中国の銀行業の不良債権に関する既往研究のレビュー
王宝玉 2007年12月11日
1.中国四大商業銀行の不良債権の形成した要因に関する既往研究のまとめ
近年以来、中国における4大銀行の不良債権の形成原因について、多くの研究者が以下のように分析した。
1992年に许美征は政府の関与した融資が融資の総額の38%を占めていると述べた。
1997年に劉波は銀行の所有権の問題が不良債権形成した要因である。
1998年に李建軍は大きな政府が銀行不良債権形成の要因であると分析した。
2004年に、張海寧は中国銀行の不良債権の形成要因が銀行そのものである。
2004年に中国人民銀行の総裁である周小川は『金融時報』で以下のように述べた。中国人民銀行の調査によると、国有銀行が抱えるようになった不良債権全体のうち、各レベルの行政機関の干渉によるものが約30%、国有企業に対する資金面の支援が約30%、法律の不備が約10%、政府による一部の企業の閉鎖と産業構造調整が約10%となっており、銀行自身の経営不備によるものは20%となっている。
2005年に関志雄は四大銀行に有効なリスク管理体制やインセンティブ・メカニズムが欠如している結果と背任や汚職といった違法行為が銀行の不良債権の発生につながると分析した。
2.中国における銀行の不良債権の特徴と不良債権率
中国における銀行の多くの不良債権は信用融資から生み出した。国際トップ銀行の多くの不良債権は担保貸付から生み出した。担保資産そのものは高い価値を持っている。それは中国銀行業の不良債権と国際トップ銀行の不良債権の区別である。また、四大商業銀行は高い不良債権率を抱えている一方、ほかの銀行には不良債権率は国際警戒ラインに近づいているかもしくは超えているのである。近年、中国政府は一連な銀行改革を行って、4大商業銀行の不良債権率は著しく減少するのである。表1、図1に示すように、1999年から2006年までに、各銀行の不良債権率の変化曲線。
表1中国における4大商業銀行の不良債権率(2000年〜2006年) 単位%
3.不良債権の処理方法
中国における4大銀行の不良債権の処理方法について、以下のように述べる。
@1999年には4行で合計1兆4000億元(約21兆)の不良債権を分離した。分離の方法は4行それぞれが資産管理会社を作り、そこに1995年7月以前に実行した貸し出しで不良債権化したものを簿価で買い取らせたのである。
A2002年1月から、国際慣例に基づいて、四分類(正常債権,逾期,呆滞,呆帳)基準より厳しい5分類(正常、関注、次級、可疑、損失)基準を導入された。
B2003年1月に銀行監督管理委員会を設立した。中国人民銀行の代わりに銀行監督管理委員会は金融機構を管理監督する。
C中国政府は四大銀行を上場させるために、国有資産管理会社である中央匯金投資会社を設立し、中央匯金投資会社に通じて、2003 年末の中国銀行、中国建設銀行、また2005 年には工商銀行に公的な資金を注入し、その三つの銀行の不良債権を低下し、資産率を高まった。財務改善を実現したこれら3行は、株式会社化、戦略的資本家の受け入れ、成功に上場した。最も資産内容が悪いとされる中国農業銀行は2008年に上場すると見込みである。
4.資産管理会社により不良債権の処理現状
資産管理会社を設立する狙いは、銀行側の財務を改善する一方、企業の債務負担を軽減する目的である。資産管理会社の仕組みは銀行が企業向けの不良債権を資産管理会社が発行する債券に転換する。資産管理会社の債券が中央政府(財政部)の保証がついている優良資産であるため銀行に対して非常有利の不良債権を処理する方法である。また、資産管理会社が銀行から買い取った不良債権の一部(黒字転換に見込まれる企業)を株式に転換する。これにより、企業は資産管理会社に配当を支払う義務を負う。銀行に利払いより資産管理会社に配当の払いほうが低いにより、企業財務が改善できた。また、四大銀行と資産管理会社は完全に独立した法人であるため、銀行の収益は資産管理会社の債権回収の進展度合いには繋がらなかった。
表2金融資産管理公司(AMC)による不良債権処理状況(単位:億元、%)
上述のように、中国の四大商業銀行における不良債権の発生に関する既往研究を踏まえて、今後の研究について、私は四大商業銀行の業務に着目し、不良債権と銀行業務の関係を明らかにすることを目的とする。不良債権率を低下させるように提言したいと思う。