比較政策論
国際学国際社会研究
074106A
聶 磊
中国における大気汚染問題
中国は改革開放政策を推進して以来、急速な経済発展に伴って深刻な大気汚染問題が
起きている。中国は、建国して以来重化学工業路線を走り、経済の発展と共にエネルギ
ーの消費も増加している。今、世界全体で中国のエネルギー消費量は10%を占め、アメ
リカに次世界第2位である。エネルギー構造は硫黄含有率高いの石炭へ依存し、また、
設備の老化や技術不足などのため、石炭の利用効率は極めて低い。そのため、石炭燃焼
によって大量の硫黄酸化物を排出し、大気汚染の原因となり、酸性雨や健康被害の原因
にもなる。中国のエネルギー特徴と石炭の埋蔵量をみると、このような石炭が中心とす
るエネルギー構造はまだ長い次期を続けると考えられる。
近年、中国政府が環境問題の深刻化を痛感し、真剣に環境問題に対しての取り組みをはじめた。法律、制度を制定し、環境問題への投資を増加や宣伝、教育の重視などの対応を採用した。このような努力をしたため、大気汚染の主な物質である二酸化硫黄は減少されたと見られる。
図―中国のSO2排出量
年度 |
1997 |
1998 |
1999 |
2000 |
2001 |
2002 |
2003 |
2004 |
2005 |
SO2排出総量 (万トン) |
2266 |
2091.4 |
1857.5 |
1995.1 |
1947.8 |
1926.6 |
2158.7 |
2254.9 |
2549.3 |
出典:中国環境統計1998-2006により筆者が作成
しかし、中国は持続な経済発展に伴ってエネルギー消費は増大しつつであり、一度減少の様子を見られる二酸化硫黄は再び増大している。また、自動車の普及などにより、都市部における二酸化硫黄や窒素酸化物の増加も予想できる。石炭使用が起因になる大気汚染は中国今後発展の上に大きな障害になっている。
中国における大気汚染に関する法制度
中国は、1987年に大気汚染の防止のために、『大気汚染防止法』を制定した。その後、1995年、2000年に2回改正されて強化した。
同法は、大気を汚染する固定発生源と移動発生源に対して汚染の制度を設けている。国家あるいは省、自治区が排出源に対して濃度基準を定め、基準を違反すると、期限つきで改善することが要求されるほか、罰則も行われる。固定発生源の大気汚染では石炭燃焼による汚染が重要な課題として挙げられている。同法は、石炭に含有硫黄の量について基準を定め、クリーン石炭の使用を促進している。
中国は先進国と同様に大気汚染に関連する法制度を持っていると考えられる。しかし、先進国と大きな差がない大気法制度を持っている中国は、大気汚染の問題はそれほどの改善をできなかった。第10次5カ年計画の総量抑制目標、二酸化硫黄の排出量に関する計画指標が達成できなかった。i
貴陽プロジェクト
中国貴陽市は、エネルギー構造は石炭に依存して、石炭燃焼による大気汚染が深刻化
となった代表的な都市である。90年代後半の二酸化硫黄年間総排出量は日本の総排出量
の2分の1以上であり、二酸化硫黄濃度は、国家環境2級基準値を大幅に上回っていた。
1997年の日中環境モデル都市計画で貴陽市の大気汚染問題を解決するため、貴陽市は
デル都市を選ばれ、円借款や技術支援などを通じて、集中的な環境対策を行った。その
結果、貴陽市の二酸化硫黄は8割削減にされた。
図―1996年排出量との比較 図―貴陽市全域の大気汚染物質排出量
出典:EICネット http://www.eic.or.jp/library/pickup/pu050804.html
図によると、貴陽市は日中環境協力プロジェクトの実施後、モデル地域の二酸化硫黄の排出量が大幅に減少され、貴陽市全域の大気汚染物質の排出量も年々減少しつつある。
上記により、貴陽市における大気問の改善ができたと見られる。しかし、中国全体でみ
ると、貴陽のよう成功例はまだ少ないと考えられる。その中、他の支援と違って、日本か
らソフト面の支援あるいは制度づくり、あるいは大気汚染対策のマスタープラン作成への
協力(貴陽市大気汚染対策計画調査−JICAによる開発調査)や環境モデル都市構想推進を
指導する専門家の派遣、企業における自主的環境管理対策(公害防止管理員制度)などの推
進は貴陽市の大気汚染の改善に重要な役割を果たしたのと考えられる。
本研究は、このような日本の制度がどのように貴陽市に活用されたのか、貴陽のプロジ
ェクトでどのくらい機能したのか、また、貴陽市は成功例として全国に普及させられるの
か、明らかにしたい。
参考文献
山田辰雄 橋本芳一 中国環境研究―四川省成都市における事例研究 勁草書房 1995/6/15
エリザベス・エコノミー[著] 片岡夏実[訳] 中国環境リポート 築地書館 2005/8
中国の環境問題 中国研究所 中研叢書 1995
中国環境ハンドブック2004-2005 2005-2006 中国環境問題研究会編
中国環境年鑑 各年版
環境白書 各年版
i 中国環境ハンドブック p303