研究題目

エネルギー政策における太陽光発電の普及

研究背景

日本は石油危機以来、エネルギーに関して多数の政策を行ってきた。新エネルギー開発や省エネルギー政策はその中心的政策であった。現在日本は技術革新により世界でも高レベルの省エネルギー技術を維持している。しかし、省エネルギーの普及にもかかわらず現在まで年間電力消費量が減少することはなかった。

また国際社会においては地球温暖化問題に関して多くの議論が進んだ。それに伴い、京都議定書が発効され温室効果ガスに関して排出削減義務が課されるようになった。

日本は今までエネルギー安全保障の観点から省エネルギーや新エネルギー政策を行ってきたが、京都議定書の発効により温暖化ガスの排出削減が即急の課題となった。今後は省エネルギーだけでなく、温暖化ガスをなるべく排出しない発電源の本格的普及が、義務履行への重要な課題となる。

そこで、日本が世界最大の生産量を誇る太陽光発電に着目する。また太陽光発電は温暖化ガスの排出が少ない発電源の中でも、様々な利点を持つとされているし、何よりも国土の狭い日本ではより有効な発電方法である。日本のエネルギー政策と太陽光発電の普及に関して研究を行う。

 

研究目的

 日本において太陽光発電の普及が特にドイツと比べて遅れている要因を明らかにし、現在展開されている新エネルギーの利用促進や普及に関する政策を分析する。また今後、太陽光発電が他電源と共存していくかを明らかにする。

 

研究方法

@     統計等資料の整理

公的機関や信頼性のある機関(多くの研究者に引用されている)により発表されている統計情報を利用し(必要であれば自ら作成)、現在の電力供給システムや太陽光発電の普及状況を整理する。

 

A 政策評価の先行研究調査

政策評価に関する先行研究を参考に現在のエネルギー政策の問題点を理論的に明らかにする。また太陽光発電による電力供給が日本社会に調和するためには、太陽光発電のどのような普及状態が最も適切であるかを明らかにする。

 

B現地調査

実際に太陽光発電を導入している住宅や施設を訪問し、太陽光発電導入に関していくつかのアンケートを行う。その他、電気事業者に対しても事業所を訪問する。

 

RPS法の現況

日本における新エネルギーの普及政策に関連して、現在RPS法により電気事業者による新エネルギーの一定量買取義務を課している。このRPS法は市場経済の力を借りながら、効果的に新エネルギーの普及を促すというものである。

RPS(電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措法)は、電気事業者に対して、一定量以上新エネルギー等を利用して得られる電気の利用を義務付けることにより、新エネルギー等の利用を促進するもの[1]。日本以外では、イギリス、イタリア、スウェーデンなどで行われている。

義務量に関しては現在のところ以下のように定められている[2]

    2007年 86.7kWh

    2008年 92.7kWh

2009年 103.3kWh

2010年 122.0kWh

2011年 131.5kWh

2012年 141.0kWh

2013年 150.5kWh

2014年 160.0kWh

 義務量に関してはRPS法小委員会にて改正等が行われている。しかし、現在の日本の年間総発電量は約1kWhとも言われおり、2014年における義務量と比較してもその影響力はない。さらに太陽光発電に至っては、2005年度の時点で140kWhである。このように新エネルギー普及は、進んではいるがその効果はほぼ無いに等しいと言える。

 一方ドイツ、スペイン、デンマークでは固定価格買取制度が導入されている。特にドイツにおいては、太陽光発電年間導入量の大幅な増加に成功し、設備容量で日本を抜いて世界一となった。

 このように、制度の違いにより近年、日本とドイツの特に太陽光発電の導入実績に差が生じてきた。この背景にはどのような要因があるのかを明らかにする。



[1] RPS管理システム

[2] 総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会RPS法小委員会報告書(H19.3.13)