011001gen 現代政治の理論と実際 講義メモ(中村祐司作成)

 

―米同時多発テロ事件―

 

タリバンとは何か→(産経新聞「タリバン集中講座」より)http://www.sankei.co.jp/databox/ntc/html/terro_special.html

アフガニスタン。最高指導者はムハンマド・オマル師。極端な女性差別、麻薬の生産、国際テロの黒幕とされるウサマ・ビン・ラーディン氏の保護。侵攻していたソ連軍が八九年に撤退。

その原動力だったムジャヒディン(武装したイスラム戦士)はその後分裂、国内は軍閥による内戦状態に。

オマル師は、三十人ほどの弟子に自動小銃十六丁を持たせ、ムジャヒディンに立ち向かった。パキスタンの難民キャンプにいたパシュトゥン人のイスラム教徒と、彼らが運営するマドラサ(神学校)で学ぶ学生たち=「タリバン」。 当時、社会主義政権打倒をねらってパキスタンと共同歩調をとった米国も、米中央情報局(CIA)を通じて支援。

 「カンダハルを手中にしたタリバンは、その後三カ月でアフガン三十一州のうち十二州を占拠。そして九六年九月には首都カブールを制圧し、旧社会主義政権のナジブラ元大統領を処刑した。進撃はさらに続き、九八年八月にマザリシャリフ、九月にバーミヤンと、支配は国土の約九割に達し、組織は九八年末で約四万人に膨れ上がった。」

「現在、国連の代表権は原理主義のタリバンと対立するスンニ派のイスラム協会を束ねるラバニ大統領が握り、タリバンを認める国家はサウジアラビア、アラブ首長国連邦、パキスタンの三カ国にすぎない。」

 

ムジャヒディン=武装したイスラム戦士

 

アフガニスタン:アジア大陸の交通の要衝。「アジアの心臓」。「アジアの操縦席」。

「アフガニスタン王国としての建国は一七四七年。周辺帝国の力が弱まったところを見透かした「建国の父」、アハマド・シャー(王)がパシュトゥン人部族をまとめあげた。」

「19世紀に入ると、英国とロシア(後にソ連)の覇権争いに→英国は、1838年、78年、1919年と三度にわたって兵を送る。アフガニスタン人は戦いを「ジハード(聖戦)」と呼び徹底抗戦の末、三度とも撃退」。

「第二次世界大戦後、英国は去り、代わって米国が登場」「東西両大国の援助競争の舞台」。

「1973年に無血クーデターで王族を追放、共和制移行とともに就任したダウド大統領のもと、ソ連に急速に接近」。「ダウド大統領は78年、軍の共産主義者によるクーデターで殺害された。続いて権力を握った革命評議会のタラキ議長が内部抗争の末に死亡。後継のアミン議長は79年、かいらい政権を打ち立てるべく軍事介入したソ連の侵攻によるクーデターで処刑された。その後に就任したカルマル議長は後に失脚、87年にはナジブラ大統領が誕生した。これら目まぐるしい権力抗争の背後にソ連がいた。」

 

「現在、タリバンはオマル師を頂点に、二、三十人の評議員で構成されるシューラと呼ばれる最高評議会で重要事項を決定している。タリバン政権の閣僚も含めて、彼らはいずれもナジブラ政権と戦った当時二十歳前後のムジャヒディンの元兵士たちだった。」

 

1999年8月、キルギスの南部オシで日本人技師四人が拉致(らち)される事件が発生したが、これもタリバンから支援を受けているとされるイスラム武装勢力の犯行」

 

「タリバンは、アフガン国内にはソ連が撤退した際に収奪した武器や、米国やパキスタンなどが供与した武器をかなり保有しているとみられ、依然、強固な軍事的パワーを維持している。」

 

―米国同時多発テロ―(朝日新聞の特集から)http://www2.asahi.com/national/ny/index.html

サウジアラビア出身のラディン氏が武力闘争を含むイスラム政治運動にかかわりだしたのは、アフガニスタンに侵攻した旧ソ連に抵抗する80年代のアフガン戦争の時からだ。当時は、米国もラディン氏と連携していた。「無神論者」のロシア人と戦うラディン氏およびムジャヒディン(イスラム戦士)は、共産国ソ連と敵対する冷戦下の米国にとって利用しがいのある勢力だった。」

「ラディン氏が組織したとされる「アルカイダ・アルジハド」の規模は、3000人から5000人程度」

「イスラム過激派指導者オサマ・ビンラディン氏が率いる「アルカイダ」は、世界中の組織と提携した緩やかな結合体。活動家は55カ国・地域にちらばり、・・・・・・・」

 

「テロ対策は麻薬犯罪の取り締まり同様、終わりがない」と米国の専門家らは言う。世界に薄く広がる「敵」が相手の戦いは「大艦巨砲」主義では勝てない。「経済戦であり、情報戦でもある」(パウエル国務長官)ところが、「21世紀型の戦争」と呼ばれるゆえんだ。」

 

「アルカイダ:79年の旧ソ連軍によるアフガニスタン侵攻を受けて、ビンラディン氏が80年代末に創設したとされるイスラム過激派のテロ組織。 イスラム義勇兵を受け入れて訓練を施す組織として生まれた。「アルカイダ」はアラビア語で「基地」を意味する。」

「世界のイスラム教徒は米国・イスラエル同盟に苦しめられており、彼らに対する聖戦(ジハード)はイスラム教徒の義務」との思想に立つ。湾岸戦争後は、中東に駐留し続ける米国を主な攻撃対象にしてきた。規模は世界各地に計3000人から5000人前後とみられている。」

「タリバーン:タリバーンは、イスラム教の神学生の意味で、正式名称は「イスラム神学生による改革運動」。アフガン内戦で、92年ごろからパキスタン国境地帯に逃げたパシュトゥン民族難民の青少年らが、パキスタン軍部の支持のもとで原理主義教育や軍事訓練を受け、94年に結成した。96年9月に首都カブールを制圧した。」

 

坂本龍一氏

報復をすれば、傷つくのはどこにも逃げ場のない子供を含む一般市民だ。小泉首相は平和憲法をもつ国の代表として、いかなる戦争行為も支持するべきではない。ましてや無実の市民が傷つくことも辞さない戦争に加担するわけにはいかないはずだ。そして戦争支持宣言をしたことで、同様のテロ攻撃が日本にも及ぶ可能性が増すことになった。一国の首相として、国民をあえてそのような危険にさらしていいのだろうか。なぜ国民の側から疑問の声があがらないのだろうか。

 もし日本の首相が憲法に基づいて戦争反対を表明し、平和的解決のための何らかの仲介的役割を引き受ければ、世界に対して大きなメッセージを発し、日本の存在を大きく示すことができたはずだ。その絶好の機会を逸してしまったが、まだ遅くはない。これは日本のためだけではなく、21世紀の国際社会への大きな貢献となるはずだ。

 ぼくは思う。暴力は暴力の連鎖しか生まない。報復をすればさらに凶悪なテロの被害が、アメリカ人だけでなく世界中の人間に及ぶことになろう。巨大な破壊力をもってしまった人類は、パンドラの箱を開けてはいけない。本当の勇気とは報復しないことではないか。暴力の連鎖を断ち切ることではないか。人類の叡智(えいち)と勇気を誰(だれ)よりも示せるのは、世界一の力を自ら動かすことのできるブッシュ大統領、あなたではないのか。」