ISFJ2006に参加して

           

宇都宮大学 国際学部 国際社会学科3年 大宅宏幸

 

 7月の中旬頃にゼミを代表して片桐さんと一緒にISFJ2006の説明会に参加した時には、昨年の最優秀論文賞受賞チーム(慶應ボーイ)によるプレゼンや実行委員の学生さんたちの進行具合に圧倒され、「これは大変そうだな。去年は先輩達は2人で参加したそうだけど、今年は誰か参加する人が出てくるのだろうか」と思い、自分自身参加には尻込みしていました。そして翌日の行政学演習の授業のとき、思ったとおり、演習生で参加希望者は居ませんでした。しかし、今まで毎年研究室で参加してきて、私たちの代で参加者が出なくなるというのも悲しいし、また、ここで一つ挑戦してみようと思い立ち(その場の気まずい雰囲気も理由のひとつ)、参加をする事にしました。今年は私一人の参加という事で、大変ですが、それだけにやってみれば何か得られるだろう、と積極的に考えました。

 

 私にはもともと3年になってからコレに打ち込んでいくぞ、というものがありました。私は大学に入ってからロードバイクというスポーツに出会い、加速度的にのめりこんでいきました。2年のうちに多くの単位を取っておきバイトで金をため、3年ではあまり授業を入れないで、この大学生という一生に一度のモラトリアム期間を使ってロードスポーツに打ち込むつもりでした。そのため、もともと中村先生の授業を多く取っていくうちに興味が湧いて所属する事になった研究室ですが、まさかこのような大変なことになるとは思ってもおらず、ロードと政策提言の両立が出来るのだろうか、と不安でした。

 

 テーマは、ロードのトレーングやツーリング等を通じて、日本の道路事情に日ごろから疑問を抱き、憤りを感じていたので、「日本の自転車政策への提言」に決定し、早速膨大な時間のある夏休みを利用してコツコツと提言をまとめていくために、文献に当たったり、関係機関、団体への聞き込み等をして、現状分析や問題点の分析を進めていくつもりでした。

 

 が、自分で自分の行動パターンは良くわかっていたので、やはりというかなんというか、89月というロードスポーツにとってはレースやイベント満載のシーズン真っ盛りの時期に、私はライディングへの欲求を抑えることが出来ず、連日トレーニングや大会に参加したりと、結局休み中はほとんど何も手をつけることが出来ませんでした。

 

 10月の初旬に慶応大で中間発表があるという事で、9月終わりごろから焦ってとりあえずアウトラインだけ作成し、発表し、色々と分科会の方々にダメだしを受け、おのずと方向性が定まってきました。しかし、やはり夏休みのロスがあまりにも大きく、時は既に経過しすぎていました。それから多くの文献に当たり、関係者への聞き込み等をする余裕がなくなり始め(この短期間で一人でこうした研究作業を進めるのはかなり大変であるということに気付かされ、他の大学が約10人以上の体制で挑んでいる理由を垣間見ました)、結局のところ、内容は自分自身で「こうあるべきだ」的な理想論や、技術的な話になってしまい、また、「日本の道路事情・自転車事情にこの場を借りて一つ物申す」的な感情的内容になってしまいました。この点はまったくもって反省しなければならないと痛感しています。

 

 本番では、1日目、2日目をあわせて本当に多くの事を吸収する事ができました。特に、ゲストの方の講演の内容は、強く心に残りました。さて、私の発表ですが、練習はそれなりにしておいたので、落ち着いてしっかりと発表できたと思います(パワーポイントの作りこみが甘いまま提出し、手直しが効かなくなってしまい、不十分な形での発表になってしまったのが反省点でした)。また、前日に他の分科会を時間の許す限り見てきたので、大方自分の論文に対してどのような批判がなされ、どのようなお言葉をコメンテイターの方から頂くかは想像がついていて、本当にそのまま予想通りのコメントが帰ってきたせいか、特にショックを受けることなく、素直に受け止めることが出来たのも後味がよく、気持ちの良いものでした。特に、明治大の戸崎先生の「内容が情緒的過ぎる。特に、このイメージ図なんてものはいらない」とのコメントには、全くその通りだ、と自分の書いた内容を思い出して噴き出しそうになりました(論文に小学生低学年が書いたような恐ろしいイメージ図があります)。

 

 全体を通して、勉強面も精神的面も少しは成長させることが出来たと思います。特に、地方大学の研究室は、とかくその大学の中や、限られた範囲の中だけにとどまってしまう傾向があるように思われるので、このように全国の他大学と交流し、発表し合い意見を交し合うのは、大変重要であるということを強く実感しました。

 

 最後に、お世話になった皆さんに感謝の言葉を申し上げたいと思います。まず、当日発表をわざわざ三田まで見に来てくれた演習生の皆さん、本当にありがとうございました。前日から一人で三田キャンパス内をうろうろしているのは何だか心さみしかったし、また発表時に来てくれたことでどれだけ不安感が和らいだことか。次に先輩方。特に川端さんと赤津さんには、資料室で会ったときに、色々と言葉をかけてもらって、勇気付けられました。そして何よりも中村先生。論文の添削はもちろんのこと、当日も本当に忙しい中見に来てくださって本当に心強かったです。発表が終わって外のベンチでくつろいでいるとき、先生がすっとポケットマネーを出し、「これで美味しいものでも食べて帰りなさい」と私のスーツの胸ポケットに入れてくれたときは、感動で涙がこぼれそうになりました。きっと私はこの瞬間(もはや伝説)を死ぬまで覚えているでしょう。

 

 後輩となる皆さんへ: 確かにISFJは大変です。しかし、それは少人数でやれば、の話です。去年は二人、そして今年は私一人でしたが、演習生全員が参加し、一丸となって分担して研究をしていけば、それほど大変ではないはずです。また、そうした苦労に余りあるほどの自分自身の成長や貴重な経験を得ることが出来ると思います。来年はJOINTの幹事もありますが、ぜひ、全員でISFJに参加してみてください。

 

 

 

ISFJの感想

国際学部国際社会学科3年片桐 梓

 

 ISFJでは、大宅君の発表以降の都市交通分科会Bと優秀賞、プレゼンテーション賞の団体の発表を聞きました。優秀賞やプレゼンテーション賞の団体の発表はやはり、他の発表を圧倒するような中身の濃い、説得力のある内容でした。本当に同じ大学生なのかと思うほどでした。今回初めて全国規模の大きな学会を聞いて、今後卒論を書く上で参考にすること、また、卒論に対するモチベーションを高められるよい経験だったと思います。

 それから、大宅君の発表に関しては、今までゼミでの模擬発表では、時間をオーバーしてしまっていたので、ちょっと心配していました。しかし、当日の発表はコンパクトに要点がまとまっていて、伝えたいことがよくわかった発表にまとまっていて、質問にも的確に答えていてよい発表でした。夏から一人でここまでやってきたと思うと、本当にお疲れ様でした。

 

 

ISFJの感想

国際社会学科3年 櫛田 裕人

 

 ISFJに関しては僕は見に行っただけなのですが、今回感じたのはやはり日ごろの自分たちの勉強不足に他ならないと思います。確かに経済学部が多く、わけのわからない数式が発表のなかで多く出てきて戸惑ったということはあるのですが、参加大学の発表を聴いていると、文献や資料を読み込んでいる量が日ごろの自分たちの活動とははるかにかけ離れていると感じました。論文の理論の組み立て方や発表の仕方は、さすがに日本最大の政策学生フォーラムだなという感じで、発表者の方々の熱意というものが本当に伝わってきました。そんななかたった一人でこの場にこぎつけて堂々と発表した大宅君を尊敬してやみません。本当にお疲れ様でした。

 僕がISFJを見に行って感じたことは「勉強せねば」というある意味危機感です。

 

 

ISFJの感想文

宇都宮大学国際学部 3年 塩崎佳那

 

2日間にわたって開催されたISFJには、2日目から参加した。当日の分科会では日本の都市交通に対する政策提言についてのグループに参加した。司会や、担当の先生方がいらっしゃり、また、参加者が全員スーツであったこともありJOINTより、すこし緊張した雰囲気だった。同じゼミの都市交通における自転車対策についての発表がこの分科会の中で最初の発表であった。発表時間が限られている中で、約半年かけて作り上げた論文のすべてを発表することは大変なことであると感じた。自分が一番主張したいものに論点をおきたくても、聞いている人を説得させ、政策として提言するには問題点やそこに至ったまでの経緯なども発表しなければ説得力のある発表にはならない。今回発表をした論文では、政策としての具体的な財源の確保や法の過渡期についての対策についての発表者の意見が参加者、審査員の先生からいくつか出た。私は、問題点に着目し、それを改善するための提言としてはとても説得力がある論文だと思っていたので、この質問はとても考えさせられた。政策を提言するには、具体的な効果だけでなく、財源確保から世間への広まり、それを普及させるまでの工程など、考えなければならないことがたくさんあると気づかされた。これは、政策提言に限ったことではなく、すべての論文に言えることであると思う。問題点を見つけ、なぜそれが問題点であるか考え、また、人に納得させ、その問題点を改善することでどのような効果が得られるか、また、その効果がどれだけ普及すれば問題点がなくなるかなど、たくさんの考え方を学べた。最後の優秀賞や優秀プレゼンテーション賞の発表を見てもそう感じた。自分では気づかないようなまとめ方や物事の着目の仕方をたくさん知ることができた。また、当日は竹中氏の講演もあり、ふだん聞くことができない貴重なお話をいただけたこともとても貴重な体験だった。

 

「薄氷」から「爛漫」へ

宇都宮大学国際学部行政学研究室担当教員 中村祐司

 

今回のISFJの参加をめぐってはまさに「薄氷」を踏む思いがした。というのは前期に提案の申請を行う際に一時は誰も手を挙げなかったからである。

 

当時、前回のISFJで全国に及ぶ研究会から提出された提案論文の題目とその中身がWeb上に掲載されていて、参加の有無を決める前にテーマだけでも参照しておくようにゼミ生に伝えておいた記憶があるので、それを見てゼミ生が怖気づくともではいかなくても引いてしまったのではないかと推測もした。

 

また、今回はジョイント、ISFJ、学生まちづくり提案、という行政学研究室における「3大イベント」が12月に集中し、いずれも未経験の3年生にとっては荷が重く感じられたのかもしれない。

 

こうした背景はともかく、提案発表はあくまでも研究室の学生が行うので、教員としては強制することはできず、今回は断念かと一時は覚悟を決めた。ところがまさに首の皮一枚というか、一名が参加を決め、単独での発表となった次第であった。

 

研究室としてはこのような事態は過去初めてのことだったが、何人であろうと参加は参加である。教員も半ば開き直り、単独発表でもいいのではないかと思い直すように努めた。原稿の執筆から連絡調整、中間報告、発表ファイルの作成、当日の準備手伝いなど本人には相当なプレッシャーがかかったであろうが、政策研究、発表スタイル、他大学の学生との交流、他大学の教員や有識者との接触という局面において、一言では言い表せない多くの「果実」を手にしたことは間違いないであろう。そしてその効力は発表者個人だけでなく研究室のパフォーマンスの質を高めることにも貢献した。その意味では、まさに今回のISFJと研究室との関わりは「薄氷」から「爛漫」へという表現がふさわしい。

 

政策研究を行う資格に年齢制限はない。しかし、年の功を敢えて持ち込むならば、教員側から次回は参加を強制する強引さが必要かもしれない。当初はたとえ恨まれても、やってみて初めてその価値が分かるということが研究や教育の領域では数多く存在するからである。

 

「果実」を手にしたのは教員も同じであった。年末に向けた1カ月半ほどはいろいろと抱えている研究者にとっては正念場の時期だが、その中で審査員として論文を査読できた収穫は大きかった。まさにISFJに学生を参加させてもらっている教員としては「良いとこ取り」「フリーライダー」ではいけないのであろう。

 

研究室単位で一つのテーマを何年か継続して追求するやり方も含めて、来年に向けた始動が早過ぎることはないであろう。最後にこのような貴重で類例のない全国規模の学生政策提案というダイナミックな機会を提供してくれたISFJの関係者に感謝したい。