比較行政研究                     20001114  上ノ段憲治

 

‐テーマ‐

 地方都市における市街地拡大、中心市街地空洞化の実態と今後のあり方に関する研究

     ‐高松市における市街地活性化「サンポート高松」計画を事例に‐

 

・問題の所在

 

 都市計画の大きな課題として中心市街地の衰退があげられる。中心市街地は、さまざまな都市機能が集積し、新しい経済活動などを生み出

したり、地域コミュニティーの中心として重要な役割を担ってきた。しかしモータリゼーションの進展、中心市街地のアクセス環境の劣化、

消費者の行動パターンの変化などを背景として、中心部の居住人口の減少、大型店などが郊外の幹線道路沿いに立地を移したり、商店街の空き

店舗の増加をはじめとする商業機能の空洞化など、中心市街地の空洞化が深刻化している。

いままでの都市計画の背景には人口増加・人口集中があったが、今後、日本は急速な少子高齢化社会に入っていき、確実な右肩上がりの経済

はむずかしく、効果的な財政投資をするために、今あるストックを効果的に活用していこうという動きになっている。少子高齢化などの動きに

的確に対応しつつ、地域の活性化を図るため、中心市街地において今後の都市整備の目指すべき方向を明確化することが必要であり、そういう

時期にきている。

ところで中心市街地といったら商店街が考えられ、商店街の活性化が中心市街地の活性化につながるという考えがある。しかし、「商店街にお

ける各商店は周囲の住宅やオフィス等を対象に事業を行ってきたのであり、その意味で商店街と周辺地域は一体的に発展してきたと言える。よっ

て都市計画的な視点からすれば、本来、中心市街地は、商店街を線的に活性化させるだけでなく、商店街を核とした地域として面的に考える視点

が必要ではないだろうか」(都市問題第89巻 特集の言葉より)と指摘するように中心市街地には商店街のほかに、中心駅や公共施設、企業、

住宅地などが存在する。したがって中心市街地の活性化を考えるとき商店街の活性化といった商業的なことだけではなく、さまざまな諸機能を総

合して中心市街地の役割を考察する必要がある。

中心市街地というのは、多くの人々が利用する「駅」を中心とした街が多い。そのことから、人が集まる立地を生かしきれていない点が指摘で

きる。東京や政令指定都市といった大都市と地方都市は、中心市街地の衰退の問題は、全く大きさが違う。大都市周辺では日常に買い物をすると

いうと、やはり中心市街地が主になる。移動の手段が鉄道中心だからである。ところが地方に行くと、公共交通が不便だから車を利用する人が大多

数である。車で行くのに便利な所というと、大きな駐車場を完備した場所で、必然的に郊外となってしまう。そう考えるとある程度仕方ないことか

も知れない。しかも、都市の郊外化は、都市人口の増大に対処するためとも考えられる。

どちらにしろ中心市街地活性化の必要性があるのは、地方都市の問題としてとらえられる。よって大都市と地方都市とをまず切り離して、地方都

市での駅前市街地の再開発をどこまで有効に実施できるか今後の課題として考察していきたい。

また、中心市街地の再生は、さきほども述べたように商業政策という視点だけで論じるのはなかなか難しい。都市政策もあれば、住宅政策、産業

政策もある。そこで地方都市というところを、単に地方都市全体として考えるのではなく、都市によっては郊外化するのはやむを得ない都市と、そ

うではない都市というふうに分けられる。そういった意味で、中心市街地の機能というのは、それぞれまちによって違うし、集積させるべき機能も

違ってくる。そこで中核都市規模のまちに視点を向け、地方都市における市街地拡大、中心市街地空洞化の実態と今後のあり方を香川県高松市にお

ける市街地活性化と「サンポート高松」計画を事例に考察していきたい。

 

・研究方法

 

地方中心市街地活性化における土地利用規制のあり方を明らかにするため、土地利用コントロール、インナーシティ問題等に着目し、中心市街地

における活性化方策の実態分析、土地利用規制のあり方といったハード面からと住民や社会問題を考察したソフト面の2つの視点から香川県高松市

の中心市街地を対象として分析を行う。

1 高松市における中心市街地活性化方策の把握

国による中心市街地活性化の指導の分析、地方都市の土地利用のあり方指導書の分析

2、中心市街地活性化のための土地利用コントロールのあり方

中心市街地の機能分布のあり方、用途構成のあり方、活性化の方策について、開発計画を中心に調査する。

3、規制・誘導手法と土地利用コントロールの関係分析

開発規制の実態、土地利用コントロール上の問題点、開発計画と土地利用との関係、都市計画とその他の仕組みの連携について計画関係者へ

のインタビュー、現地調査から分析する。

4、住民、NPO等、地域住民からの視点について考察。

  NPOによるまちづくりや都市計画マスタープランから分析する。

5、まとめ

 

参考文献・参考資料

1) 石井晴美。 1999年。 「駅周辺における市街地整備の傾向と今後の課題−東京杉並区を事例として−」『都市問題 第90巻 特集 駅周辺の

まちづくり』東京市政調査会。

2) 大西 隆。 1998年。 「中心市街地問題の構造と活性化の課題」『都市問題 第89巻特集 中心市街地の再生−商店街を核とした新しい地域づ

くり−』東京市政調査会。

3) 佐藤 滋。 1998年。 「生活空間としての中心街−商店街を核とした新しいまちづくり−」『都市問題 第89巻特集 中心市街地の再生−商店

街を核とした新しい地域づくり−』東京市政調査会。

4)森田博行。 1998年。 「商店街の新しい試み」『都市問題 第89巻特集 中心市街地の再生−商店街を核とした新しい地域づくり−』東京市政調査会。

 

053 高松市

計画提出日(最終変更)  平成11年3月18日

所在都道府県       香川県

市町村の概要

本市は,これまで四国における「中枢管理都市」「商業都市」として発展してきた。本市の面積は,194.24Ku,人口は,平成7年国勢調査で331,004人である。人口については,昭和60年頃からほぼ横ばいで推移しているが,世帯数は,増加傾向を維持しており,核家族化の傾向が続いている。また,少子高齢化が進行しており,65歳以上の人口割合は,15%に達している。
本市の昼夜間人口比率は113%,5%通勤圏人口は,約84万人と地域の就業拠点として機能している。また,産業別では卸・小売・飲食業とサービス業への就業比率が極めて高い。

中心市街地の概要

(1)現状

本市全体の人口がほぼ横這いであるのに対して,中心市街地の人口は平成2年から7年にかけ,-9.3%となっている。また,高齢化比率も22.6%と本市全体を大きく上回っている。
中心市街地の商業活動の状況は,平成6年から9年にかけて,小売業の商店数で-8.1%,従業員数で-2.8%,年間商品販売額で-13.1%となっており,今後さらなる空洞化が強く懸念されている。また,中心市街地の各商店街において,空き店舗の増加,来街者の減少も見られる。

(2)位置及び区域 

JR高松駅(サンポート高松内),高松琴平電鉄瓦町駅周辺,中央商店街等を含めた都市計画法上の商業地域。サンポート高松港湾基盤施設整備区域を含める。

(3)面積      約250ha

基本的な方向

本市の中心市街地は,「商業都市・高松」の伝統と歴史のある中心商業地として,また環瀬戸内交流圏における「中枢管理都市・高松」の拠点,顔として広域的な役割が期待されている。また,都心は市民の財産でもあり,人々が集まり,地域文化を表現・創造し,情報を発信・交流していく場であり,人々が自己表現する場である。こうした視点から,中心市街地を様々な活動・交流の中心として位置付け,そうした活動を支える商業機能,業務機能,文化機能,居住機能,生活サービス機能など複合化した機能集積を進め,地域経済の活力増進と市街地環境の改善等を目指した一体的,総合的な取り組みを進める。

基本コンセプト:心ときめく生活文化交流都心「ハート・オブ・高松」

具体的には,次の3点を中心市街地活性化の一体的推進の目標とする。
@瀬戸の都・高松にふさわしい中心市街地の形成:広域的な期待にこたえる
A豊かで魅力的な都市基盤及び都市空間の形成:多様な人々の居住と交流を育む基盤の構築
B中心市街地における商業機能の再編とプロモーション:商業機能の強化と新たなサービスの提供

計画の特徴

計画策定に当たり,助役を長に庁内全部局にわたる組織として,庁内検討委員会を設置し,検討を進めた。また,学識経験者,地域住民,商工会議所,商業者,消費者,高齢者,中心市街地の企業に勤めている者,学生など幅広い層の代表で組織する外部の検討委員会も設置し,意見を求めた。
本計画には,市街地の整備改善事業として,大規模開発案件である「サンポート高松総合整備事業」を位置付けるとともに,市街地の整備改善と商業の活性化を一体的に推進する事業として,高松丸亀町商店街の地元商業者が主体的に取り組んでいる「高松丸亀町商店街市街地再開発事業」,「丸亀町商店街市街地再開発ビルの取得及び管理・運営事業」を位置付けている。
また,ソフト事業の重要性を念頭に置き,中心市街地ショッピングバスモデル事業など,多くの事業を位置付けている。

 

サンポート高松(高松港頭地区)総合整備事業

【事業主体】 国、県、高松市

【位  置】 高松港頭地区(JR高松駅を中心とする約42haの地域)

【総事業費】 約1,000億円(基盤整備事業)

【事業の概要】
 21世紀に向けて、香川県・高松市が、四国及び環瀬戸内交流圏の中で主要な役割を果たし、さらに発展していくため、国際化、情報化に対応した新しい都市拠点の創造、四国の玄関にふさわしい海陸交通のターミナル機能の強化、美しい瀬戸内海や高松城址の景観を生かしたウォーターフロントの整備など、海と市街地が近接しているという全国的にも貴重な立地特性を活かしながら、新しいまちづくりを推進しています。

【現況・進捗状況及び完成年度】

1.基盤整備、上物施設計画

事業内容

完成目標年度

整備される施設

     基



港湾基盤施設

平成11年度末

浮桟橋

平成12年度末

港湾緑地(ハーバープロムナード)、臨港道路、バース

平成15年度末

港湾緑地(シーフロントプロムナード)、人工海浜

都市基盤施設

平成12年度末

駅前広場、同地下駐車場     
駅周辺道路

平成15年度末

多目的広場、同地下駐車場     
歩行者専用道路(南側)

上物施設整備

(第1期計画)

平成12年度末

JR新高松駅、JRホテル     
港湾旅客ターミナルビル

平成15年度末

シンボルタワー(国際化と情報化に対応した文化・コンベンション機能、情報発信交流機能、民間業務・商業機能など多様な機能を有する県・高松市のシンボルとなる官民の複合拠点施設)、国の合同庁舎