比較行政研究レジュメ 01.01.30 糸長
東京都の野宿生活者の概況(「平成11年度路上生活者実態調査」より)
・基本属性
ほとんどが男性
50〜69歳―約60%(平均55歳ぐらい)
地方の出身者(東京より北―約45%)で10・20歳代に上京してきた人が約70%(ちなみに1964―東京オリンピック)
・路上生活
1年未満―30%、3年未満―60%
現金収入のある仕事−約50% そのうち 日雇−約45% 廃品回収・本集め−約25%
労働日数・10日未満−約50% 収入1万円未満−約25%、5万円未満−約65%
衣食住に関する生活の困難性−約80%
・経緯
就労面(そのうち、経済不況による失職−約50%)・住居面(そのうち、住居費が払えない−約40%、労働型住宅−約40%)
「就労安定層」 →「就労安定層」B ——やや若め、野宿期間短し
→「無職」@ ——やや若め、野宿期間短し
→「就労不安定層」B
「就労不安定層」→「就労不安定層」B ——「寄せ場」日雇労働者の典型的なタイプ、年齢高め
ホームレスの何が問題視されているのか
一般的には(主に行政)
生存そのものにかかわる危険・生活の困難性、公共用地の不法占拠など公共性からの視点・・・
→大きな二つの方向性
@ホームレス−ゼロ Aホームレスの生活をよりよくする
(一応の方向性は@を目指しつつ、とりあえずAを)
→調べる必要性があるのは、
野宿生活をするようになった経緯→野宿生活に至ること自体の回避策を考える
野宿生活の現状を綿密に調査→野宿での生活に関する生存の危険性など、いま何が必要なのか
→野宿生活から脱するためには、どんな対策が必要か
しかし、よりラディカルにこの問題を問い直す必要があるのではないか
ホームレス−問題を対自化すること・・・
構造的な問題として、ホームレスの問題を捉えることにより、現代社会の持つ問題性への気づき
→私たちの社会の問題性 →私−たちの問題性
その構造は私たち生きている社会の構造である、私たちもその構造の下で生かされている、という自覚
あるいは、その構造を支えるものとしての私たち、という自覚
そして、創られたものとしての自覚から創るものとしての自覚へ
付録・文貞實「『山谷』=社会空間の記述に向けて」より(田巻他「現代社会に於ける都市下層社会に関する社会学的研究」1997)
“山谷”という「社会空間」——読まれるべき“テクスト”として
「資本」の成長過程としての「山谷」
「階層」の問題 →「福祉」の問題
「生活」の問題
—→社会化(知=権力)の言説 =観察者の構築物
「彼=野宿者」に対峙する「私」の社会的意義・役割を探り直す
ホームレスとしての「彼」を正当化すること→閉じ込め(「強者−弱者」関係)
——調査者もその関係の中に閉じ込められていく
・・・都市の戦略に巻き込まれる・再生産する
しかし
「彼」の実践(「戦術」) 彼の身体による社会の構造化に着目すること
社会とアイデンティティの弁証法
私・彼における“山谷”——都市にとっての“山谷”
都市の戦略—野宿者の生産+排除=管理・保護
⇔都市を飼いならす主体・・・
ex.ゴフマン アイデンティティの強制 →内化 →操作
(ただ、アイデンティティの操作が自動化された権力作用を本当に乗りこなせるのだろうか)