比較政策研究
11月13日
国際社会M1呉 鳶
地域ブランド製品開発の原点
日本の地域振興の展開と一村一品運動展開の背景分析
日本の地域振興の歴史を振り返ってみると、どこの国でも同じだが、日本も例外ではなく国として自らの国家目的のために地方を利用・動員するということを繰り返してきた。戦後、戦争で疲弊した農山漁村の復興・民主化を目的に農業改良普及・生活改良事業が1948年に開始されたが、基本的に国は大都市圏から工業分散すなわち産業再配置の観点から、国土計画の中に地域振興を位置づけてきた。1962年策定された全国総合開発計画(全総)は新産業都市・工業整備地域の指定を通じた拠点開発方式によって、新全国総合開発計画(新全総)(1969年策定)は大規模プロジェクトの推進によって、地域格差の是正と工業分散を目指した。1972年に当時の田中内閣が打ち出した「日本列島改造論」は本格的な地域開発の時代の到来を告げ、土地投機や地価高騰が全国へ波及した。
しかし工業化による都市化の進行は、農山漁村から都市への人口流出を激化させ、都市の過密とその裏腹である農山漁村の過疎をますます深刻化させた。また、地方へ移転した産業は地場産業との結合が希薄で地域経済への波及効果が限定的であったのに加え、環境破壊や公害の発生による居住環境の悪化への住民の懸念が増大した。大都市圏では革新自治体が続々と誕生し、全総や新全総への批判が高まったのである。全総も新全総も地域格差是正と地域振興を果たせず、過密・過疎に拍車をかけて、地域の内発的発展力を失わせていった。その後、定住構想を提示し人間居住の総合的環境の整備を目指すとした三全総(1977年策定)と交流ネットワーク構想のもとで、東京一極集中を是正した多極分散型国土形成を目指すとした四全総(1987年策定)には地域を主体とする内発的発展の視点がうかがえるものの、その実施においては中央省庁の縦割りを反映した補助金活用の大型土木事業の継続や四全総における民活型リゾート開発の推進など、産業再配置の色彩は一向にされなかった。大都市圏からの緩やかな人口流出が一時的に生じたものの、実際には指定を受けた定住圏での雇用拡大が進まず、再び大都市圏への人口流出、とくに東京への人口や産業の一極集中が進んでいった。
以上から分かるように、経済成長一辺倒を前提とする全総・新全総から人間居住環境の総合整備を重視する三全総・四全総への転換、すなわち、地域振興が国による産業再配置とみなされた時代から地域自身が地域振興を考える必要が生じる時代へ転換したのは、過疎・過密,環境破壊・公害問題が進行し、石油危機の影響で不況を余儀なくされた1970年代であった。こうした背景で、地域ブランド製品開発の元祖「一村一品運動」の誕生であった。
地域自治体の目でみた場合、全総・新全総の時代の地域振興とは、国の産業再配置政策に呼応した地方外の企業・工業の誘致であった。そういう外発的な産業再配置や大規模建設工事は、内発的な地場産業や地域経済と結合していないため、地域内経済の好循環を作ることは難しかった。その結果、農山漁村から若年労働力が都市へ流出し、地域産業を担う後継者の不足や労働力人口の高齢化が地域産業の生産力を減退させて、農林水産業や林野管理は持続性を失い、地域コミュニティが衰退あるいは存続すら危ぶむような危機的な状況に陥いった。そのうち、能力のある地域リーダーの存在した地域が、地域の生き残りをかけ、国に対して反旗を翻して立ち上がったのであった。その中に「地域おこし」といった言葉が地域活性化や地域振興のさまざまな局面で使われていくようになった。大分県で平松県知事によって一村一品運動が初めて提唱されるのは沖縄の「シマおこし」と同じ1979年であった。その後、1983年に北海道一村一品運動ふるさとと一品運動(広島県)、新ひむかづくり運動(宮崎県)、シゲおこし運動(鳥取県)、1984年にくまもと日本一づくり運動、ふくしまふるさと産業おこし運動、ふるさと産品開発(京都府)など、1980年代前半には全国各地で同様の活動が始まり、「おこし」ラッシュとなった。こうした運動はそもそも地域ブランド製品開発の原点とみなされる。
政策整理:
頑張る地方応援プログラムについて
1目的:やる気のある地方が自由に独自の思索を展開することにより、「魅力ある地方」に生まれ変わるよう、地方独自ら考え、前向きに取り組む地方自治体に対し、地方交付税などの支援措置を講じる。
2応援プログラムの基本的な枠組み
(1)
地方自治体によるプロジェクトの策定、好評
○
地方自治体は、独自のプロジェクト(具体的な成果目標をあげる)を策 定し、住民に公表
○
総務省は、地方自治体のプロジェクトを総務省ホームページで公表
(地方自治体が策定するプロジェクトの例は「別表」のとおり)
(2)
支援措置
@
地方交付税による支援措置(3,000億円程度(平成19年度2,700億円程度))
ア)
市町村がプロジェクトに取り組むための経費について、特別交付税措置(3年間)(500億円程度)
イ)
「頑張りの成果」を交付税の算定に反映
○
以下に上げる成果指標を普通交付税の算定に反映(2,200億円程度)
・行政改革指標 ・転入者人口
・農業産出額 ・小売業年間商品販売額
・製造品出荷額 ・若年物就業率
・事業所数 ・ごみ処理量
・出生率
ウ)
企業立地促進に係る地方交付税措置(300億円程度)
○
減収補てん措置及び地方税増収の一部を特別交付税において財政需要として算定
A
その他の支援措置
総務省おホームページ上で公表された地方自治体のプロジェクトに対して、情報通信関係施策に関し、先選択等について配慮
(3)
各省との連携による支援措置
○
総務省ホームページ上で公表された地方自治体のプロジェクトに対して、以下の施策に関し、関係各省と連携を図り、補助事業の優先採択等について配慮。
(農林水産省との連携)
・
都市と農山漁村の共生・対流
・
農林水産物の輸出促進と産地ブランド化
・
地域バイオマスの推進 等
(経済産業省との連携)
・
中小企業地域資源活用プログラム
・
企業立地促進 等
(国土交通省との連携)
・
企業立地促進(まちづくりを含む)
・
観光振興・交流
・
地域のバス等の再生 等
3.頑張る地方事例集の作成、表彰
○
総務省ホームページ上で公表された地方自治体のプロジェクトをもとに事例集を作成し、全国的に普及広報。
○
特に優良な事例については、表彰。
4.頑張る地方応援懇談会
(1)内閣総理大臣と市町村長との懇談会
全国各地において「魅力ある地方」の創出に向けた取り組みを促すため
の最初の事業として、1月に、内閣総理大臣と市町村長との懇談会を開
催。
(2) 総務大臣と市町村長等との懇談会の開催
年明け以降、総務大臣、副大臣、政務官等の総務省幹部が地方に出向き、
各都道府県毎に市町村長等との懇談会を開催。「頑張る地方応援プログ
ラム」を周知し、魅力ある地方の創出に向けた取組を促すとともに、地
法行財税制上の諸課題等について、市町村長等と直接意見交換を実施。
(4)
頑張る地方応援シンポジウムの開催
懇談会の一環としての記念イベントとして、頑張る地方を応援する全国規模のシンポジュウムを開催。
「別表」 地方自治体が策定するプロジェクトの例
磁場産品発掘・ブランド化プロジェクト
磁場産品をはじめ自然、歴史、文化、景観等の地域固有の資源の発掘・発揚・ブランド化等により、地域産業の基盤強化や地域の魅力づくりに取り組む自治体を支援
B
地域特産物についての生産・加工・流通・販売までの複合的経営の推進、農林水産物・食品の輸出促進や産地ブランド化、中小企業による地域資源を活用した事業展開への支援、アンテナショップによる地域ブランドの情報発信など。
参考資料:
大門正克「農村における主体形成―戦前から戦後へ」(田代洋一編『日本農村の主体形成』筑波書房2003)
平松守彦『地方からの発想』岩波新書138 岩波書店
保母武彦「内発的発展論」(宮本憲一・横田茂編『地域経済学』有斐閣1990)
守友祐一『内発的発展の道―まちづくり、むらづくりの論理と展望―』農山漁村文化協会
総務省頑張る地方応援プログラム 総務省PDFファイル