011119gen 講義メモ 中村祐司作成

 

―新世紀における非軍事的活動を通じた国際社会貢献のあり方をめぐって―

 

2001年9月のアメリカ同時多発テロ事件は、冷戦構造の終焉が世界秩序の安定をもたらしたという認識が幻想であることを示した衝撃的なできごとであった。今回の事件をめぐっては、テロ組織の撲滅に向けた軍事行動がアメリカを中心に展開されつつあり、イスラム諸国を含む国際世論も「反テロ」という姿勢には同調を示している。しかし、一方でパキスタンなどのアフガン周辺諸国では、米英軍によるアフガニスタン攻撃に反対するデモ行動や反乱が顕在化しており、難民の窮乏にも拍車がかかっている。

アフガニスタンの歴史やパレスチナとイスラエルとの対立に代表されるような中東紛争、90年代以降のアメリカの繁栄など、今回の事件の背景・要因には単にテロ組織対アメリカ、テロ組織対先進諸国、テロ組織対国際社会といった単純な構図では把握できないものがある。したがって、テロ組織の撲滅やテロ行為の抑止のためには、仮に一定の軍事的手段を用いるのも止もう得ないという立場に立つとしても、軍事行動以外の共存・平和への模索が今ほど痛切に求められる時代はないのではないだろうか。

すなわち、窮乏国家における交通網や通信網などのインフラ整備、食糧援助、草の根的文化活動交流、教育援助、民主的選挙制度など当該国民の自己決定支援の拡充などを通じて、国際社会が軍事行動以外の相互理解、相互協力、相互依存の双方向性のコミュニケーションルートを多元的に確立し、あくまでも異文化の存在と尊重を前提とした共存社会への模索が今こそ追求されなければならない。

このように変転して止まない国際社会を見据えつつ、国家間の摩擦や紛争解決のあり方を追求しなければならない。新世紀における非軍事的活動を通じた国際社会貢献のあり方を、抽象論の展開ではなく、あるいは現実に適用不可能な空理空論モデルの構築ではなく、具体的に適用可能な処方箋を提示することを目指したい。例えば、国連調整活動、金融支援、農産物提携、スポーツ・文化活動支援、居住環境・インフラ整備、雇用の創出といった分野において、特にアフガニスタンにおける国際社会共存のための具体的政策モデルが提示できないであろうか。

考察の視点として、

○ 先進国による途上国金融支援の新ルール構築と具体的措置

○ 異文化相互理解のためのスポーツ・文化及び住民参加支援活動

○ 労働市場及び雇用確保に向けた住民間ルールの確立

○ 生活基盤としての居住環境整備のための具体的方策

○ 農産物・食糧提供のための輸送ルート及び農業環境の構築

○ 国連支援活動をめぐる新ルールの作成と人材の供給策、

などが挙げられる。


http://www.pathfinder.com/asiaweek/magazine/dateline/0,8782,184614,00.html

Asia Week.com(2001年11月23日号)より

 

ジュリアンガーリング(Julian Gearing)氏による「次なる最前線」(英文)の内容理解のためのノート→

 

北部同盟が首都カブールを含むアフガニスタンの半分を支配下に置いた。しかし、広範囲の諸勢力を基盤にした政府を構築するための本当の試練はこれからだ。

パキスタン、イラン、ウズベキスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、ロシア、中国、アメリカの代表者は反乱軍が到着する前にカブールに置く暫定政府の方策を必死にみつけよとしていた。しかし、実際は航空機墜落事故によるセキュリティ拘束によりまさに行動の自由を奪われていた。

 

11月13日にタリバン支配下のカブールは崩壊した。アメリカ政府は北部同盟に対して暫定政権が立ち上がるまでは、カブールに入らないように命じていたにも関わらず、北部同盟の戦車はカブールに侵攻した。軍事的な展開が政治的な活動を追い越し、アフガニスタンの状況は流動的で危険な状況に置かれている。

 

アフガニスタンは北部同盟とタリバンとに分割する兆しがある。アフガニスタンにおけるすべての民族や部族から構成される有効な政府が欠如している点に危機の核心がある。

ニューヨークに集まった8カ国の外相は、「広範囲に及ぶ基盤から、多民族的な、政治的均衡のとれた、民主的に選出されたアフガン政権」を求めてはいる。しかし、最大の疑問はどのようにしてそうした政府を樹立するのかということである。国家建設は不信感に染まった関係者によって妨げられるのではないか。問題の核心は異なる民族や地域グループの間での権力配分である、という指摘もある。

 

北部同盟は民族的少数派であることが和平を難しくしている。アメリカの同盟国としてパキスタンは表面上、反タリバンの姿勢をとっている。しかし、自らが生み出したタリバンの敵対勢力である北部同盟には懐疑の目を向け続けている。この少数派が勢力を伸ばせば、パキスタンのアフガニスタンへの影響力が弱まるのではないかということを恐れている。パキスタンはまた、タリバンが南方へ撤退したり、崩壊したりすれば、交戦が国境に及ぶことも恐れている。

 

オサマ・ビン・ラディンに残された選択肢は2つである。南部の山に立てこもってゲリラ活動を継続するか、パキスタンに潜入しここから第三国に出国するかである。