030108gensei 現代政治の理論と実際 講義メモ 中村祐司作成
新聞報道からの抜粋→
朝日新聞朝刊2002年12月24日付
国際原子力機関(IAEA)は23日、北朝鮮が寧辺の核施設で、黒鉛実験炉に続いて核燃料棒製造工場と核燃料再処理施設でも封印を撤去したことを確認した。
朝日新聞朝刊2002年12月28日付
北朝鮮は27日、米朝枠組み合意で凍結されていた核関連施設の封印を撤去したことに関連し、北朝鮮に駐在していた国際原子力機関(IAEA)査察官を退去させることを決めた。///IAEAは北朝鮮に査察官を2人駐在させて核施設の監視をしてきたが、交代要員の赴任に伴って一時的に3人の査察官が現地に駐在、核施設に関する監視を強化する体制を取っていた。
「米国が武力行使を検討せざるを得ない最終局面を迎えるまで、北朝鮮はカードを1枚ずつ切る、と米政府は見る。核施設再稼動の宣言が1枚目とすれば、2枚目は封印撤去と監視カメラの妨害。3枚目はすでに始まった燃料棒の搬送だ。▼ただ、その3枚目を北朝鮮が完全に切れるかどうか、つまり実験炉の稼動に必要な約8000本の新しい燃料棒を北朝鮮が保有しているのかどうかは、はっきりしない。//////▼北朝鮮に残された最後のカードは、密封されている使用済み燃料棒の再処理作業だ。コンクリート製の貯蔵所を壊し、金属製の容器から燃料棒を取り出せば、核兵器に必要なプルトニウムの製造に直結する。この最も危険なカードを切ったときに、米国がどう動くか。93〜94年の核危機の時のように、寧辺のピンポイント空爆が検討される可能性も出てくる」
朝日新聞朝刊2002年12月30日付
「ミサイル輸出という北朝鮮の収入源を洋上で断ち、近隣諸国には経済関係の縮小を迫る。実現すれば北朝鮮は干上がり、すでに破綻をきたしはじめている経済が崩壊へと向かう。いわば『兵糧攻め』である」
朝日新聞朝刊2003年1月9日付
日米韓の北朝鮮問題に関する調整グループ会合(TCOG)が7日に共同声明を発表→
要旨の一部「6日にIAEA(国際原子力機関)理事会で採択された、北朝鮮に保障措置協定を順守するためのIAEAとの迅速かつ完全な協力を求めた決議に強力な支持を表明。///▼
3カ国の代表団は、北朝鮮の国際社会との関係が核兵器計画の検証可能な中止にかかっていることを改めて表明。00年6月の南北共同宣言に基づく南北対話と、日朝平壌宣言に基づく日朝対話を引き続き支持することを表明。////▼///3カ国の継続的で緊密な協議と協調が、この大変重大な問題に対処する上で依然として極めて重要であることを再確認。対北朝鮮政策を更に調整するため、近い将来、再度会合を開催する」
朝日新聞朝刊2003.年1月11日付
北朝鮮が1月10日、核不拡散条約(NPT。核保有国が米国、ロシア、英国、フランス、中国以外に増えることを抑えると同時に核物質の兵器転用防止をはかるためにつくられた条約。68年に米国、旧ソ連、英国の核保有3国などが調印、70年に発効した。日本は76年に加盟。非核保有国の核兵器製造、取得を禁止し、国際原子力機関(IAEA)による保障措置(核査察)を義務づける内容になっている)を脱退し、国際原子力機関(IAEA)との保障措置(核査察)協定の拘束から完全に脱することを宣言する声明を発表した。
北朝鮮の声明「NPTからの脱退は、わが国に対する米国の圧殺策動とそれに追従するIAEAの不当な行為への当然の自衛的措置である」「核兵器を製造する意思はなく、現段階での核活動は唯一、電力生産を始め平和目的に限られたもの」「米国が、われわれに対する敵視圧殺政策を放棄し核威嚇を中止するなら、われわれは核兵器を製造しないということを朝米間の別途の検証*を通じて証明して見せることもありうるだろう」
*「これまで繰り返し主張してきた『米朝不可侵条約締結』を要求せず、『敵視・核威嚇中止』を求めているにすぎない」
「日本政府は、中国やロシアを含めた関係国との話し合いには積極的だが、事態が安保理で正面から取り上げられることは避けたいというのが本音だ。拉致問題を抱えるだけでなく、核兵器による直接の脅威を受けることになる日本や韓国の意向が反映されにくくなるからだ」「北朝鮮側もハードルを下げたという見方も出来る」
「宣言では『米国は重油提供中断で米朝基本合意文を踏みにじった』と改めて指摘した。北朝鮮にとっては、NPT脱退は米朝合意により臨時停止しているだけ。合意が破棄されるなら、停止措置も危うくなるというのが、同国が訴える原則だった。北朝鮮は、今回の脱退で、『問題の所在』をさらに鮮明にしたと言える」
「ブッシュ政権がとり得る選択肢のひとつが、『過去の再確認』だ。▼93年6月の米朝共同声明は「武力行使をしない保証」や「相互の主権尊重と内政不干渉」が明記され、00年10月の共同コミュニケでは「双方の敵対的意思の放棄」も宣言している」
「IAEAは北朝鮮の2度目のNPTからの脱退表明を「核不拡散体制最大の危機」と受け止めている。北朝鮮は、NPT体制への復帰を訴えた6日の緊急理事会決議を強く非難した。///▼IAEAは、NPTが定める包括的保障措置(核査察)協定に基づき、NPT体制を監視・実行する唯一の機関だ。非核保有国と核査察協定を結び、すべての核物質を申告させ、核兵器への転用がないかをチェックする。▼このNPT体制の中で、核開発を続けてきたのがイラクと北朝鮮だ。▼イラクは湾岸戦争で核施設を破壊され、その後の査察で核物質を放棄させられた。現在は、NPT体制に従う姿勢を見せながら、米国の軍事行動を回避する姿勢だ。一方、北朝鮮は唯一、公然と核査察や不拡散体制を批判し、国際秩序に反旗を翻している。▼すでに核兵器保有が確実とみられているイスラエルや、核実験も強行したインド、パキスタンは、NPTに加盟しておらず、国際法上の責任は問えない」
「米政府は、北朝鮮問題の土俵を米朝2国間のレベルには据えず、国際社会に広げてきた。そこでの政策の主流は、あくまでも、平壌への圧力を強めるための日韓中ロの外交努力と、IAEAやNPT、国連安全保障理事会といった国際的な機構や条約の活用だった。////▼北朝鮮は、米国から現体制存続の保証を勝ち取りたい。脱退宣言は、北朝鮮が米国の国際化路線を断ち切り、核をてこに土俵を2国間に据え直そうとして投げ返した危険なボールだ。国際的な包囲網の構築か、2国間交渉に引き込むか、をめぐる駆け引きは、危険水域に入りつつある。▼/////北朝鮮は、対米交渉に傾斜しつつも、21日から予定される南北閣僚級会談で米韓の溝を広げようとするだろう。///▼北朝鮮問題は、危機のたびに交渉による合意や声明でそれを封じるという危機管理の繰り返しだ」