021202jichi 地方自治論 講義メモ(中村祐司作成)

 

1 国家政策における市町村合併の経緯

 

 (1)市町村数の減少

 明治初期約7万→1888年の市制町村制施行の直前の合併で約14,000に(栃木県:188812月末日現在で町109 村1,148に。明治の大合併。町村合併標準の規模を約300戸〜500戸に設定)→敗戦当時1万弱→1953年以来の合併(町村合併促進法「町村はおおむね8,000人以上の住民を有するのを標準とし・・・」。昭和の大合併。新制中学の建設、維持管理のための最小規模を想定)で3,300弱に減少。20007月現在、市671、町1991、村567の合計3229

 市町村合併特例法(1965年。10年間の時限立法)→その後75年、85年、95にそれぞれ有効期間の延長。

 1965年から30年間で145件の市町村合併(19651974年に125件、7585年に4件、8694年に16件の市町村合併。平成の大合併なるかという見方)。145件の分類→@政令市への移行を目指したものA都道府県庁所在市が周辺市町村との間で行ったものB広域市町村圏の中心市が周辺市町村との間で行ったものC市制施行を目指したもの D町村が規模の拡大を目指したもの(AとBが全体の7割)

 市671、町1,990、村568、計3,229994月現在):全国の面積の3割を占める市に7割の人口。市部の人口割合年々増加、町村部の人口割合年々減少。人口1万人未満の町村が全町村の6割。過疎市町村の数が1,199

過疎地域市町村の要件:abcのいずれか該当かつdに該当→a 1985年の国勢調査人口の1960年対比減少率(人口減少率)25%以上 b 人口減少率が20%以上で1985年の高齢者(65歳以上)人口の割合が16%以上 c人口減少率が20%以上で1985年の若年者(1529)人口の割合が16%以下 d 1986年度から1988年度までの財政力指数の平均値が0.44%以下(国勢調査の結果が公表されるごとに基準年更新)

 20024月現在で市675、町1,981、村562 の計3,218

 

 (2)24次地方制度調査会の答申

 24次地方制度調査会の答申「市町村の自主的な合併の推進に関する答申」(1994)が合併特例法改正の根拠。住民発議制度の創設、議員の定数及び在任の特例措置の見直し、財政措置市町村建設計画、地域特例法の特例措置

  都道府県関係:「合併の意義や手続、その効果等市町村の合併に関して十分な情報を提供していくべき」「関係市町村の合意形成のために重要な役割を果たすことが重要」「(国は)市町村の合併を支援するための都道府県の事業についても、必要な財政措置を講ずべき」「(国は)市町村建設計画については、必要に応じて、都道府県の事業を位置付けることができることとするとともに、都道府県が、合併関係市町村と、実態に即した調整を行うことができるような措置を講ずべきである。」

 

 (3)合併特例法の改正

  @「自主的な市町村の合併を推進する」旨の明示

  A住民発議制度:有権者の50分の1以上の署名で合併協議会設置請求

   「合併協議会の具体的な任務としては、合併市町村の建設に関する基本的な計画(市町村建設計画)の作成その他市町村の合併に関する協議を行うことであるが、ここでいう『その他市町村の合併に関する協議』については、まず、そもそも合併を行うべきか否かの協議合併するとすればその形式をどうするか(新設合併か編入合併か)、合併に伴って本法(95年の市町村特例合併法)に規定された特例を採用するか、合併関係市町村の職員の取扱い、合併市町村の事務所はどうするか等、法律上、事実上を問わず合併に伴って相互に協議することが適当であると考えられる事項はすべて、それが合併後の市町村経営ひいては市町村住民の福祉に影響を及ぼすものである限り、この合併協議会で協議し決定しておくことが望ましい。」(市町村合併研究会編『逐条解説市町村合併特例法』ぎょうせい、1997年、51頁。傍線、太字及び本法のかっこ内中村)

          注!合併協議会の規約例を自治省(当時)は用意

  B市町村建設計画の内容の付け加えと、計画作成・変更の際の都道府県知事への協議

   a. 合併市町村の建設の基本方針

   b. 合併市町村の建設の根幹となるべき事業に関する事項

          都道府県事業の位置付け     

   c. 公共的施設の統合整備に関する事項

   d. 合併市町村の財政計画

   「市町村建設計画は、合併の可否を最終的に判断する議会や住民に対し、合併市町村の客観的な姿を示すことによって、当該合併に関する正確な判断材料を供するという性格を有するものである。」(同、116頁。波線中村) 

  C議員の定数や在任に関する経過的な特例措置の期間の延長

  D地方交付税の算定に関する合併算定替えの適用期間の延長と、合併補正の導入

    E過疎債の特例措置

    F地方債の特例措置の事業に都道府県が行う事業を付け加え 

  G都道府県の市町村に対する助言・情報提供と、市町村の求めに応じた市町村相互間の調整

      「市町村や住民が自らの地域の問題として合併を考えていくという機運を、国及び都道府県が事前に盛り上げていくとともに、合併の意義やメリット合併を進めるに当たっての留意点、取り組むべき課題、合併市町村の建設の目標等について、適切な助言や情報提供を行うなどのソフト面での措置が有効である」(同、207頁)

 注!合併市町村:合併によりできた市町村のこと

   合併関係市町村:市町村の合併によりその区域の全部又は一部が合併市町村の区域の一部となる市町村のこと