東田親司氏(大東文化大学教授)講演のメモ 2000年12月4日
(*当日いただいたレジメ以外の口頭説明を中心にメモしたため、以下はあくまでもメモ)
「行政監察から政策評価へ –制度設計の経緯と論点-」
地方分権推進委員会の事務局長務める。
「行政監察から政策評価へ」
公定概念:今年7月の政府のガイドライン草案決定。実施は来年1月から。要するに情報提供が政策評価のポイント。政策評価の手法をめぐる研究会を以前立ち上げた。そこでの中間まとめで出した概念とほぼ同じ。当時、政策評価に対するマスコミの見方は大上段のものであった。政策判断そのものではなく、政策判断に資する情報提供が主眼。何のための政策評価か。
行政改革大綱(今年12月1日に閣議決定):政策評価制度は来年1月から実施。
行政改革会議の最終報告(97年12月3日):今までプランに重心が置かれすぎていたということを指摘。
各省庁政策評価準備連絡会議(今年7月31日に素案):国民生活にとっての成果重視の行政への転換→out putから out comeへ。目標と実績、国民の満足度=評価の費用対便益。
行政の体質転換を図るツール。土光臨調依頼、ソフトの行革やってきている。国民に対する説明責任においても政策評価は位置付けられる。
背景→厳しい財政事情の中での政策選択。公共事業の再評価などが具体例。英米の動き。
中央省庁改革。小さくなった仕事に合せて組織定員を変えるのが筋。従来はこれが逆だった。
中央省庁改革の体系→@国民本位の行政。官僚主導から政治主導へ(審議会の整理ここに含まれる。前の総務庁長官太田誠一が強調。審議会は今まで隠れ蓑。基本原則を審議する審議会は原則廃止。大なたふるう。)A内外の課題に的確に対応する行政:縦割り行政の弊害排除の観点からの大くくりの省庁再編。内閣府や内閣官房の調整機能の強化。行政範囲の見直しとしての規制緩和、地方分権。B行政のスリム化・簡素化(内部組織の削減、定員10年25%削減、独立行政法人(特殊法人の改革→党主導で整理・合理化進める。与党の中で公明党が特に主張。これが先週金曜の行革大綱に実を結ぶ。)以上までが前おき。
制度骨格の立案過程:@国家行政組織法の改善。ここに「評価」の言葉が入る。内閣府設置法の中にも「評価」盛り込む。国会は役所が役所を評価するのは手前みそなのではないかと特に野党から言われた。しかし、今度の政策評価は行政自身による評価を重視(行政改革会議が主張)。国会ではなかなか分かってもらえなかった。けちつけられやすい面があった。A総務省による政策評価の二段構造→「統一的、総合的または客観的、厳格な政策評価」。大臣から大臣に勧告。総理に対して意見具申(今までの行政改革と同じ)。しかし、政策諸官庁から抵抗があり、「エネルギーを使った」。他の省庁は合規性の側面から評価するのは分かるが、今回の政策評価はそこが分からないと主張。B中央省庁改革の基本方針。対象をめぐる各府省と総務省との見解の相違。総務省のもとの委員会が判断することとなった。組織方法→例えば官房の中の課に「政策評価」課を設けるというのが各府省の見解。総務省は総務省内に「行政評価局」を置くことを主張。
具体的に来年から何をやるのか→3つの評価方式で各省ごとにやってもらう。=事業評価、実績評価、総合評価。
政策の3層構造→policy(狭義の政策。費用・効果。事前の評価と途中や事後の時点での検証。選択的・重点的), program(施策。目標・実績。幅広い分野で網羅的にやる。網羅的・一覧的), project(事務事業。)。
評価の内容。・公共事業、研究開発、ODA(事業評価)。定期的・継続的に実績を評価(実績評価)、介護保険など総務省が二段階目で評価するもの(総合評価)
なぜ3方式か→総合評価が政策評価の出発点。→総合評価は単発的選択的。行政分野を一覧する取り組みが必要。(米英、三重県、静岡県の先行例)→財政支出の大きい事業では事前の採点段階での評価も重要。
静岡県の業務棚卸(500ぐらいの単位)、三重県の事務事業評価システム(3000以上が対象)。北海道の政策アセス(予算事業2816、施策880)。総じて課や係の単位で通信簿をつけている。自己点検をやっている。
米英の行政活動評価的制度:前者はGPRA(政府業績評価法)、後者のPSA・OPA
「県という大統領制の組織において知事主導の予算配分等を実施するために必要かつ有益と考えたとことからきているのではないか」
行政監察は1948年から開始。最初の10年間は合規性が中心。58年から73年は有効性中心(合目的性。対象地域不適当、補助施設遊休化、選択基準見直し、実績低調。要するにやり方が問題だということ)。73年から現在は効率性中心の観察(委員の縮減、組織整理、民間委託、競争契約)。これらは「追加的・重畳的に登場し重点がシフトしていった。」
「きちんとやれ監察」(合規性中心監察):監視活動として要
「しっかりやれ監察」(有効性中心監察。これがやられがち。基本的に所管省に委ねるべきものではないか)
「効率よくやれ監察」(効率性中心監察):今後の政策評価活動をめぐり所管省が弱いところ。
今後の課題:
@ 事業評価。定量的指標の割合が低い。抽象的、定性的な表現に終始するのではなど。関係省庁間の連携活動
A 実績評価。目標づくりに多大の時間。
B 総務省の政策評価について所管省庁はネガティブになりやすい。総務省のもとの委員会の活動がどうなるか。
一般的課題として、データの公開についてメガ評価(評価の評価)が本当に提供できるのか。評価のコスト考えなければならない。政策評価法のような立法の企画。
影響としては、評価マインドの醸成。キャリアが企画立案、実施は出先、二種以下という風潮からの脱皮。地元指向の政治圧力等の悪い政治主導に対する歯止め=評価結果が楯の役割。予算要求作業の合理化・客観化=事前評価結果。事後評価によって予算どうのこうのはないのでは。
質疑応答:総務省が勧告権もつのは内閣府との関係でどうなのか。→
総務庁の人事局と監察局を内閣府に設置した方がいいのではないかという考えは前からあり。内閣府の方がやりやすいのが事実。
質疑応答:事後評価の結果を予算に反映させないのはどうか?→事務量の増大を考えると難しいのでは。政策評価を人事評価に結びつけよという声が以前あったが、即人的な要因にはすぐに結びつかない場合もあり。
国と地方の違いのポイントは人事権
国民の声は専門の調査会社に調べてもらう。委託費用を払って調査する必要。評価委員会、
その下の専門委員の考察がポイント。文部行政、厚生行政ならまだいいものの、難しい側面もあり。やはり専門家の意見を聞く必要あり。
質問応答:国民本位の行政といっても広いが。→存在理由のない政策はなくす必要あり。情報公開法とのリンクについて。→農水省と建設省の便益をめぐる捉え方の違い。前者の方が広く設定している。
質疑応答:有効性こそがこれからの政策評価の基準となるのでは→所管省庁はこれをやるべき。2段階目の行政評価で効率性を中心にやるべきと考えている。また、行政監察史を作成しようとしている。