日本における外国人―管理から共生へ―
084103A 近藤 香
1、はじめに
日本に在住する外国人人口は、平成17年国勢調査によると、155万6千人で総人口の1.22%を占め、平成12年から17年の間に24万5千人(18.7%)増加している[1]。外国人登録者数も、平成19年末には215万2千973人となり、過去最高を更新し、総人口に占める割合は、0.06%前年より増加し、1.69%となっている[2]。これらの数値からも見て取れるように日本社会における外国人人口は増加しており、今後とも増加傾向は続くだろう。外国人人口が増え多民族社会に移行しつつある日本において、現在外国人に対する政策はどのようなものであり、今後どういった政策が必要であるかを考える。
2、管理の対象としての外国人
外国人とは法的には、日本国籍をもたない外国籍の者であり、国籍が日本人と外国人とを区別する基準である。日本社会における外国籍の者を規定する主な法律は、「出入国管理及び難民認定法」(以下「入管法」)と「外国人登録法」である。入管法は、「本邦に入国し、又は本邦から出国するすべての人の出入国の公正な管理を図るとともに、難民認定手続きを整備すること目的とする[3]」(第1条)ものである。外国人登録法の目的は、「本邦に在留する外国人の登録を実践することによつて外国人の居住関係及び身分関係を明確にならしめ、もつて在留外国人の公正な管理に資すること目的とする[4]」ものである。いずれの法律も、「在留外国人の公正な管理」を主目的とする「管理法」であり、外国籍者は管理をし、「登録」する客体として扱われている[5]。
2、管理から同じ地域社会の住民へ
現行の外国人に関する法制度において外国人は管理の対象と見られているが、法務省の「第2次出入国管理計画[6]」(平成12年3月)では、「我が国社会が必要とする外国人労働者の円滑な受け入れ」と「長期にわたり我が国社会に在留する外国人の定着の円滑化」があげられる。そして「今後は社会の構成員としての外国人に対して、個々の行政分野の断片的な関与ではない総合的な外国人行政を構築していく必要がある」と述べ[7]、ここでは外国人を「社会の構成員」と見なしている。「第3次出入国管理基本計画[8]」(平成17年3月)では、「我が国社会が必要とする外国人労働者の円滑な受け入れ」の項目が細かく分類され、「長期にわたり我が国社会に在留する外国人の定着の円滑化」が項目の一つとなっている。ここでは外国人を「社会の構成員」という語句は述べられていないが、長期にわたり我が国に在留する外国人は「地域社会とかかわりをもつ住民であり、こうした生活者としての外国人への対応は、その増加に伴って一層重要となってきている」と述べている。また、外国人を円滑に受け入れるために、外国人が住みやすい環境作り、そして外国人が安心して暮らしやすい日本を実現する必要性が示されている。
3、まとめ
法務省の「基本計画」は、グローバリゼーションという経済政策と少子高齢化という人口・労働政策から、本格的な「外国人労働の受け入れ」を示している。しかし、「共生社会の実現」が述べられているが、その具体的な内容には触れておらず、他方、「不法滞在者」に対する社会防衛と治安対策はより具体化されており、国家利益の観点からの対策といえるものである[9]。国益のために、利益をもたらす外国人だけは歓迎し、それ以外の不法滞在者を排除する姿勢であり、外国人労働者の労働者をいかに利用するか、さらに不法滞在者対策に重きが置かれていると言える。
外国人労働者とは、必要とされると同時に厄介もの扱いされるというパラドクスに遭遇するものである。さらに、不況時には経済的脅威と見なされ、排除の対象になる可能性もあり、外国人管理の体制がさらに厳重にならないとも限らない。けれども、外国人の存在なしでは今の日本社会は成り立たず、さらに今後、外国人が増加していく中で、現行の外国人を管理する体制を見直し、外国人を同じ社会の構成員として扱う政策が必要であり、外国人との共生のためにはそういった政策が必要となるだろう。完全な外国人の管理からの脱却は現実的ではない。したがって、外国人を管理する体制と外国人との共生を目指す政策のバランスをいかにとっていくか、外国人がより暮らしやすい、日本人も外国人を厄介者扱いしない社会づくりに貢献しうる政策について考えたい。
[参考文献]
・ 丹羽雅雄「入管行政と外国人登録」近藤敦編『外国人の法的地位と人権擁護』明石書店、2002年
・ 鈴木江理子「従来の制度のなかで外国人が直面する困難」依光正哲編『日本の移民政策を考える―人口減少社会の課題』明石書店、2005年
・ 田中宏『在日外国人 新版』岩波新書、1995年
・ 佐藤幸治編『デイリー六法 2004 平成16年版』三省堂、2003年、33頁
・ 法務省HP「外国人登録法」 http://www.moj.go.jp/NYUKAN/gaitouho.html、2009年1月12日閲覧
・ 法務省HP「第2次出入国管理基本計画」
http://www.moj.go.jp/PRESS/000300-2/000300-2-2.html、2009年1月11日閲覧
・ 法務省HP「第3次出入国管理基本計画」
http://www.moj.go.jp/NYUKAN/nyukan35.html、2009年1月11日閲覧
[1] 総務省統計局HPより、「外国人人口の推移」 http://www.stat.go.jp/date/kokusei/2005/gaikoku/00/01.htm、2009年1月12日閲覧
[2] 入国管理局HPより、「平成19年末現在における外国人登録者数統計について」http://www.moj.go.jp/PRESS/080601-1.pdf 、2009年1月12日閲覧
[3] 佐藤幸治編『デイリー六法 2004 平成16年版』三省堂、2003年、33頁
[4] 法務省HPより、「外国人登録法」 http://www.moj.go.jp/NYUKAN/gaitouho.html 、2009年1月12日閲覧
[5] 丹羽雅雄「入管行政と外国人登録」近藤敦編『外国人の法的地位と人権擁護』明石書店、2002年、228頁
[6] 出入国管理基本計画は,出入国の公正な管理を図るため,出入国管理及び難民認定法第61条の10に基づき,法務大臣が外国人の入国及び在留の管理に関する施策の基本となるべきものを定めるもの。(http://www.moj.go.jp/NYUKAN/nyukan40.html)
[7] 法務省HPより、「第2次出入国管理基本計画」 http://www.moj.go.jp/PRESS/000300-2/000300-2-2.html 、2009年1月12日閲覧
[8] 法務省HPより、「第3次出入国管理基本計画」 http://www.moj.go.jp/NYUKAN/nyukan35.html 、2009年1月11日閲覧