<地方分権の流れをめぐる整理>

1. 地方分権推進法の成立

  衆参両院での地方分権推進決議(93.6.)

  地方6団体の意見書(94.9.)

  政府による地方分権大綱の決定(94.12.)

  地方分権推進法の可決・成立(95.5.15.):地方分権推進委員会の設置と地方                     

                     分権推進計画の策定

 

2.        分権委の諸勧告

中間報告「分権型社会の創造」(96.3.)

第1次勧告96.12.):

 地方自治体に対する国の関与=@通達行政(法令に基づく関与)

                ←機関委任事務制度による支え

 自治事務、法定受託事務(地方議会による検閲・検査、監査請求、調査証 

             言請求など可)。以下は先送り

               A補助金行政(資金交付に伴う関与)

               B必置規制(組織編制に対する関与)

第2次勧告97.7.):

 補助金の整理合理化、地方自治体の課税自主権の拡大(法定外普通税の許 

 可制廃止など)、地方債発行の許可制度の廃止、必置規制の緩和、市町村

 の自主的合併や広域行政の推進など。しかし具体的方針に欠ける。

第3次勧告97.9.

 地方事務官制度の廃止など

  第4次勧告97.10.

   561項目(都道府県379、市町村182)の機関委任事務の整理終了→自治

   事務と法定受託事務の割合は5545に。

   「国地方係争処理委員会」の設置

  地方分権推進計画98.5.)の閣議決定:これまでの勧告内容をほぼ踏襲

  第5次勧告98.11.):

   道路、河川、砂防、海岸、港湾、土地改良、治山の7つの公共事業につ

   いて、国の直轄事業と管理範囲の「一層の縮減を図る」。国庫補助事業を

   めぐる統合補助金の新設。しかし、不況対策優先の大合唱。

  地方分権一括法案第2次地方分権推進計画(公共事業関連)を閣議決定

                                (99.3.)

 

3.        地方分権一括法の成立(99.7.8.「地方分権の推進を図るための関係法律

の整備等に関する法律」(*改正対象となった475法律を1本の法律として一

括して取り扱った。)

 

<特に改正地方自治法について>

(1)        国の関与の在り方

     自治事務→  〇助言又は勧告 〇資料の提出の要求          

            〇協議 〇是正の要求(内閣総理大臣に加えて、各大臣

              が直接自治体に対しこれを要求でき、自治体がその要求に

              従うべきことも明文化)改正地方自治法第245条の5

 

     法定受託事務→〇助言又は勧告 〇資料の提出の要求 〇協議 

            〇同意 〇許可、認可又は承認 〇是正の指示 

            〇代執行

            (ただし裁判所における判断を経た後)*地方議会

            の条例制定権あり

            第1号法定受託事務(国から都道府県・市町村への法定受託

              事務)

            第2号法定受託事務(都道府県から市町村への法定受託

              事務)

 

 

   (法定受託事務の定義「国が本来果たすべき役割に係るものであっ 

    て、国においてその適正な処理を特に確保する必要のあるもの」

法定受託事務は地方自治体の事務なのに?)

 

   都道府県が国と並んで市町村に対する関与機関に(自治事務の場合

   は是正勧告、法定受託事務の場合は是正指示)。新設の第11章第1    

    節「普通地方公共団体に対する国又は都道府県の関与等」

 

(2)        地方議会の議員定数に人口段階に応じた上限設定

   人口減少にともない定数の法定上限を超えた場合には次の選挙での

   減少を義務付け。改正地方自治法第90

 

(3)        議案・修正動議の提出権を議員定数の8分の1から12分の1

 改正地方自治法第112条A、第115条の2

 

4.地方分権をめぐる3つの論点

(1)         機関委任事務全廃の意義

(2)         補助金行政、必置規制、都道府県と市町村との関係、地方行政体制の整備確立、

地方税財源の充実確保をめぐる具体性

(3)         「官官分権論議」と住民・地方自治体の自己決定権

 

5.改正地方自治法をめぐる3つの論点

(1)       法定受託事務を個々に把握

     改正地方自治法第2条I「この法律又はこれに基づく政令に規定するもののほ

      か、法律に定める法定受託事務は第1号法定受託事務にあっては別表第1の

      上欄に掲げる法律についてそれぞれ同表の下欄に、第2号法定受託事務にあ

      っては別表第2の上欄に掲げる法律についてそれぞれ同表の下欄に掲げると

      おりであり、政令に定める法定受託事務はこの法律に基づく政令に示すとお

      りである。」

(2)       「条例による事務処理の特例」(改正地方自治法第252条の172)の意味

      都道府県から市町村への事務移譲が容易に→「都道府県は、都道府県知事の

      権限に属する事務の一部を、条例の定めるところにより、市町村が処理する   

      こととすることができる。この場合においては、当該市町村が処理すること

      とされた事務は、当該市町村の長が管理し及び執行するものとする。

     2 前項の条例(省略)を制定し又は改廃する場合においては、都道府県知事

      は、あらかじめ、その権限に属する事務の一部を処理し又は処理することと

      なる市町村の長に協議しなければならない。

 

(3)       中核市の要件緩和と特例市制度創設の「意味」

252条の23、第252条の263 

 


貴重資料:

http://www8.cao.go.jp/bunken/bunken-iinkai/index-bu.html

地方分権推進委員会「中間報告」全文を読むことができる。