選させているのは誰なのであろうか。ダイナミックな論理展開がなされているし、大変重要な問題提起をしている意欲あふれるレポート。しかし、考察の対象を広げ過ぎたために、個々の議論が雑になってしまったのが残念。

11

稲葉 禎徳

年金制度とその問題について

 

少子高齢化を考えると負担ピークの時期はいつか→2025年頃ではないか/2020年頃、制度がこのままでいいのか?/現役負担の縮減を図るべき/自分たちが将来しっかりもらえるように/年金制度は現状を考えると廃止すべきなのでは。自分で自分の資産を管理する方向に。

「年金の知識を正しいものにしたい」という出発点の問題意識はいい。しかし、制度紹介や一般的にいわれている年金問題の他に、もう少しテーマを絞って自分自身の考えを提示してほしかった。