011022jichi 地方自治論 講義メモ(中村祐司作成)

 

寄本勝美編著『公共を支える民―市民主権の地方自治』(コモンズ2001年)

 

プロローグ 二つの公共性と官、そして民

公共の担い手=官(行政)→公的公共性

民(市民、民間企業)→私的公共性

公共政策=「市民、企業、それに行政の役割の分担と組合せの図式を実現」

役割相乗型の公共政策の追及

「官僚もまた民」「公務員市民」「企業市民」

「官僚化」「民僚化」

 

第1章「分権改革と21世紀の地方自治」

 

1993年6月 衆参両院の地方分権の推進に関する決議

1993年10月 第3次行革審の最終答申 

1999年7月 地方分権一括法の成立

2000年4月 地方分権一括法の施行

 

1980年代末以降の分権化の提唱

@       中央政府の機能を限定し、その権限の一部を自治体へ移譲

A       自治体に対する国の関与を縮小する

B       国の財源を自治体へ移譲する

C       市町村合併、道州制、連邦制など自治体の大規模再編の必要性

 

しかし、財源移譲が抜け落ちたら?あるいは福祉国家の転換?

    国のナショナルミニマムの放棄?

 

今回の改革の結果→

@       自治体の大規模再編は、いまのところ実現せず。(地方6団体の姿勢)

A       関与の縮小・透明化については一定の成果(「地方6団体は、国の実施

している事務や事業を自治体に移すこと(事務権限委譲)よりも、むしろ、

国の自治体に対する統制を減らしていくこと(関与の縮小)を望んだ。」)

B       権限移譲は小規模

C       税源の移譲はまったく実現せず。

 

最大の成果は機関委任事務の廃止(*機関委任事務=国の事務を国の監督の

もとに自治体に実施させる事務委任方式)

廃止にともなって、約55%が自治事務に。残りが法定受託事務に。(両者とも

自治体の事務→条例制定権の対象に)

関与についての書面主義の原則

国と自治体間の紛争を処理する第三者機関の設置

税財源の移譲と公共事業の分権化は進まず。→政治的リーダーシップの必要性。

---

(1) 公共事業の分権化と税財源の移譲が必要 

税財源移譲による都市部と農村部の財政力格差の拡大どうするのか?→

個人所得への課税について、比例税部分を地方所得税とし、累進税率部分を国税と

する案など。

補助金・地方交付税の改革が必要→補助金(=国庫支出金。その内訳は国庫負担

金、国庫補助金、国庫委託金。このうち、国庫補助金の奨励的補助金の廃止が必要。

また、国庫負担金のうち建設事業国庫負担金を廃止すべき。)

地方交付税という制度は残し、その運用を改める必要あり。

(2)      「地方自治基本法」の制定が必要

自治立法権、自治組織権、自治財政権がこの中に盛り込まれるべき

 

日本型福祉社会論:「福祉支出の増大を経済活力にとっての重大な阻害要因として捉

え、その抑制を図るとともに、その肩代わりを社会の領域、すなわち家族、企業、地

域共同体などに求める立場」。しかし、「女性の社会進出と終身雇用制の揺らぎによ

り、日本型福祉社会論の支柱であった家族介護と企業福利に依拠することが困難にな

った。」

→介護保険の導入へ。

新たな福祉国家路線:サービス供給の担い手が多様(供給主体の多元化)。これは政

府の責任放棄か?

 

---

 

―地方自治の基礎知識 その1―(主として浜島書店『最新図説 政経』pp.152-157をもとに)

 

ブライス(イギリスの政治家、1838〜1922年)

「地方自治は民主主義の最良の学校であり、その成功の最良の保証人である。」(『近代民主政治』)

 

トックビル(フランスの政治家、1805〜1859年)

「地方団体において自由なる人民の力が宿る。地方自治制度の自由に対する関係は小学校の学問に

対するそれと同じである。それは自由を民衆の手のとどくところに引き渡す。」

 

憲法第8章 地方自治

憲法第92条<地方自治の基本原則>

地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。

 

団体自治:国家の干渉を受けず、地方自治体独自の立場で方針を決定し、運営する。

憲法第94条<地方公共団体の権能>

地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内

で条例を制定することができる。

 

住民自治:地方自治体はその住民の意思によって運営される。

憲法第93条<地方公共団体の機関、その直接選挙>

A       地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民

が、直接これを選挙する。

憲法第95条<地方特別法の住民投票>

一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住

民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。

 

 

地方自治法(公布 1947年4月。施行 1947年5月3日)

 

第1条<この法律の目的>

この法律は、地方自治の本旨に基いて、地方公共団体の区分並びに地方公共団体の組織及び運営に

関する事項の大綱を定め、併せて国と地方公共団体との間の基本的関係を確立することにより、地方

公共団体における民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに、地方公共団体の健全な発達を保

障することを目的とする。

 

第1条の2<地方公共団体の役割、国と地方公共団体の役割分担の原則等>

@ 地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総

合的に実施する役割を広く担うものとする。

A       国は、前項の規定の趣旨を達成するため、国においては国際社会における国家としての存立にか

かわる事務、全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動若しくは地方自治に関する基本的

な準則に関する事務又は全国的な規模で若しくは全国的な視点に立って行われなければならない施策

及び事業の実施その他の国が本来果たすべき役割を重点的に担い、住民に身近な行政はできる限り地

方公共団体にゆだねることを基本として、地方公共団体との間で適切に役割を分担するとともに、地

方公共団体に関する制度の策定及び施策の実施に当たって、地方公共団体の自主性及び自立性が十分

に発揮されるようにしなければならない。

 

第1条の3<地方公共団体の種類>

@       地方公共団体は、普通地方公共団体及び特別地方公共団体とする。

A       普通地方公共団体は、都道府県及び市町村とする。

B       特別地方公共団体は、特別区、地方公共団体の組合、財産区及び地方開発事業団とする。

 

第14条<条例、罰則の委任>

@       普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第2条第2項の事務に関し、条例を制定す

ることができる。

B 普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した

者に対し、二年以下の懲役若しくは禁錮、百万円以下の罰金、拘留、科料若しくは没収の刑又は

五万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる。

 

第17条<議員及び長の選挙>

 普通地方公共団体の議会の議員及び長は、別に法律の定めるところにより、選挙人が投票によりこ

れを選挙する。

 

第96条<議決事件>

@       普通地方公共団体の議会は、次に掲げる事件を議決しなければならない。

 一 条例を設け又は改廃すること。

 二 予算を定めること。

 三 決算を認定すること。

 四 法律又はこれに基く政令に規定するものを除く外、地方税の賦課徴収又は分担金、使用料、加入

金若しくは手数料の徴収に関すること。

 

第147条<地方公共団体の統轄及び代表>

 普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体を統轄し、これを代表する。

第148条<事務の管理及び執行>

 普通地方公共団体の長は、当該普通地方公共団体の事務を管理し及びこれを執行する。

第149条<担任事務>

 普通地方公共団体の長は、概ね左に掲げる事務を担任する。

 一 普通地方公共団体の議会の議決を経べき事件につきその議案を提出すること。

 二 予算を調製し、及びこれを執行すること。

 三 地方税を賦課徴収し、分担金、使用料、加入金又は手数料を徴収し、及び過料を科すること。

 四 決算を普通地方公共団体の議会の認定に付すること。

 五 会計を監督すること。

 六 財産を取得し、管理し、及び処分すること。

 七 公の施設を設置し、管理し、及び廃止すること。

 八 証書及び公文書類を保管すること。

 九 前各号に定めるものを除く外、当該普通地方公共団体の事務を執行すること。

 


<ホームページ紹介>

南伊豆町立竹麻小学校:居ながらにして故郷の南伊豆の空気を感じることのできるホームページ。

例えば、小学校のHPはレポート作成の格好の素材になるのではないか。