比較政策論12月16日 尤 迪
日中両国におけるコーポレート・ガバナンス
及び企業内部統制システム[注[1]]の現状と課題
研究の背景
アメリカでは不正会計問題に対処する為に、企業リスクに対しての施策として、企業内部統制に焦点を当てた企業改革法(Sarbanes-Oxley
Act of 2002)略称「SOX法」[注[2]]がすでに2002年に成立しており、2004年より施行されている。一方、日本では、同じ問題を対応する為に、2005年6月に従来の商法から独立して、「会社法」という法律を成立し、2006年5月に施行されていた。
中国では、日本とほぼ同期に、会社法を大幅な改正して、2006年1月に施行された。日中両国共に会社法での企業内部統制、コーポレート・ガバナンス、コンプライアンス(法令遵守)などの規制を強化し、新たに条例を制定された。
問題意識
しかし、企業内部統制の強化にもかかわらず、近年、食品企業の不祥事、ライブドア事件、アメリカのサブプライムローン問題など、世界で大手企業の不祥事が相次ぎ。これを受けて、今までのコーポレート・ガバナンスや企業内部統制システムがうまく機能しているかどうかは疑問視されている。
本研究は日中両国のコーポレート・ガバナンス及び企業内部統制システムについて比較し、成功の例と失敗の例を纏め、その原因を究明することを試みる。日本の経験を参考し、今後中国企業のコーポレート・ガバナンス及び企業内部統制システムはどうのように実行するか、その将来の方向性を簡単的に予測する。
一、日本のコーポレート・ガバナンス及び企業内部統制システムの現状と今後の課題
1、 法律面での現状
日本では、2005年から2006年にかけて、会社法と金融商品取引法が制定された。会社法によって、今回改正された重要なポイントの一つとして、内部統制システム構築義務付けられたことがあげられる。「企業の不祥事を防止するためには、従来のように、内部統制の整備を企業の自主性に委ねるだけでは不十分であるという社会的な要請が、内部統制の法制化につながったものと考えられる。既にこれまでコンプライアンス、リスク管理等のシステムを独自に作り、運用してきた企業もある一方、法制化を機に改めて内部統制の見直しにとりかかっている企業や、会社法と金融商品取引法の制定で初めて内部統制の整備に取り組むべきであることを認識したものの、どのようにして対応すればいいのか悩んでい[3]る企業もあり、取り組み状況は様々である」。[注3]
2、 企業側の対応政策の現状
(資料収集中)
3、日本企業におけるコーポレート・ガバナンス今後の課題
@ 会社法と金融商品取引法の内部統制の導入を踏まえ、各企業は今後、それに関連した自主的な取り組みを推進していく必要がある。
A 社外取締役及び社外監査役という社外からの監督、監査の実際の効力・効果を出すことが必要がある。
B 株式会社制度を市場経済に適応したガバナンスの仕組みとして位置づけ、市場との連動を重視する必要がある。
二、中国のコーポレート・ガバナンス及び企業内部統制システムの現状と今後の課題
1、法律面での現状
中国では、2006年1月から施行されている新会社法によって、コーポレート・ガバナンスが強化され、少数株主の利益を保護する規定が追加された。具体的には、
@
董事(取締役)や総経理(経営者)の義務が明確に規定された(会社法148条から151条)。
A
監事会(監査役会)監事(監査役)の設置義務つけられた(同法第52条)。
B
監事会(監査役会)監事(監査役)の職務権力を強化された(同法第四章第4節)。
C
上場会社の独立取締役の設置も義務づけられた(同法第123条)。
D
外資系企業の場合は、特別法と会社法を二層構造で適用された。(同法第218条)
を規定されていた。
2、国有企業改革のガバナンスシステムの進化
中国の現行国有企業に対するガバナンスシステムは、2003年5月27日に公布された『企業国有資産監督管理条例』によって確立された。中央政府と地方政府に属する特別機関である国有資産監督管理委員会が国有株主(出資者)を代表して国有企業(金融関連除く)をガバナンスする責任にある。そのガバナンスシステムは、資産管理、人事管理、重要経営事項管理から成立している。しかし、実際の運営上、株主の代表としての権限は分散され、管轄権は企業内部設置された共産党委員会が持ち、財政権は財政部に握られているという二重構造になっている。
3、、中国企業におけるコーポレート・ガバナンス今後の課題
@ 切実的、有効的な企業コーポレート・ガバナンスシステムを構築すること
A 業務監督と業務執行者を分けること。つまり経営トップにすべての権限が集中することは避けるということ。
B 企業の情報開示すること。特に、上場企業の場合、法律によって、開示すべきな情報を必ず開示する。しかも、情報の正当性、真実性を求められる。
C 企業は独自の適切なコーポレート・ガバナンスシステムを構築すると同時に、経営者は社会的責任を持ち、自分の素質、能力を向上するよう努力をする必要がある。
三、今後の研究
1、先行研究について理論的な整理、分析することを達成する。
2、日本の会社法による企業内部統制の規定が、実際の経営活動にどのような影響や効果をもたらしているか。(日本企業の内部統制システムを構築する実例を分析が必要)
3、またその影響や効果を踏まえて、企業にとって残っている課題は何か。(企業内部統制システムの構築するの際、企業の経営にとって利点と欠点を調査分析がある)
4、日本企業の経験を参考にして、中国企業内部統制システムを構築する課題は何か。(日系企業の中国進出に際して中国の法律によってもたらされている障碍点が明らかになり、その解決策の理論化が可能になる)
参考文献
鍋田光男 『内部統制とコーポレート・ガバナンス』 経営戦略研究2006年夏季号 VOL9
鈴木英夫『コーポレート・ガバナンスと内部統制〜信頼される経営のために〜』経済産業省企業行動課2007 はじめに
平田光弘 『中国企業のコーポレート・ガバナンス』 経営論集57号2002年11月
李 維安 『中国上場企業のコーポレート・ガバナンスに関する実証分析』三田商学研究第48卷第1号2005年4月
注1 「コーポレート・ガバナンスと内部統制はいずれも、企業が経営目標に向かって、業務を遂行していく上でなくてはならない体制、仕組みである。コーポレート・ガバナンスは株式会社の実質的な所有者である株主に代わって、取締役会が経営者の業務執行を監督することである。つまり、経営者が株主利益の最大化を目指し、経営目標達成に向けて責任を果たすよう監督するための仕組みといえる。一方、内部統制は、経営者が責任を持って行う業務が経営目標に向けて効率的に且つ適法に遂行されるよう社内のマネジメントシステムに組み込まれ、経営者により運用される体制及びプロセスで、その目的は業務の効率化と、事故や不祥事を未然に防ぐリスク管理である」。――鍋田光男『内部統制とコーポレート・ガバナンス』2006 第1ページ
注2 SOX法:正式名称は、Public
Company Accounting Reform and Investor Protection Act of 2002。上場企業の会計改革と投資家保護を目指して、内部統制を経営者に義務付けた法律。法案を連名で提出したポール・サーベンス(Paul Sarbanes)上院議員とマイケル・G・オクスレー(Michael G. Oxley)下院議員の名前から、サーベンス・オクスレー(SOX)法と呼ばれる。